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ゲームオタクの異世界最弱譚  作者: メヌエット
1/13

プロローグ

 最初はただ帰りたいと思った。


 次に僕は死にたいと思った。


 そして僕は最後に・・・








「橘・・ん・・・て。」


 誰かに呼ばれた気がしたが、頭がまだはっきりとしない。


「橘くん・・・きて。」


 意識が呼びかけに応じて少しずつ覚醒していく。


「橘くん!起きてってば!」

「んぁっ?」


 急な大声で朦朧だった意識が一気に覚醒した。


「やっと、起きたね。もう授業終わってお昼だよ橘くん。」

「あ、咲本さん。」


 寝起きの頭でお昼の時間になったことを理解し、声の主の方を向く。


「授業中ずっと寝てたけど、また夜更かししてたの?」

「う、うん、まあね。」

「ゲームもほどほどにね。」

「わ、わかったよ。」


 そう彼女、咲本清華(さきもとせいか)が予想したように僕は昨日の夜ゲームで夜更かしをしたために授業中を睡眠にあてていた。僕は世間一般でゲーマーと呼ばれる類の人間だ。

 ゲーマーと言ってもプロとかそういったレベルでゲームが上手いわけでも、生活の糧としているわけではない。高校生らしく、そこそこに色々のジャンルのゲームをしてそこそこにゲームを極めるといった、よくクラスに1人はいるレベルのゲーマーだ。ゲームオタクと言ってもよい。

 そんなゲームオタクでのクラスでの扱いは二種類だ。一つはゲームの知識で皆の輪に入って頼りにされるパターン。そしてもう一つはボッチだ。先にいっておこう、僕、橘公人(たちばなきみと)はボッチだ。別にこれを否定するつもりは僕にはない。

 大体、パターン1の場合はある程度のコミュ力がある場合の話だ。人付き合いが苦手で、気弱な橘公人にとってはパターン1は夢物語でしかない。

 だが、もし1と2の環境を選択できるとしても彼は2を選ぶであろう。気弱でコミュ力に乏しい僕にとってボッチライフは1人で気楽なものなのだ。コミュ力が低いのを自分で自覚している分、僕は人よりも問題がおきた時のことを恐れ、他者とのつながりをなるべく持たないようにしている。だが、そのボッチライフを目の前の存在がよしとしてくれないのだ。


「でも、橘くんってゲームがホントに好きだよね。今度、私にも出来そうなオススメゲームを紹介してくれない?」

「か、考えとくよ咲本さん。」

「やった!橘くん約束よ!」


 咲本清華は小さくガッツポーズをし笑顔で喜んだ。

 何故だかしらないが咲本さんはいつもこんな感じに僕に絡んでくるのだ。肩のあたりで切られて少し内側にくるっとした甘栗色の髪の毛。ぱっちりとしていて可愛らしい目元。服の上からでもわかるそ他のクラスの子よりも少々自己主張の激しい胸。クラスでもダントツで可愛い。そして何より、いつも笑顔で皆に平等な態度で接し面倒見が良い。それが咲本清華という人間だ。恐らく、この面倒見の良さがクラスにとけこめていない僕によく話しかけてくる原因だと、僕は思っている。だが、僕は彼女の親切心を否定するかのようで悪いのだが、あまり彼女と長々と話したくはなかった。何故なら・・・。


「また、橘が咲本さんと話してるぜ。」

「あの野郎、いつもいつも咲本さんに話かけてもらっておいて全然、生活態度を改めないとかふざけるなよ。」

「けっ!いつまで話してんだよ。」


 これだ。これがその原因だ。そりゃ、こんなゲームオタクでコミュ障な僕にも平等に接してくれるくらいのいい人でこの可愛さだ。クラス内での人気がないわけがない。そんな子が毎日毎日、僕みたいなボッチに話しかけて、世話を焼いているのだ。これで、少しでも生活態度を改善したらいいんだろうが、改善しない僕は、クラスの人から見たら、咲本さんの優しさに甘えているようにしか見えないのだ。


 だから、咲本さんが話しかけてくるたびに皆から非難の目が向けられるのだ。咲本さんは皆の反応に気づいたためしがない。だから僕がいつものように適当にやり過ごそうと苦笑いを浮かべていると、見知った女生徒が近づいてきた。


