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第五話「こんなのって…ねぇよ…っ!」

第五話「こんなのって…ねぇよ…っ!」


目的地に到着した三人は驚愕する。


「何でこんなことに…っ!」


「…ここ、通りだったんだよな…」


家屋は無かったものの、そこは中々交通量の多い場所。


綺麗に舗装されていた道が、跡形もなくなり荒地と化していた。


「あれ…君はアルフレッド君。


ここは危ないから帰った方がいいよ。」


向こうから歩いてくる人。


見覚えのある漆黒の鎧。


「あなたは…イワンさん…」


「バルドロさんから名前聞いたの?」


アルフレッドは心の中でしまったと思った。


(やばい…言ったらいけなかったのかな…)


「僕は気にしないよ。


皆や君にどう思われていようと、僕は僕の正義を貫くのみ。


だから、この自警団に入ったのさ。」


(俺って何か勘違いしていたのか…?


やっぱりこの人はいい人だ。


バルドロさんは間違ってる。)




「だから、僕の正義を貫くために、君は死んでくれ。」




イワンがアルフレッドに斬りかかる。


「ッ!?」


アルフレッドは突然の出来事に思考が追いつかない。


『The durty soul wandering in the hell is burned off by devine fire.』


魔法を詠唱する声。


アルフレッドの後方で待機していたガイによって発せられた物だった。


「炎か…小賢しい!」


打ち出された炎を剣で薙ぎ払う。


「くっ…」


その隙にアルフレッドは後方へと下がった。


「君達三人を、生かして帰す訳にはいかない。」


イワンの剣から、黒いオーラが染み出る。


「暗黒剣『メギド』」


剣を地面と平行に構えたかと思うと、黒いオーラが形をもって三人に放たれる。


アルフレッドは未知なる技に向かって、剣を鞘から引き抜き切り裂いた。


「僕の暗黒剣を切った…?」


イワンは愕然とする。


(あれは私の弓…ならば…)


シンシアが落とした弓を見つける。


「君、居合抜きが出来るなんて…


少し舐めていたようだね。」


「余所見してるなんて、いい度胸だな。」


横方より、女の声。


シンシアが拾い上げた弓でイワンを狙っていた。


「弓ごときでは僕を倒せないよ。」


「それはどう?」


『The lightning edge tears even iron.』


シンシアが矢を放つ。


と、同時に、ガイも魔法を詠唱した。


「魔法付加…?


君達、中々やるね。」


放たれた矢に電撃がまとわりつき、イワンを襲う。


「暗黒剣『アナデマ』」


イワンの持つ剣から邪悪なる気がにじみ出る。


それが実体化して、一矢を受け止めた。


「メイジ、弓使い、剣士。


君達は中級職と初級職。


対して僕は上級職。


果たして、君達は僕に勝てるのかい…?」


先ほど実体化した物が三人に近寄る。


「終わりだよ。」




「そこまでだ。」


聞き覚えのある声。


「その声は…」


アルフレッドが振り返る。


「グレイブさん…?」


先日、剣士集会場で会ったグレイブ・オークスが、そこにはいた。


しかし、雰囲気が前とは違う。


以前と異なる服装だからか、以前の友好的な感じは無く、真剣な表情しか感じとることが出来ない。


(この服装…どこかで…)


青いコートにズボン、そしてベレー帽。


全身を青に染め上げる服装。


それは、軍隊を連想させる様だった。


「これって…国軍の…」


ガイが口を開く。


「国軍が来たなら安心だな。」


シンシアも安堵する。


「ちょっと待てって!この人は剣士集会場の…」


「久しぶりだな。イワン・マクラーレン。」


アルフレッドの声を遮るかの様にして、グレイブらしき人物は喋る。


「貴方が動くとは珍しいですね。


グレイブ・オークス。


いや、本名はアルミナ・オライブでしたっけ?


佐官クラスの貴方が私を止めにくるとは…


司令の指示ですね。」


「そこまで理解してくれていると話は早い。


計画は動き始めた。


そして、イワン・マクラーレン。


貴方を第一種重要指名手配犯として拘束致します。」


「嫌だと言ったら?」


「…力ずくでも…ッ!」


グレイブが剣を構える。


「ちょっと待ってください!


どういう状況なんですか?


