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第十二話「俺を残して先に行け。」

第十二話「俺を残して先に行け。」


「アルフレッド!無事で良かった…!」


「すまなかった。もう逃げたりなんかしない。」


「なんか…変わったね。」


シンシアが呟く。


「ん?」


「逞しくなった気がする。


…今のアルフレッド、かっこいいよ。」


「…そんなに褒めても何も出ないぞ。」


「さあ、感動の再会は後だ。」


ヴェルナーが間に入る。


「魔族を倒したことによって、魔物達の陣形が崩れ始めた。


後はアルミナ達だけでも十分だろう。


…しかし、問題は第二波だ。


第一波は偵察、様子見だろう。


第二波からは敵も本腰を入れてくる。


…ぬかるなよ。」


ヴェルナーを先頭にして六人は進む。


目の前に魔物の第二波を発見する。


しかし、それは予想とは違う形だった。


「まさか…


スペルピラミッドか…!?


想定外だった…」


スペルピラミッド、陣形の一つである。


Vの字になって、リーダーを最後尾に置く陣形だ。


しかし、リーダーまではガラ空きになるので、あまり使われる事は無い。


…しかし、この陣形には大きな利点があった。


三角形の陣形は魔法を打つときに一点に集中する。


魔法の威力は何倍にでもなるのだ。


そして、その一点とは、陣形の左右端、リーダーを頂点とした三角形の中心の点だ。


そこに足を踏み入れれば、一瞬にして敗北は必至である。


しかし、そこを通らなければ先に進むのは難しい。


八方塞がりの状態。


それを打開する案をヴェルナーは持ち合わせていなかった。


「どうする…」


「俺にいい案がある。」


口を開いたのは、ガイだった。


「俺が囮になる。


俺が攻撃を受けている間に魔族に集中攻撃しろ。


俺は魔法で攻撃なんて跳ね返せる。


これでいいか?」


「魔族が倒せない時はどうするの?


ガイもそこまで攻撃を防げないでしょ?」


「この陣形で来たということは、魔法に特化した魔族のはずだ。


懐に入り込めば必ず勝てる。


しかし…」


ヴェルナーが途中で口を止め、ガイを見る。


ガイは真剣な眼差しだ。


「…やっぱりなんでもねえ。」


「そろそろ近づいてきたな…」


「行くぞ!!」


敵陣形の中心部へ走る六人。


ガイだけが途中で止まり、詠唱を始める。


『Covert all life to mighty force.


Don't be afraid of death.』


「……もしかして…」


シンシアが何かに気づいた。


「やめて!ガイ!!」


皆が立ち止まる。


「俺を残して先に行け。」


光に包まれるガイ。


「魔法反射の魔法なんて嘘よ!


だってあんた…メイジだったじゃない!


攻撃専門のあんたが…ウィッチでも無いのに補助魔法を使えるはずがない!」


「早く行けよ!」


魔法がガイに向かって飛来する。


『Hell fire burns off something all.』


飛来する魔法を魔法で相殺する。


弾け飛んだ火柱が辺り一体に降りかかる。


「熱…っ!」


五人の周りにも引火する。


「ガイ!!死なないで!!」


シンシアがガイの元へと走る。


「バカ!お前も死ぬぞ!!」


ヴェルナーがシンシアを止める。


「お前とパーティー組めて、最高に嬉しかったぜ。またな。」


男は感謝する。


己の命を代償に、世界の秩序を選んだ。


『My gratitude is the strongest of all the force.


My wish brings quite a lucky in the world』


五人が既に魔族に向かって走る。


後方で巨大な爆発音。


恐らく、ガイが放った最期の魔法であろう。


その音に一瞬身体が反応する。


シンシアは感情を抑え込み、迎撃を始める。


「当たれえええ!!」


遠距離からシンシアがクロスボウを構える。


対象は魔族。


ボルトが放たれる。


しかし、それは虚しく外れる。


「その程度か!人間よ!!」


「もう一度…


ガイの魔法なら、確実に当たっていたはずよ…」


シンシアが再び構える。


ボルトを取り付ける。


そして、放つ。




『最期の力だ。受け取りな。』




「…!?ガイ!?」


ボルトには、魔法が付加されていた。


楽しみを意味する炎が。


「ナイスだ!シンシア!!」


アルフレッドが魔族の元へ辿り着く。


燃え盛る魔族、それをアルフレッドが一閃し、魔族は絶命した。


ヴェルナー、スカーは周りの魔物を退治する。


しかし、その数は先ほどと比べてあまりに少ない。


「お前の意思、無駄にはしない。」


ガイの放った最期の魔法、それが魔物の大多数を巻き込み、消滅させていた。


「ガイ…っく……!!」


ミーナが涙を流す。


シンシアも涙を堪えるが、涙は溢れ出る。


「先へ進むぞ。」


魔物を倒し終えたヴェルナーが冷たく言い放つ。


「ガイは…?探さなくていいの?」


「戦争に死者は付き物だ。」


「私達は…したくて戦争してるわけじゃないのよ!」


珍しく、ミーナが声を荒げる。


「不本意で国軍に呼ばれて…勝手に戦わされて…


私達は軍の駒なんかじゃない!!!」


「甘ったれたこと言うな!!」


「っ…!!」


「お前等がやらなきゃ、誰がやる。


これは個人の問題じゃない!


力のある者がしなければならないことだ。


頭を冷やせ。現実を受け止めろ。


怒りでどうにかなるもんじゃねえぞ。」


ミーナはヴェルナーを睨みつけたままだ。


「…もう、やめよう。


ここで争っても、何の解決にもならない。


今は、魔王を倒すことだけを考えよう。」


シンシアが止めに入って、一段落がついた。


一行は前進を続ける。




「珍しいな、ミーナがあんなに熱くなるなんて。」


アルフレッドが訊く。


「…認めたく無かったのよ。


ガイは私達の大切なパーティのメンバー、そして仲間、親友じゃない。


もう会えないなんて…嫌だから。」


「優しいんだな。ミーナは。」


「え?」


「……ガイの分まで、俺が身体を張ってやる。」


「……ありがと。」


「お二人さん。いいところですまねえが、あれを見ろ。」


ヴェルナーが間に入って言う。


「第三波だ。恐らくあれが最後だ。


そして、あれの指揮を取るのが……」


「魔王…?」


「そうだ。


今度は今までみたいに上手くはいかねえ。


心してかかれよ。」


「…ヴェルナーさんは何で国軍に?」


アルフレッドが突然話を変える。


「ああ?」


「ちょっと気になっただけですけど。」


「…敵討ちだ。


俺は家族、親友、仲間、全てを魔王に殺された。


国軍のトップなのに、魔王を倒す動機が世界平和のためじゃなく私怨なんだからな、笑えるよな。」


「…じゃあヴェルナーさんも同じですね。


俺はガイの仇をとります。」


「…自分を見失うんじゃねえぞ。


って言っても、一番冷静なのはお前だったな。」


たわいない会話の様に聞こえる。


それは最後の日常的な会話で、もう後戻りが出来ないところまで来ていた。


目の前に広がるのは、魔物の波。


その中心には、一際強い威圧感を醸し出すものがいた。


恐らくそれが魔王。


ヴェルナーが先陣をきる。


「敵陣形は虎穴陣。


一気に魔王まで攻めるぜ!!」


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