「清華、橘が困っているだろう。少し落ち着け。」

「え!?そうなの?ごめんね橘くん。」

「沢山話かけられてびっくりしただけだから大丈夫だよ咲本さん。それと鈴谷さんもありがとう。」


 ぐいぐいと話しかけてくる咲本さんを止めてくれたのは鈴谷凛(すずやりん)という少女で、咲本さんの親友だ。長い黒髪をポニーテイルにしていて、きりっとした目をしている。胸は咲本さんほどではないが、しかっりとあり、なによりどこか大人びていて、気品を感じる女の子だ。


「それは別にいいが、もう少し、自分の悪いところを直す努力をした方がい良いと思うぞ橘。自分の意見も言えないのは流石に駄目だろう。それに毎度私が口をだすのもあれだしな。そうすれば少しはクラスの風当たりも弱まるだろうに。」

「おっしゃる通りです・・・。」

「凛ちゃん!そんなこと言わないで!今のは私が沢山話しかけたのが悪かったんだから。」

「だが、実際問題このままじゃクラスにもとけこめないままだぞ。」

「うぅ。そうだけど・・・。」


 咲本さんが反論できずうぅっと唸っていると鈴谷さんの後ろから、もう二人こっちに近づいてきた。

 金髪でイケメンオーラ全開の神代優斗(じんんだいゆうと)と頭を坊主にし、筋肉隆々で見るからに体育会系な岩本竜司(いわもとりゅうじ)だ。この神代くんは咲本さんを狙っているらしく、咲本さんに頻繁に話しかけている。

 その結果、この四人話す機会が多くなり。この四人はセットという感じが定着している。僕らの近くまできた2人のうち神代くんは僕と咲本さんを見ながら言った。


「そうだぞ。清華は橘を甘やかしすぎだとおもうぞ。」

「そ、そんなことないもん!神代くんには関係ないでしょ!」

「いーや、関係ある。俺は清華のことを大切に思っている。そんな大切に思っている清華の時間が無駄なことに使われていることが気に入らないんだ。」

「無駄なんてことはないわ!」

「でも改善の様子が見られないじゃないか。要するに無駄ってことだろう。」

「そんなことないもん!橘くんは少しずつだけどきっと変わってるって!」


 神代くんの態度を見たらわかると思うが神代くんは僕の事をあまり好ましく思っていない。理由はもちろん咲本さんの事でだ。大方、咲本さんが僕ばかりをかまうのが気に入らないのだろう。しかし、口を利かないほど嫌われているわけではなく、単にあまり咲本さんと話していることを警戒しているといった感じだ。

 こんな言い争いは最近じゃいつもの事なので皆もだんだんとこちらに興味が失せてきて、自分たちの会話に戻り始め、僕もこの話はいつまで続くのかなと溜息をした時だ。


「きゃああ!な、なにあれ!?」


 その声に反応して全員が天井を見上げる。さっきまでたしかに何もなかった天井に急に、幾何学的な文字が刻まれた魔法陣が現れたのだ。クラスの皆が騒ぎ出す。驚きの声を上げる者。興味深そうに観察する者。不安な表情を見せる者。反応は様々だが、全員がこの現象を異常だと思っているのは同じなようだ。そんなみんなが慌てる中、魔法陣が変化を見せた。


「うわ、なんだ!?まぶしっ。」


 突如、魔法陣は光だし、教室中をその光で包んでいく。しかし、ある程度の時間が過ぎると教室に包まれた光は徐々に弱まっていき、光は消え、魔法陣も消えていた。教室は元の状態に戻ったと言えるが、必ずしも戻ったとは言えなかった。

