第一話 迎春
物音。差し込む日差し。
ふとんの中を何か動くものがある。
私にはもう慣れたものだ。
「わかったから、起きるから」
そう言いつつ私はふとんから這い出る。
めんどくさいなぁ…
そう思いながら愛犬の三郎と一緒に一階のリビングに降りる。
「おはよー」
「あらおはよう、寝坊助さん」
「んー 分かってる〜」
母との会話をなんとなしに終え、椅子に座って窓の外を眺める。
まばらに黄色や鮮やかな赤紫に染まった畑が覗いていた。
外はもう明るい。
「ねえ父さん 今何時?」
「分かってないじゃないか」
「うるさいなぁも〜」
「ほんとに..正午過ぎだぞ」
そっかぁ、そう流すことはできなかった。
「えぇー!?今日買い物行くつもりだったのにぃ!?」
母親の口から笑みが溢れる。
「妹を思い出すわね〜」
「その話はやめてくれよ母さん」
花奈が愛犬を避けつつ2階へ戻っていく。
既に父親である浩治の視線は本に戻っている。
その右腕には腕時計。
「懐かしいじゃない」
「僕の中じゃあんま良い思い出じゃないんだよぉ」
ため息も交えながら絞り出す。
花奈の母・芙美はキッチンに向き合いながらもただ呆けるだけでいた。
「ハルちゃんとの約束に遅れちゃうじゃ〜ん!」
今は12:34。
彼女の言う約束にはあと26分、加えて24時間ある。
今の彼女には知る由もない。
「あ〜〜スマホサイフ!え〜っとぉ、、、」
彼女に忘れ物はないだろう。ただ一つを除いて。
「いよっしゃ間に合あぁぇぁっと 行ってきまーす!!サブローも!!」
「いってらっしゃい」
「車に気をつけるのよぉ、、、もう行っちゃった」
三郎はこれから散歩だ。
「、、、あいつ家の鍵持ってたかな」
「大丈夫よ、きっと」
「そうだと良いけどな」
そう言って1人娘を持つ父は微笑んだ。
「母さん、花奈も出たことだし、サブローの散歩にでも行こう」
「ええ、着替えてくるわね」
そう言って母もまた別室へと消えた。
3月下旬、春のうらら。
雪解け水が菜の花の喉を潤す時────
こんにちは〜!初めましてですね。この話をお読み頂き、本当にありがとうございます。
さて、この物語は、作者本人の心象など交えながら季節の巡りを描いたものになります。似通ったテーマをもとに描いた、短編集。そのように捉えていただいて構いません。あるいは猫や浮遊霊の見た景色のように捉えても良いかもしれません。
短いですが最後に、私の描く世界は、あと3〜5年ほど季節をめぐるつもりでいます。もしかしたら前に描いた話の続きという形で書くことも、、、?などと夢想しております。
では、また次の季節にでもお会いしましょう!さようなら!




