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第2話 6月①

6月2日。

病気になりそうな気分になるどんよりした天気の中、とある1台のトラックがある場所に向っていた。

運転手はマリオネット人形のように手足を動かし進む。生気がない目をして。

誰かが、ダレカの手によって危険に飲み込まれることも知らずに。知ろうとすることも出来ずに。

さらに同時刻。

札幌で、人が殺された。

犯人は未だに逃走中だ。


                       ×


しつこいようだが同時刻。

北海道のある場所に、とんでもない家がある。

その家では夜な夜なキーボートを叩く音が、静かな部屋に鳴り響くという。何時間も間をおいて。

先ほどようやく音が鳴り止んだが替わりに聞こえてきたのは謎の呪文だった。

「アライブアッサムエロイムエッサムエロイノダイスキxcvじっじpksdるせs80・・・・・・」

紙に魔方陣を書いてその上に立ち、ロウソクを片手に必死に喋っている男が居た。

言語が崩壊しているのも含め、もうそれはそれは死ぬ気で神頼みをしているおかしな姿にしか見えなかった。

「こ、これでっっ、・・・・書けるハズっ・・・・・・!!」

どこで覚えたのかさっぱり分からない呪文を唱え終わって、彼は再び愛用の水色のノートパソコンの前に座った。キーボードに手を掛けるが画面には何も浮かばない。

「・・っくっ・・・!・・・諦めるかっ・・・・」

だか彼は諦めない。

「・・・書けん・・・!」

諦めない。

「いや・・・・書けないじゃない。書くんだっ・・・・」

諦めない。

「書けない書けない書けないよしもう今日は終わりにしよう!」

諦めた。

悲鳴のような滑稽な叫びを挙げて彼はノートパソコンを叩きつけるように畳んだ。

神を怨むような目をしながら、思いっきり両手で頭を搔き毟って豪快にフケが落ちる。

目の下には巨大なクマが威圧感もをただ寄せて存在しており、彼の整った顔つきをそれはもう見事に台無しにしていて滑稽度が約47パーセントほど上昇している。

くしゃ~とため息をついて彼はそのまま寝落ちした。汚いいびきが部屋に響き渡る。

足元には飲みかけのコーラや栄養ドリンクが大量に散乱していて、その数はおよそきっとなんと88本。

部屋の電灯はとっくに切れていて、冷蔵庫は2時間前から空きっぱなし。

少ない衣服がこれでもかと言うほど床に投げ出され、食卓テーブルは埃をかぶり、ノートパソコンが置いてある机は食べかけのお菓子がまたしてもこれでもかと言うくらい散らばっていた。

この状況を見れば、一体彼が普段どんな生活を送っているか容易に想像がつく。

そう、彼は仕事もせず1日中ノートパソコンにかじりついて、駄文と呼ぶに相応しいデータを書き綴っている日々を送っていた。

要するにニートである。

だが、彼は親のスネをかじって生きているそこらそんじょのニートとは少し違った。

彼の元には、もう誰もいないのである。

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