 何故なら消えたのは魔法陣だけでなく、生徒も一緒に消えてしまっていたからだ。






 光に包まれ、消えた生徒達は徐々に周りの光が落ち着いていくのを感じた。


「な、なにが起こったんだ?」


 生徒の一人がそんなことを口に出したが、目を開き、あたりの光景を見た瞬間にクラスメイト全員が絶句することになった。

 目の前に広がっていたのは、ただどこまでも続く、白色の景色だった。

 こ、ここは白い世界?いや、違う。どちらかというと白い箱のようなイメージが近いかな。


「ようこそ、異界の者よ。」

「「「!?」」」


 クラスメイト全員がぎょっとした。声は背後からかけられ、全員が一斉に後ろを振り返る。

 そこにいたのは白髪、白眼で白い肌、何から何まで真っ白な少年だった。


「だ、誰だお前は!?」


 神代が少年に問いかける。


「我はこの天域を管理する神だ。」

「て、天域?」


 神というのも衝撃だったが僕は聞きなれない言葉の方に注意がいった。


「天域とは空間と空間にある狭間のことだ。」


 皆の顔に困惑の表情が見て取れる。いきなり空間の狭間と言われても理解できないのだろう。

 その点僕は、ゲームでこういったシチュエーションを見たことがあるので皆よりかは今の会話を聞いてもある程度、冷静でいられることが出来た。


「これより、お前たちにはゲームをしてもらう。」


 このパターンか!

 橘公人は心の中で毒づいた。基本的に超上的な何かに呼び出されたときに口にされた時のゲームは、ロクなものじゃないと相場が決まっているからだ。

 だが、公人はもう次の事について考えていた。

 それは、このゲームという内容がどういったパターンかということだ。ファンタジー的な魔物や魔人の討伐ならまだましだ。一般的に言えばそれでも良いとは言えないが、公人はもう一つのパターンよりは大いにましだと考えていた。

 そのパターンとはクラスメイト全員で命を賭けたデスゲームをさせられるというものだ。 

 このパターンのゲーム類だと最悪、1人しか、あるいは全員が帰ることができないという可能性が生まれてくるからだ。

 何とか、この類のゲームだけはきませんように!


「では、ゲームのルールを説明する。」


 頼む!デスゲームだけは回避してくれ!


「ここにいる全員で異世界の魔王を討伐してほしい。討伐に成功すればここにいる全員を元の世界に帰してやろう。」


 これを聞いた周りの反応は「まじかよ・・・。」や「冗談だろ・・・。」みたいな反応だったが、公人は最悪の可能性が消えたことで安堵していた。


「詳しくは、そうだな・・・。多少長くなるので貴様らの頭の中に直接送ることにしよう。」


 そういうと白い少年は右の手を突き出し、指を鳴らした。

 それを機に、頭の中に情報が流れ込んできた。

 


 1、魔王を討伐した時点での生存者を元の世界に帰す。

 2、異世界で死んだ者は元の世界に帰ることはできない。

 3、全員にステータスとレベルの概念を与える。

 4、全員に天職を与える。

 5、ステータスを見ることが出来る紙を与える。

 6、目標達成について期限は設けない。

 7、レベルが10上がるごとに任意でスキルを付けることが出来る。

 8、7以外の方法でスキルを身に付けるには技能を極めることで発現する。

 9、5人1組のチームを組んでもらう。

 10、もし、死者がでた場合、5の紙に死亡理由が表示される。



 公人はゲームや漫画でよくある内容だなという気持ちの反面、レベルの概念があることに安心した。

 ゲームをよくする方ならご存じだろう。レベルの差が戦闘にどれほどの影響をもたらすか。

 分かりやすいものを上げるとすると、ドラゴンク○ストやファイナルファ○タジーだろう。このゲームでレベルを圧倒的に上げると、まず、スキルや魔法を発動するという選択肢は消え失せる。

 流石にボス等と戦うときはそうはいかないが、少なくとも草原なんかにいるモンスターは○ボタンやAボタンの連打。すなわち「たたかう」というコマンドしか押さなくなるだろう。

