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2章:王子様が妙に馴染んで困る

「起きて、エルニカ」

 後少しだけ。

 もう少しだけ眠りたいと思いつつも、いつもなら聞こえるはずのない男性の声にバッと目を開ける。そしてガバリと起き上がってゴッツっという大きな音と共に、頭に衝撃を感じて、呻く。地味に痛い。

 そしてそのうめき声は私だけではなく、もう一つあった。


「痛いよエルニカ」

「それは私の方だ」

 どうやら私をのぞき込んでいたアーサーの顎に頭をぶつけたらしい。この石顎めと心の中で罵りながら、私はチラッと見る。

「朝だよ。エルニカ」

「……そうだな。朝だな」

「お腹がすいたから、料理を教えてくれないかい? それからこの辺りを色々案内して欲しいんだ。散歩をして回ったけれど、近隣に家はないようだね。最寄りの集落は、【東エーテル】で良かったかい?」

 暇だなと思ったが、実際暇なのだろう。

 流石王子というか、アーサーはまったくもって家事ができなかった。使用人として使うにはかなり問題があるため、私が教えたことしかやるなと言ってある。最初は使い物にならないから帰れとも言ったのだが、労働基準法や、解雇宣告をするには手順があるとか、頭がいたくなるような話をつらつらとされて、根負けした結果の妥協案だ。

 帰りたくない理由があるのか知らないが、まったくもって迷惑な話である。

「そうだ。ここは人食い魔女が棲む暗い森。こんな場所で過ごしたいと思う奴がいるわけないだろう」

「じゃあ、何でエルニカはここで住んでいるんだい?」

「は?」

「ほら。人食い魔女なら、人がやってこないような場所に住んでも、何の利点もないだろう? そういえば、買物はどうしているんだい? 業者がここへ納品しに来てくれるとは思わないけれど」

 微妙に鋭い上に、知識欲というものが有り余っているのか、ぽんぽんと質問が飛んでくる。まあ、実際に魔女の生活を王子が知る事なんてないのだから、不思議で仕方がないのは分らなくはない。私もあまり疑問を疑問のままに残しておける性質ではないので、知識欲を埋めるために、本にはあまり金を惜しまないようにしていた。


「買物は魔女の市場で買ってくるんだ。鮮度を保つための魔法が掛けられているから長持ちもするしな、一人ぐらいならそれほど買い物に行く必要もない」

「へぇ。魔女の市場は僕でも行けるのかい?」

「別に人間が行ってはいけない決まりはないが、やめておけ。普通の人はその場所へ移動するだけで、魔力酔いをするからな」

「そっか。残念だなぁ。でもエルニカが心配してくれているんだから、ちゃんと留守番をしてるよ」

「お前に倒れられると私が迷惑なだけだ」

 王位継承権を返してきたと言ったが、それでも王子だ。今頃国をあげて捜索をされている可能性もある。万が一ここで倒れられた場合、その騒動は魔女狩りへ発展する恐れがあった。この国で魔女は畏怖の対象で、今のところお互いその領域を侵さないことでバランスを保っているが、それがアーサーの所為で崩れる可能性は大いにあった。

「エルニカは優しいなぁ」

 ニコッと私に笑いかけるアーサーの脳みそにはどうやら綿しか詰まっていないらしい。どうしたらそういうふわふわした結論になるのかさっぱりだ。私は地道に彼が根を上げるのを待つしかないなと溜息をつく。


「とりあえず、ここで暮らすなら東エーテルには近づくな」

「何でだい?」

「私と暮らしている時点で、アーサーも魔女の仲間だと思われる。そんな状態で近づけばいらない火種を作るだけだ。――とりあえず、部屋から出ていってくれないか?」

「何でだい?」

 きらきらとした目で私を見ているが、全然キラキラしてないぞと私は心の中でツッコむ。

「服を着替えるからに決まってるだろうがっ! 出てけっ!!」

 分かっていて聞くんじゃないっ!

