第四話「パーティーを組まないか?」
第四話「パーティーを組まないか?」
数日後、バルドロの言葉通り、アルフレッドは酒場に来ていた。
「うおっ…!
厳つい奴らばっかだな…
マスター、スクリュードライバーを。」
アルフレッドはカウンター席に座り酒を頼む。
すると、後ろのテーブルから何か揉めている声がした。
「てめえのせいで討伐失敗したんだ!
契約金は帰ってこない、悪評は流れる、全部お前のせいだ!!」
「……あそこであの魔法を使ったのは判断ミスかもしれない。
だがあの時にお前が前に出て斬っていれば…!」
遂に二人は立ち上がり、拳を交え合う。
「やめ…っ…」
アルフレッドが止めに入ろうとした。
しかし、酒場のマスターが腕を掴む。
「こういうのは見守るもんだ。
当人たちの問題だからな。」
「…」
アルフレッドは、その喧嘩が終わるまでずっと見つめていた。
「次に会ったらぶっ殺す!」
罵声を撒き散らして一人が酒場から出た。
もう一人は出て行くのを睨んで、静かにテーブルに座り直した。
「…大丈夫ですか?」
アルフレッドが恐る恐る尋ねる。
「なあ、お前。
パーティーを組まないか?」
男が突然言う。
「俺はガイ・マデューカスだ。
さっき見ての通り、パーティーを解散したばっかでな。
あ、今のは冗談だよ。気にするな。」
「いいっすよ。」
アルフレッドが答える。
「え?」
「パーティー、組んであげますよ。」
「冗談って言っただろ?
それに、お前パーティー組むの初めてだろ?
そんな奴と俺が組むとでも…?」
「…じゃあ、せめてさっきの原因だけでも…」
ガイは少し考え、口を開く。
「お前、悪魔知ってるか?」
「悪魔?」
「物凄くつえー怪物さ。
この世の悪の根源とも言える。」
「…それが?」
「そいつのな、眷属っつう手下と戦ってきたんだ。
手下というよか悪魔の右腕か?」
「それって結構凄いことじゃ?」
「いいや。
戦うだけなら誰でも出来るさ。
戦うだけならな。
だがな、どんなに頑張っても倒すことは出来ない。
力量が違いすぎる。」
「じゃあ負けたのって…」
「必然だったのさ。」
「じゃあ何であんなに怒って…」
「将来が掛かってたんだ。」
「将来?」
「あいつは何も悪くない。
仕事を依頼した国軍がわるいんだよ。
契約金は全財産。
報酬は一生軍から生活支援が出ることだ。
パーティー成績もあんまり良くなかった俺らは生活も厳しかった。
そうするしか…道はなかったんだ。」
「じゃあ…何でガイさんはこんな呑気に?」
「契約金払うのはリーダーだけでいいからな。
あいつが金は全部払ったよ。」
「はぁ…」
「…なあ、本当にパーティー組んでくれるのか?」
ガイが問いかける。
「別に…どちらでも…
ってかそっちが冗談って言ったんじゃ!」
「んー、気が変わったんだよ。
その装備、剣士だろ?
丁度剣士と組みたかったんだ。
よろしくな。」
「よ…よろしく。」
二人が握手する。
「あ、言ってなかったが俺は魔導士だ。
タイプはメイジ。
攻撃専門ってことだな。
僧侶も少しかじったことがあるが、結局また魔導士に戻ってきたんだよ。」
「俺はつい先日剣士になったばかりで…
スキルとかそんなの全く無いです。」
「その敬語やめてくれない?
パーティーならタメでいいだろ。」
「あー…
そう、だな。」
「そうそう。
そんな感じでいいぞー。
年とか俺気にしないし。
ハッハッハッ!」
ガイは高笑いする。
「んじゃ、俺、パーティーの申請書持ってくな。
適当に待っててくれ。」
そう言い、ガイは酒場を出て行く。
「さて、どうするか。」
アルフレッドは考える。
そして、答えに至った。
「…酒のもう」
数十分後。
いつまで経ってもガイが帰ってこない。
「どうしたんだろう…」
酒場を出て探そうとし、ドアノブに手をかける。
「うぉっ!」
丁度扉が開いた。
「わりい、遅くなっちまった。」
ガイが帰ってきた。
「…誰?」
アルフレッドは焦る。
「拾ってきた。」
ガイは一人の女性を抱きかかえていた。
「誰だよこれ!誘拐じゃないか!!」
「落ち着け落ち着け。
攫ってきたんじゃねえよ。
魔物に殺されかけてたのを助けてやったんだ。」
そう言いガイは酒場に入る。
その時、気絶していた女性が目を覚ました。
「ん……ここは?
ってなんだお前は!
何故私を抱えているのだ!」
強烈なアッパー。
ガイはそれを顎で受け、そして倒れた。
「ぐはっ…!
この拳…格闘家か…?」
「うるさい!
あれ…?
そう言えば私は魔物と戦ってたんじゃ…?」
女がやっと気づく。
「ガイが助けてくれたんだ。」
アルフレッドが床に伏している者を指さして言う。
「じゃっじゃあ私は命の恩人を殴って…?」
「そういうことだな。」
「本当にすまないっ!
許してくれ!この通りだ!」
女が合掌して頭を下げる。
「それだけかよっ!」
ガイが跳ね起きた。
「なんだ、元気じゃないか。」
「なんだってなんだよ!」
ガイが拳を上げる。
「抑えて抑えて。」
アルフレッドがガイを掴んで抑える。
「女に拳を振るうとは最低だな。」
「何だと…!」
「ちょっと待った!
いいこと考えた!」
アルフレッドが間に入る。
「えっと…」
「シンシアだ。シンシア・グレイスフォード。」
「シンシアさん。
パーティー入ってる?」
「いや。ソロで旅している。」
「それじゃ、パーティーに加わらない?」
「おっ!それなら俺も賛成だ。
一人でも多い方がいいよな。
さっきの殴ったことチャラにしてやるからどうだ?」
さっきまで怒っていたガイの顔が晴れる。
「…仕方ない。
面白くなかったらすぐに抜けるからな!」
こうして、三人のパーティーが成立した。
「なあ、何で魔物と戦ってたんだ?」
アルフレッドが疑問に思っていたことを口に出す。
「国軍からの依頼があってな。
魔物の討伐と称していた。」
「称していたって…?」
「あれは魔物というより、魔族に近い。
魔物は知能を持たない単体では生きていけない弱い生き物だ。
しかし、魔族は違う。
高い知能を持ち、魔物を操る。
そして、その魔族の頂点に立つもの、それが…」
ガイとアルフレッドが息を呑む。
「魔王だ。」
「魔王!?
魔王って架空の生物じゃないのか!?」
「魔王は現実に存在する。
そして、攻撃を始めようとしている。」
「何だって!?」
「そのせいで魔物が凶暴化してるんだ。
私としたことが不覚だった。
…そう言えばガイ?でいいのか?
私が倒れていた所に弓が落ちてなかったか?」
「弓?そんなのあったっけな…
あれ?ていうか何で格闘家に弓が必要なんだよ。」
ガイは不思議なかおをする。
しかし、シンシアも同じ顔をしていた。
「??何を言っている。
私は戦士だ。
今は中級職で弓使いだがな。」
「はあ…アッパーが強かったからてっきり格闘家だと思ってた。」
アルフレッドとガイが驚く。
「仕方ないな。
あそこまで行くぞ。」
「あそこって?」
アルフレッドが尋ねる。
「私が敵と戦っていた所だ。」




