『憎しみと信念』
三人が入ったセントヴァールの喫茶店。
まあ港町クオリティと言ったところか、お洒落とは程遠い。
メニューはというと、何かと海の幸がブレンドされていて、ドリンクくらいしかまともなメニューはない。三人は各自適当にメニューをオーダーすると、早速話に入った。
(会話中、シレンはオーダーした”マグロプリン”なるものを食べ、気分を害したのは秘密)
俺の両親は、俺が6歳の頃に死にました。魔物に殺されたんです――――
◆◆◆
クラインは、子供の頃から両親に愛され、何不自由なく幸せに暮らした。
クラインの父は腕の立つ剣士で、町の人からも慕われていた。とても優しい人物で、いつもパーティメンバーの安全を最優先に考えた。その優しさは、敵対した魔物にも向けられた。彼は、自分の強さに怯え、立ちすくんでしまった魔物達はすべて逃がした。彼はよく言っていた。「魔物だって心はある。悪い奴だっていい奴だっているんだ。いつかは、魔物と共存できる日が来る」と。
クラインは父に憧れていた。父の言うことは全て受け入れた。父の教えで弓の練習を始めた。でも、いつかはこんなものも必要なくなる。そう、いつか、魔物とだって共存できるんだ。
しかし、事件は起きた。
ある日、クラインは父と、母と三人でピクニックに出かけた。
暖かな日差しの下、お弁当を食べ、楽しい時間を過ごした。
クラインの提案で、洞窟の探検をすることになった。
まだ未攻略だったその洞窟は危険を伴った。もちろん父は反対したが、クラインが泣きじゃくったので、父は仕方なく連れていくことにした。
まさか、あんな事になるとは――幼かった自分を、今でも責める。
洞窟に入ると、父の知人のパーティが魔物と戦っていた。魔物のレベルは大したことはなく、今にも全滅させる勢いで、パーティが優勢だった。
見かねた父は、「もういいだろう、こいつらに抵抗する気力はない」父はパーティのリーダーを説得すると、パーティを帰らせ、魔物を逃がした。
「あ、ありがとうごぜえます!」
助けてやった小柄の弓を持った魔物は父に礼を言った。
やっぱり父は正しい、話せばわかるんだ。そう確信した瞬間だった。
父が魔物達に背を向けニコリと笑いこちらに近づいてくる、その時だった。
――グサッ!!
何かが刺さる音がした。なんだろう?幼いクラインには全く理解ができなかった。
父の顔を見ると、さっきまで笑っていたはずなのに、なんだか苦しそう。
クラインの後ろで様子を見ていた母は、その状況を一瞬で悟った。
すぐにクラインをかばうように抱きかかえる母。
――グサッ
まただ、またあの音だ。
「クライン―――――生きて!」
母の最期の言葉だった。
クラインはわけもわからず泣きじゃくった。
その泣き声を聞いたパーティメンバーが駆け付け、クラインは救出された。
年を重ね、クラインはその真相を理解するようになる。
父が信じた魔物への思いは見事に裏切られた。
魔物との共存なんて、あり得ない。あの事件以降、それがクラインにとって確信となった。
幼かった自分を悔やんだ、魔物恨んだ、この上ない悲しみが胸をえぐった。
いつの日はその悲しみは変化した。
――――そう、憎しみに
◆◆◆
沈黙が続いた。
「あの日から誓ったんです。俺。両親を殺した魔物は許さない、1匹足りとて逃がさない。そして……」
「奴らに同じ苦しみを与えてやるんです。両親を射抜いた、弓で。そう、この弓で……!」