地下牢に客人
地下牢に捕まって2日目
両手両足が自由じゃないからな…
自力での脱出はまぁ不可能だし…
なんせ、痒いところがかけないのがな…辛い。
1日目は
水浴びさせられて、質問で終了。
初日から装備はどこにある?とか言って、拷問するかと思ったがしなかった。
昨日の態度でオレが真実を喋る気がないのはあいつもわかったはずだ。
だいたいオレを無傷にする理由が何かあるか?
長く生かす気が無い場合、この後必要最低限の質問をして用なしになったら秘密裏に処理。
次に長く生かす気がある場合、長期間の束縛、監禁、そして拷問で徐々に心を折り、精神を弱らせて装備のありかを吐かせる。その後、秘密裏に処理。
どちらも考えられるな。
拷問されるのは嫌だが…
されるなら美人なお姉さんにされたいが…
しかし、まさかあいつがあんな野望家とはな。
今まで魔王がいたからどの国も協力し合い、
魔物という共通の敵がいたからどの国も他の国と争わなかった。
ただ、それがいなくなるとバランスは大きく崩れる。
あいつはこれを待っていたのだろう。
近いうち国王会議を開き、他国には魔物が少なくなったと言って軍備の縮小を促す。軍備縮小こそが完全なる平和とか理由付けてだ。
そしてこの国は軍備の拡大を進めるはずだ。
他国にはバレないよう、少しずつ少しずつに。
例えバレても、魔物を殲滅するよう勇者様に任せられたとか大義名分を掲げてな。
それが済めば後は適当にこじつけて他国と争う。
上手いことできてる。
案外ただの馬鹿ではない。
だが今のままいけば…
「お休み中のところ失礼するよ勇者様。お客様がみえましたよ」
暗い部屋に低くしっかりとした声が響きわたる。
声は良いんだよな。
声だけはカリスマあるのだが。
見た目はともかくとして、性格がな…
人を馬鹿にしたニタニタ笑顔も腹がたつ。
それにしても客とは、仲間にはオレは元の世界に帰ると言ったから来るわけ無いが…
奥から160センチくらいの若者が勇者の前に現れた。
華奢な体に整った顔立ち。
パッと見ただけでは男性か女性か判断するのは難しい。
透き通るような金髪が肩までかかっていて、尚も中性的な雰囲気を醸し出している。
「オレの知り合いにこんな美人さんはいないんだが…」
「紹介しよう。私の息子のソランだ。この国ではソラン王子ということになる」
「へぇ、王子様か、これは失礼した。しかし父上と違って賢そうっすね」
「私に似ての…間違いだろう?良いかソランよ、よく見ておけ。例え魔王を滅ぼすような力を持っていたとして、百を越える魔物を一瞬でなぎ払う力を持っていたとしてもだ…その力さえ封じてしまえばこうなる」
「おいおいオレを使って勉強ですか。教育に精がでますね〜」
「ソランよ我々王族というのは特別な存在なのだ。
国民達を操り、反逆する力を奪い、国を動かす。
人々から崇められる、畏れられるそんな存在でなければならない」
「おーさま、神かなにかと間違えてんじゃねぇの?」
「そう!神でなければならない。人々を導く光のような存在になるのだ!」
「…狂ってるな」
「ソランよ!お前の憧れた勇者が我々のまえではこのざまだ!我々には何も出来ず、出来ることは減らず口を叩くことだけだ!」
「…王子こんなのに育てられたの?」
国王に指をさす勇者。
「私に指をさすとは何と無礼な!誰か剣を持って来なさい。勇者の最後をソランに見せてやる」
万事休すか…
挑発しすぎたかな。
まぁ囚われた時点であと数日くらいの命だったろうに…
兵士が剣を持ち国王の左後ろで跪いた。
国王はゆっくりと剣を抜き、剣先を勇者に向けた。
国王が振り上げようとしたその時、
「父上!お待ちください!」
王子の叫び声が地下牢に響いた。