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第十一話「動き始めやがった…」

第十一話「動き始めやがった…」


「ここにお前等を呼んだのは、他でもない。」


青軍服の大男、スカー・オーランドが喋り始める。


その視線の先には、一人欠けた三人のパーティ。


「お前等は魔王との決戦に不可欠なんだ。」


三人は驚くが、スカーは話を続ける。


「驚くのも無理もないだろう。


理由はただ一つ、魔王の側近であるであろうイワン・マクラーレン、それと繋がっている唯一の人物達、それがお前等だ。


そして、その中でも確実に信頼関係を築いていると思えるのが…」


スカーは三人を見回す。


しかし、目当ての人物はその場にはいなかった。


「アルフレッド・ガルシアだ。」


「アルフレッドが!?」


「これはただの推測だ。


しかし、イワンの性格からするとこの考えに至る。


…イワンは多分認めて欲しかったんだろう。


自分の力を。そして、慕って欲しかったのだろう。


皆、例外である暗黒騎士を、嫌い、罵った。


しかし、アルフレッドは違かった。


アルフレッドは素直にイワンを受け入れた。


そして、目標にした。


それが恐らく、イワンにとって忘れられない人間の思い出となっているはずだ。」




「そして、俺はイワン・マクラーレンを超える。


騎士ではなく、侍としてだ。


相手がイワンさんだろうと、自分の憧れであろうと、やらなきゃいけないことはやる。


それだけだ。」


アルフレッドが刀を振るう。


何度も、何もない空間を。


そこにイワンに対する思いがあるかのようにして、断ち切る。


その時、彼は何かに気づいてしまった。


「何だ…この予感…?


まさか……!!」




事件は起こった。


東国の服装をした、一人の兵士が、瀕死の状態で軍本部に謁見しにきた。


「緊急事態です…


魔王が…魔王が東国を…」


ヴェルナーが顔をしかめる。


「遂に動き始めやがった…


まだ準備は終わっていない…


どう動く…!?」


「あの…何があったんですか!?」


その場に居合わせていたガイ達三人が尋ねる。


「東国が消滅した。


魔王の侵攻によってな。」


「東国が…消滅…!?」


先日まで自分達がいた場所、そこが既に魔王の手によって、無くなってしまった。


東国の人々は皆、恐らくはゲンドウも死んでしまったのだろう。


「魔王…許さねえ…!!」


「速達です!!」


又もヴェルナー達の元へと兵士が来る。


「西国東国境より魔王軍襲来します!


第一波が現在接近中の様です!」


「数は?」


「目測でも千以上は堅いかと…


魔族が軍を率いているみたいです。


魔族を倒せば敵陣形は崩れるかと…」


「敵陣形は分かるか?」


「トライアンカーです。


最後尾に魔族が控えています。」


「雑魚を盾にするつもりか…


此方はワールウィンドだ。


前衛に物理系上級職、後衛に魔法系上級職をおけ。


アルミナ、お前が軍を率いろ。」


「御意です。


しかし司令はどうするのですか?」


「俺はこのパーティ、あとスカーと別に動く。」


「了解です。」


ヴェルナーの驚異的な仕分けで軍全体が動き出した。


「さて、俺らは先に行くぞ。」


ヴェルナーとスカーが歩き出す。


「ってそっちは司令室じゃないんですか!?」


シンシアが言う。


「嬢ちゃん、目の前の情報は全て疑え。


この標識が間違っているかもしれないだろ?」


「今は例えはどうでもいいです!


一体何で司令室に…」


ヴェルナーはそれ以上何も話さずに司令室に入った。


その部屋には、巨大な机、そしてぽつりと一つだけ置かれた革製の高級イス。


どうみても、ただの司令室だった。


「こうすんのさ!」


ヴェルナーが窓ガラスをぶち破って突進する。


そして、スカーもそれに続く。


「……って!ここは最上階よ!!」


世界一の高さを誇る西国軍本部。


その最上階から飛び降りた男が二人。


いつぞやの時計塔を思い出した。


「Come on,my heroic vehicle!!」


ヴェルナーが唱える。


それは、魔法とは違う何か。


「何だ…あれ…?」


ガイが目を丸くする。


その視線の先には、此方に向かう一つの影。


「お前等も降りてこい!」


ヴェルナーが空中で叫ぶ。


「んな無茶な!」


三人は飛び降りた。




急降下する。


速度が上昇するのが身にしみて分かる。


もうダメだ。


目を閉じて祈る。


アーメン




何かに着地した。


「え?」


しかしここは未だ空中。


よく見るとそれは何かの背中の上だった。


「どうだ?俺のペット『バハムート』の乗り心地は?」


「どうみてもグリフォンですけど。」


「だがな、このグリフォンは一味違うぜ。


真っ赤な毛並みを持つグリフォンの突然変異種、『フェニックス』だ。」


そんな会話をしながら進むこと数十分、目的地の国境付近まで辿り着いた。


「何だ…!?この数…!」


そこには、数千の敵勢。


魔物、不死者、悪魔など、多種族が敵にはいる。


「空中から攻めるぞ!」


ヴェルナーはフェニックスを低空飛行させ、敵に近づく。


「悪魔は私がやります!」


ミーナがフェニックスの上で詠唱する。


その間、シンシアがクロスボウで狙いを定める。


ガイも魔物に対して詠唱する。


「満遍なくダメージを与えれば十分だ。


あとはアルミナがやってくれるからな。


奥まで進むぞ!」


魔物達の群れを通り抜けるフェニックス。


Tの字に配備された魔物達の最後尾に急激に近づく。


そこには魔族の姿。


「イワンじゃないな…


バハムート!ありがとな!」


魔族の元に飛び降りるヴェルナー。


それに続くスカー、ガイ、シンシア、ミーナ。


『Master spark!


Gods dislike Satan.


We agree with your ideal!


we starting atack,you give me your bleath!!』


聞き覚えの無い詠唱。


それはヴェルナーによるものだった。


「これは…高等魔法でもない…!?」


ガイは驚く。


「司令の職は魔物使い、魔導士、僧侶の三つを極めし職、召喚士だ。


それに加えて剣士、戦士すら極めている。


彼の上に出るものはいないだろうな。」


ヴェルナーの眼前に雷が現れる。


それをヴェルナーは手で掴み、魔族に投げつける。


「魔導士による雷の発生、召喚士による具現化、戦士による投擲。


非の打ち所が無いな。」


シンシアが感嘆する。


魔族はヴェルナーの攻撃を軽くいなす。


「私達も負けてられないよ!

『Sacred sphere crashes on me.


I get absolute force to win devils.』」


ミーナが自らに魔法を掛ける。


彼女の持っていた杖が変形する。


それは銃火器のような形状に見えた。


「ガイ!付加お願い!」


「おう!」


しかし、それまでに時間がかかった。


魔族が動き出す。


「我が地獄の火焔を喰らえ!!」


魔族は力を溜め、それを放とうとした。




『壱の太刀』


魔族の体に切り傷が出来る。


「!?」


『雪の様に静かに』


斬り下ろし


『月の様に美しく』


反転して弓なりに斬りつけ


『花の様に華麗に』


胴を払う。


魔族から飛び散る肉片と鮮血がまるで舞い散る花の様だった。


『東国風花流抜刀術奥義、乱れ雪月花。』


恐ろしくも美しい攻撃。


それを仕掛けた者、それは、


「お前は…」


「皆、待たせたな。


心配するな。もう大丈夫。」


侍、アルフレッド・ガルシア。


鏡のような輝きを持つ刀を携えて、彼は戻ってきた。


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