 私は足に魔力を溜め、回転するようにアーサーを蹴った。何だかだんだんこれが日常化してきている現実が嫌だと思いながら。




◇◆◇◆◇◆◇◆




「んー!! これはいつもと違う筋肉を使うから、大変だねぇ」

 コンコンと腰を拳で叩きながら、アーサーは上半身を反らして体を伸ばす。

 その手に持っているのは剣ではなく鍬。王子だったら一生手に取る事はないと思われる道具だ。それを今、アーサーは使って土を耕している。

「うわぁっ!! エルニカ! 変な生き物がいるよ! 小さい蛇?」

「……小さい蛇?」

 私は薬草を摘んでいる手を休め、アーサーが掘り返している土を見に行く。そこでうねうねと動いていたのは、ミミズだった。まあ、城の中で生活して土いじりなんてした事がないアーサーなら見た事がないというのも納得ができる。


「ただのミミズだ。土に栄養を与える地の属性の生き物だ。無暗に殺すなよ。薬にもなるからな」

「えっ? これが?」

「東の魔女は、地の竜と呼んで、乾燥させて粉にする。解熱効果がある」

「うげっ。これを飲むのかい?」

 眉を顰めアーサーはとてつもなく嫌そうな顔をした。

「百足の油は火傷に効くが、中々に気持ちの悪い外見だ。世の中の人間は足がないものが駄目なタイプと足が多いのが駄目なタイプに分かれるそうだが、魔女と生活するとなれば、どちらも目にする事になるだろうな」

 アーサーの表情をみて、ピンときた私は意地悪く伝える。

 薬というのは、使う前はかなりグロテスクな外見をしている事が多い。そういうのがもしも駄目なら、逃げ出すのも時間の問題だ。

「へぇ。エルニカはやっぱり凄いね。色々知ってるんだなぁ」

「気持ち悪くないのか?」

「なんで? 勿論これが薬になると聞けば驚きはするけど」

 演技で誤魔化しているのかなんなのか。どうしてこの男はそこまでしてここに留まりたいのかも良く分からないというか、私はアーサーについて良く分からないことだらけだ。

 元々王子と関わるなんて事が起こるはずもないと思っていたので、政治関係の話なんて調べた事がない。ここは魔女会を通して探っておいた方が、今後の為にもいいかもしれない。

「私は積んだ薬草を薬にしてくるから、このまま土を耕しておけ」

 どちらにしろ、厳しく接すれば、いつかは嫌になって逃げだすはずだ。元々土いじりもした事がなく贅沢三昧だっただろう王子が、ここでの生活に耐えられるはずもないと私は踏んでいる。どんな薬だって、たちどころに治るようなものは危険なものも多い。長期戦で自分から根をあげてもらった方が私も安全だ。


 私は籠につんだ薬草を持って違う場所へ移動し、綺麗に水洗いをする。薬作りに魔法を使うものもいるが私はあまりそれが好きではない。作業効率は良くなるが、雑にもなりがちだ。薬と毒は紙一重なので、間違いを犯すことはできないのだから丁寧に取り扱いたい。

 井戸水で摘みたての薬草を洗い土汚れを落とし、違うものが混ざっていないかを確認してから、それを天日干しする。木々で隠れてしまうような場所だが、日がちゃんと入る場所もあるので、そこで乾燥させるのだ。薬以外に、ハーブティー用の葉も同様に乾燥させる。

 そんな作業を繰り返しながらやっているうちに、気がつけば昼を少し回ったくらいの時間となった。

 少し休憩を入れないとなと思い、私はアーサーを呼びに行った、が――。

「なんだ。逃げ出したのか」

 薬草の畑にはアーサーの姿がなかった。

 もうというべきか、それともやっとと言うべきかは分からないが、私は少しだけ寂しいような気持ちになって首を振る。いやいや、ほんの数日一緒に居ただけで、情が湧くとかありえない。きっと、異様にうるさくて強烈な存在感があったから、違和感を感じているだけだ。