それに第一種重要指名手配って…」


アルフレッドがグレイブに詰め寄る。


「私はアルミナだ。


そして部外者は下がってろ。」


荒々しく、グレイブ改めアルミナは剣を薙ぐ。


三人は後方に吹き飛ばされ、場はイワンとアルミナの一騎打ちとなった。


『The frozen ice binds move to escape from fear for death.』


イワンの足元が凍りつく。


それはだんだんイワンの下半身を侵食していく。


「流石魔法剣士だね。


これじゃ動けないよ。」


イワンは剣を地面に落とし、両手を挙げる。


「ほらこの通りだ。


早く牢にでもぶち込むがいいさ。」


その言葉を信じ、アルミナがイワンに近づく。


「なんて言うとでも思ったか?


『カース』」


黒い光がイワンを包み込み、それが周りに放たれる。


「があああっ!!」


アルミナが吹き飛ばされる。


地面に伏すアルミナ。


それを静かに見つめるイワン。


その状況を、ただ、アルフレッドは見ていた。


「こんなのって…ねぇよ…っ!


酷すぎる…やめてくれよ…


何かの間違いだろ!?イワンさん!!」


「アルフレッド君。


君は勘違いしている。


君の正義と僕の正義は正反対だ。


なんたってーー」


イワンが漆黒の兜を脱ぐ。


凛々しい顔つき。


好青年がにっこり微笑む。




「僕は魔族だ。」




イワンの鎧が砕け落ちる。


その下から黒々とした獣毛が現れる。


異常なほど伸びている爪。


いつのまにか微笑んでいた顔が、人間の物ではない、魔物の様な醜いものとなっていた。


「イワン…さん…?」


アルフレッドは体を震わす。


恐怖で心が満たされ、立つことで精一杯である。


「下がれ…アルフレッド…」


アルミナが背後から話しかける。


「今のお前じゃこいつには敵わない…


逃げるんだ…


これが剣士集会場のグレイブ・オークスとしての…最後の忠告だ…」


アルフレッドの肩に、一つの手が乗せられる。


「退こう。今の私達じゃ無理だ。」


シンシアの手だった。


振り返ると、ガイも頷く。


(くっそ……くそおおおお!!)


感情を押し殺すために、唇を噛む。


血が出るのも気にしない。


「若いな。」


突然、別の声がした。


この場にいるはずもない人間の声。


「しかし、成長の見込みは充分にある。


その若い芽を摘み取らせは…絶対にしないッ!!」


睨みを効かせる大男、


新人教育係のバルドロ・アームストロングだった。


バルドロはアルフレッドの前に出て、

イワンと向かい合う。


「さあ!立ち去るんだ!アルフレッド・ガルシア達よ!


ここは私に任せるが良い!」


前を向いたまま、バルドロがアルフレッドに言葉を投げた。


「何でバルドロさんが…」


「行くぞ!!」


アルフレッドの疑問は解消されないまま、ガイに手を引かれて三人はその場から逃げ去った。


「バルドロさんも、やっと動き出すみたいだね。」


イワンが話す。


『The medicine, like cures like, can be elixir.』


バルドロはそれを聞き流しながら後ろで倒れているアルミナの傷を癒す。


アルミナの傷口がみるみるうちに塞がり、アルミナは剣を杖代わりに立ち上がった。


「お前が魔族だということを自分で明かしてくれたお陰で、手間が省けた。」


バルドロが喋る。


「僕が魔族だという決定的な証拠が無かったから動けなかったんだよね?


魔族クラスになれば、魔王にも繋がる。


そう考えたはずだよ。君達は。」


イワンは笑む。


「何がおかしい。


そうでないなら、他に何がある!?」


バルドロは声を荒げる。


「魔王はそんなに甘い存在ではない。


魔族すら倒せない君達に、魔王など百年早いよ。」


イワンがバルドロの元へ飛躍し、斬りつける。


バルドロはそれを片手で防ぐ。


「剣士と格闘家を極めし者、剣闘士。


中々やるじゃないの。」


イワンは後方へ下がる。


バルドロはすかさずイワンの懐に飛び込んだ。


「朽ちろっ!」


左手に大剣、右手は拳、それぞれをイワンに突き出す。


激しい爆発が、そこで起こった。


「スカー大佐!戻りましょう!」


アルミナがバルドロに向かって叫ぶ。


「この程度で終わるはずがないが…


まあよい。今回は撤退しよう。」


荒れ果てた地で、二人の人間が歩き出す。


車に乗り込み、速やかに戦地を後にした。


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