 自信の生身を使うため、実際はそんな簡単にいかないと思うが、最悪、地道にレベルを上げることでクリアすることが出来るとふんだのだ。

 周りのクラスメイトも納得はしていないものの、ゲームの内容や条件についてはおおよその理解は出来たらしい。

 しかし、公人にはルールの中に必要性を感じない物を見つけた。

 ルール9だ。

 このルール9だけは必要性を感じないのだ。目的は全員同じはずなのに、チーム分けする理由がどうしてもでてこない。

 その思考は少年の声によって中断された。


「あともう一つ、ここにルールを加える。」


 声に反応し、また全員が白い少年の方に視線を向ける。


「自分のチーム以外の生徒を3人殺すことに成功した者には特別に元の世界に帰してやろう。」


 全体に不安の空気が広がる。

 ルール9はこのためだったのか!しかも、これは・・・。

 そう、この構図は公人が予想していたパターン1とパターン2どちらでもなく。両方の性質を併せ持つパターン3という、公人が予想した最悪の展開を超えたものだった。


「そ、そんなルールいらない!クラスメイトを殺すなんてするわけないだろう!」

「別に強制はしていない。ただ、そういう方法もあるというだけだ。」

「ぐぅ・・・。」


 神代が反論するも軽くあしらわれてしまった。

 クラスメイト全員が周りのやつをチラチラと観察しだし、疑心暗鬼に陥る、一歩手前で咲本清華が口を開いた。


「み、みんな!こんなルールに惑わされちゃ駄目だよ!ちゃんと皆のことを信じようよ!」

「そうだ!清華の言う通りだ!特別ルールなんて気にせずに俺たちは最初のルールでちゃんとクリアしようぜ!そして全員で元の世界に帰ろう!」

「そ、そうだな!咲本さんと神代のいうとおりだ!」

「み、皆で頑張ろう!」


 なんとかこの空気は神代くんが咲本さんに乗りかかったおかげで収まりがついた。

 でも、完全にデスゲームが回避されたわけじゃない。気を付けないとな。


「じゃあ、まずはチーム分けをしちゃおうか!」

「そうだな、まずそれをしないと始まらないしな。えーと、全部で30人だから6チームに分かれてくれ」


 さっきので落ち着きを取り戻したクラスメイト達は、咲本と神代がいったようにそれぞれチームを作り始めていた。ただ、1人を除いて。


 し、しまった。僕、よく考えたらボッチなのに誰と組めばいいんだ・・・。


 周りを見渡すと、いくつかのチームが決まりつつある。


 ど、どうしよう・・・。

 公人が悩んでいると後ろから、


「橘くん!まだ決まってないなら私のところに入らない?」

っと咲本さんが話しかけてきた。

「え?いいの?」

「うん!当然だよ!」

「なら、お願いしようかな。正直、誰とも組める気がしなかったんだよ。咲本さんありがとう。」

「えへへ。それはどういたしまして。」

「ちなみに他の人は誰?」

 なんとなく察しはついていたが一応聞いてみる。

「えーとね、凛ちゃんとね、神代くんと岩本くんだよ!」

「なるほど。わかったよ。」


 この後、咲本さんに連れられてみんなの所に行ったが、案の定、神代くんからの風当たりがきつかったが、そんなこと言ってられる状況じゃなかった。


「では、全チーム決まったようだな。では、各自武器を選んでもらおうか。」

 またもや少年は指を鳴らす。すると今度は武器の山が現れた。

「この中から好きなものを選ぶがよい。」


 皆、誰からとるよみたいな空気を出していたが、真っ先に神代は前に出ていった。

 全体を流すように見た後、山の中から片手直剣を選んだ。

 それを見た、クラスメイトも神代に続いて、自分好みの武器を選び始めた。

 僕も、うかうかしてられないな。

 そう思い、探せば探すど、好みの武器は見つからない。というより非力だからあまり重たい武器は使えないとふんだのはいいが、少し出遅れた分、女子に短剣等、男子に槍などといった、比較的使いやすかったり軽い武器を取られてしまったのだ。残ったのは、明らかに重そうな剣やゲテモノだけだった。

 うーん・・・。僕にも使えそうなのは・・・。あっ!

 目に留まったのは、腰に巻くベルトのようなものに細いナイフが10本ほど収めれているものだった。

 威力は耐久性が心配だけど使えそうなのはこれくらいか・・・。

 そう思い、公人は渋々それを手にした。


「全員、選んだようだな。」

 僕らはそこから、少し簡単に異世界の情報をレクチャーされた。

「では、これよりゲームを開始する。」

 全員がその言葉に気を引き締められる。

「スタート地点は各チームによって異なる。困ったことがあった場合はルール5の紙に聞け。紙は、スタートした地点にて配布する。ついでに我からの餞別もな。それでは諸君、検討を祈る。」


 また、全員が最初のあの光に包まれる。

 公人を含め、クラスメイト全員は光に包まれながら、決意した。

 絶対に生きて元の世界に帰ろうと。

初めまして。

この作品を読んでいただきありがとうございます。

あまり、時間がとれないので亀の歩みの如く地道に書いていくことになると思いますが、これからもよろしくお願いします。

誤字、脱字がありましたら報告してもらえると嬉しいです。

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