「……ん? そういえば鍬はどこにやったんだ?」

 何故か鍬が見当たらなくて、私は首をかしげる。鍬を持っていったところで大した金になるわけでもなく、何の為にとしか思えない。しかし実際に畑からはアーサーと一緒に鍬もなくなっている。

 鍬がないと畑を耕すことはできない。

「鍛冶屋に頼むしかないが……」

 魔女で鍛冶をやっている者は少ない。

 既に打ちあがった剣などに付加価値をつけ魔剣にする魔女は居るが、魔鍬なんてものを欲しがるような奇特な人はいないので取り扱いが乏しいのだ。

 魔剣を扱う魔女に融通して、取り寄せしてもらうしかないが、時間もかかるだろう。そろそろ夏に向けての種を撒かなければならないというのに、本当に厄介事しか運んでこない男だ。

 私はため息をつきつつも、とりあえず休憩をしてから考えようと家の中へ戻った。

 心を落ち着かせるため、カモミールのハーブティーの準備をしつつ、バケットとチーズ、それに塩漬けの肉を用意する。空腹が収まれば少しは落ち着くはずだと思いながら。

 なくしてしまったものは仕方がないし、友人に馬鹿にされるのは分かってはいるが、何が起こったのか事の顛末を話して融通してもらおう。

 そう結論付けて、沸騰したお湯をカモミールを入れたポットに注ぐ。いい香りがして少しだけ気持ちが落ち着いた気がする。


「エルニカ、ただいま! あ、いいな。もうお腹がすいたよ。僕にもちょうだい」

 バンと力強く扉を開く音と共に、明るい声が聞こえて私はハーブティーをカップに注ぐ手を止めた。

 ……逃げたんじゃなかったのか。トイレだった可能性もあるが、それにしては遅い。どこかでサボっていたという所だろう。

 慣れない仕事だという事は分かるが、このお坊ちゃんめ。働かざる者食うべからずを得々と語ってやろうと振り向いた瞬間、私はドキリとした。

「怪我をしているのか?!」

 アーサーの服は血で汚れていた。

 どこで怪我した。いや、どこを怪我した!?

 私は慌ててアーサーの体を触る。私は薬は扱うが、医者ではない。とにかく止血をして、傷が深いなら、医師に診せなければ。

「いや。僕の血じゃないよ。畑を耕していたら悲鳴が聞こえてね。慌てていったら魔物に襲われて気を失っていた人がいたから、麓の村まで送り届けたんだ」

「東エーテルまで行ったのか?!」


 ん?

 叫ぶように聞いたが、東エーテルまではそんなに簡単に往復で来ただろうか。……まあ、急いで往復すればできなくもないか。

 いやいや、そこを気にしている場合じゃない。

「そりゃ、医者に見せる必要があったからね。どうやら怪我をした女性は東エーテルに住む人だったようだよ。あっ、女性を抱きあげたことになるけれどエルニカ妬かなくてもいいよ。僕の心は既にエルニカの――」

「そんなのは、どうでもいい。まさか、暗い森の魔女の家に住んでいるとか言わなかっただろうな?」

「えっ? もちろん伝えたさ。小さな集落だから、ちゃんと自己紹介をしないと、怪しまれるからね」

「馬鹿……」

 私は脳みそが綿でできているポンコツ案山子男に言葉に顔を覆った。あれだけ行くなと言った東エーテルまで行ったのは止むを得ないとしても、何故伝える。もう少し誤魔化しようもあっただろうが。

「このお茶、おいしいね」

「美味しいじゃない。勝手に飲むな。あーもう。魔女の所から来たなんて言ったら、怖がられ、罵られ、石をぶつけられただろう?! とりあえずお茶は精神を落ち着かせるものだから、お前にやる。だから落ち着いて聞け。いっておくが彼らはお前が憎いわけじゃなくて、私が恐ろしいだけだ。だから、彼らを恨むのは――」

「いや。親切にしてもらったよ。それどころか、畑の耕し方が分からないと言ったら教えてくれたんだ。やっぱり腰の使い方がコツみたいだね。今度はもっと上手く畝を作ってみせるよ。後、今度もっといい鍬をくれると言ってくれたんだ」


「は?」

 王子なんかに睨まれたら、東エーテルなんていう小さな集落は簡単に潰れてしまう。そんな事で逆恨みをされたらたまったものじゃない。

 そう思って言ったのだが、答えは私が予想したものとは違った。

「素朴で良い人達だね」

「どんな魔法を使ったんだ?」

 へらへらと笑うアーサーを見て、私は心底疑問に思う。あれか。こいつのイケメン王子オーラで上手く誑かせたのか。それとも、王子という事を言ったのか。でも普通はそんな言葉信じられないと思うが……。

「エルニカ、このバケットも食べていい?」

「食べていいというか、もう食べてるだろう。まあ、いい。ちょうど休憩する予定だったんだ」

 本当に自由な奴め。

 パクパクとパンを頬張るアーサーに私は皿の上のバケットを譲った。村に行って帰ってきたなら、腹も減っているだろう。

「休憩が終わったら、また畑を耕すからな」

「分かっているよ。そういえば、エルニカは間違っているよ」

「何がだ?」

「魔法を使うのは僕じゃなくて、エルニカの方だろう?」

 間違いないが……間違いないのだが……どっと疲れるのは何故だろう。

 案外、この何にも考えていないような空気が、村人の警戒を解いたのかもしれない。こんな馬鹿なら何もできないだろうという感じで。

 私は小さくため息をつきながら、長期戦だと自分に言い聞かせ、自分用のバケットの準備を始めた。




◇◆◇◆◇◆◇◆





 ある日の朝、普段は打ち鳴らされる事のない玄関の扉が叩かれ、私は目を覚ました。

 アーサーは……まだ寝ているな。初日こそ緊張の為か早起きしたようだが、きっと城に居た頃はグータラして贅沢三昧な上に美人メイドを侍らせていたに違いない。

 あのナンパな女性慣れした性格は、それぐらい恵まれていないと身につかないように思う。

「あ、あの……」

 アーサー起きていないならば、扉を鳴らすのは魔女友の誰かだろうかと顔を出せば、そこには若い女性としっかりとした体格の男が立っていた。綺麗な金髪と茶色の髪……魔女ではなさそうだ。旅人が道にでも迷ったのだろうか。

「何の用だ。ここは、暗い森の魔女の家だが?」

 私の名前はかなり悪名高い。自慢ではないが、王都では、相当恐れられていると自負している。だから大抵はこの名前を出しただけで、人は悲鳴を上げて逃げていく。まあ、脳内お花畑な王子様という例外も居たわけだが、アレは稀な例だ。

「わ、私。このあい……あいだ」

 青い顔をしながら女性の方がとつとつと喋る。この間?

 どこかで見かけた顔だろうかと思うが、まったくもって覚えがない。というか、最近会った人は、アーサーとその婚約者ぐらいだ。

「私は愚図は嫌いだ。さっさとここから立ち去らなければ、カエルにして食べてしまう――」

「こおら。エルニカ駄目じゃないか。そんな喋り方をしたら、お嬢さんが怖がるだろう?こんにちは、お嬢さん。怖がらなくていいよ、今のは魔女風の冗談なんだ」

 何が冗談だ。私は自分の口を塞ぐ馬鹿の手に思いっきり噛みついてやる。

「いったぁっ!」

「冗談はお前だけで間に合っている」

「人をカエルにした事なんてないじゃないか」

「お前が知らないだけだ」

 実際、私は人をカエルになんかできない。たまたまカエルに話しかけていた所を見た村人が、勝手に人をカエルに変えてしまうという噂を流しただけだ。まあ、その噂に上手く乗っかり、私も否定はまったくしなかったわけだが。

 でもあえてここでネタ晴らしをして、村人に舐められるわけにはいかない。

「ならどうして僕をカエルにしないんだい?やっぱり口では邪魔だと言って邪険にしているけれど、心の底では僕を愛しているんだね。僕も愛してるよ」

「違うわ、馬鹿者。か、カエルは、今は不足していないからな。あえてそんな面倒な魔法を使う必要はないだけだ」

「なるほど。というわけで、エルニカはカエルにしないから、そんなに怯えなくてもいいよ。どうしたの?こんな山奥まで」

 しまった。トラップか。

 言質をとられてしまい、私はうぐっと黙る。本当にペラペラ喋る男だ。

「あ、あの。あの時、助けてもらえて……」

「ああ。もしかして、あの時のお嬢さんの関係者? この森には魔物が結構いるからね。気をつけないといけないよ」

 魔物……ああ。

 この間、アーサーが東エーテルまで送り届けた女性の事か。アーサーが血まみれになって帰ってきたのを思いだす。

「お姉ちゃん……なんです。お腹に子供もいて。本当に、ありがとうございました。ただ、お姉ちゃんの熱が引かなくて」

「お腹に子供がいるのか?!」

 私が大きな声を出した所為でビクッと、女性と更にその後ろに居る男が震えた。怯えた表情の2人に私は舌打ちをする。

「……熱さましの薬をやろう。それでも症状が落ち着かなければ、女性をここまで連れて来い」

 ただ怪我の為に熱が出ているだけならいいのだが、これがもしも魔物の毒だった場合、状態を見なければ薬を出すことはできない。

「見返りは?!」

 男がのり出すように私に喋る。声が大きいのは、私が怖いからだろう。

「今回は親愛の印だ。うちの馬鹿がお世話になったからな」

「ええっ。お世話したのは僕の方だよ」

 私の所から来たと言って、石を投げつけられなかったくせに。怪我人の親族が仲介にでも入らなければ無理だろう。

「ただし、熱が下がらずもう一度私の前に現れた時は、お腹の子供を貰う」

「なっ。俺の子供に何する気だっ!!」

「お、お兄ちゃん」

 そうか。怪我した女性のコイツは旦那か。それはご愁傷様な事だ。ただ妊婦を魔の森に行かせたコイツにも罪はある。

「なら私の前に、二度と現れない事だな」

 私は部屋へ戻ると、熱さましの薬を持って、興奮していない女性の方へ手渡す。

「その丸薬を朝晩2回、1回1錠飲め。多く飲み過ぎたら、子供は確実に死ぬから好きにすればいい。飲まなくても高確率で死ぬがな。私は朝の時間を邪魔されるのは嫌いだ。本当にカエルにされたくないなら、さっさと立ち去れ」

 私はそう言って、部屋の奥へと戻る。アーサーが何かまだ話しているようだが、私の知った事じゃない。

 しばらくして、アーサーも部屋の中に戻ってきた。

「ねえ、どうして次に来たら子供を貰うと言ったんだい?」

「子供はいい薬になるからな」

「嘘。それなら、今でもいいわけだし。魔物の毒に侵されている場合、子供に何かあるのかい?」

 知っていたのか。

 それとも、勘がいいのか。

「……魔物の毒に侵された子供は、人とは異なる見た目や能力を持つんだ。そういう子は、魔女の世界で生きた方が幸せだ」

「エルニカは優しいね。エルニカもそういう子供なのかい?」

「私は先祖に異国の人がいただけのただの醜い人間さ。友人にそういう子が居るんだよ」

 私はただの人間だから、魔力も大して強くない。

 魔女になっても、魔女になりきれず馬鹿にされる。だから舐められないように、気をひきしめなければいけないのだ。

「だから、私が優しいなど馬鹿馬鹿しい事を言うな」

 私はそうアーサーに伝えた。

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