閑話-夢二夜
そろそろ大晦日である。
せっかくなので、家で買い貯めしていた本を読んでいこうと、(一部埃をかぶっていたが)本を本棚から一冊取りだした。
「夏目漱石か、、、」
読み進めて行くうち、奇妙なことに気づく。
(部屋の間取りが変わっている、、、?)
一見すると何も変わっていないように見える。
だがそこには確かになにかが居座っている。
「そうか」
午前中日の光を取り入れていたはずの窓が、今この時は茜を中央に映している。
私は奇妙に思いながらこの本を読み進めていく。
本を読み進めていく。
次に瞬きすると、そこは夜であった。
何も無い、ただの日常の風景だと思った。
次に瞬きするとそこは昼間であった。
正面を見上げると、そこには運慶がいて、黙々と仁王を掘っていた。
頁も第六夜であった。
私より少し仁王に近い場所に、阿呆共が下馬表をしていた。
その下馬どもは「大きなもんだなぁ」と言っていたり「子供を拵えるよりよっぽど骨が折れるだろう」とも言っていた。
そうかもしれんと思っていると、
「へえ、仁王だね、そうかね」とか言ったものがいた。
「どうも強そうだな、何だってますぜ、昔から誰が強いって、仁王ほど強いものはほかにいないと聞きますからねえ。なんでも、大和岳の命よりも強いんだってんだからねえ」
と話しかけて来た男もある。
そいつは着物の尻を端折って帽子を被らずにいた。どうも、余程無教養な男と見える。
そのような下馬評には目も暮れず、運慶は鑿と槌を動かし、仁王の顔のあたりを一心に掘り抜いている。
その様子を眺めるうちに自分は、何故運慶は今時分まで生きているのかな、と思った。
どうも不思議なことがあるもんだと思いながらも、やはり私はたって運慶を見ていた。
そこで1人の男が振り向いて、
「さすが運慶だな、眼中に我々無しだ」
と話しかけて来た。
「天下の英雄は、ただ仁王と我あるのみという態度だ」
と言って褒め出した。
私はこの男を面白いと思った。
するとその男は
「あの鑿と槌の使い方を見たまえ。大自在の妙境に達している」
と言った。
私はあの鑿と槌の使いようを見て、
「よくああも無造作に鑿をつかって、思うようなまみえや鼻ができるものだなぁ」と半ば独り言のように呟く。
すると若い男は、何、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない、あのとおりの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すかのようなものだから、決して間違うはずはない、と言った。
その通りなら私も彫れるに違いない。そう思い出した。
どうも不思議なことに、次の瞬きにの後には自分の家に着いていたので、私はすぐに鑿と槌を持って、薪にするため木挽きしていたものの中で一番大きいものを選んで、勢いよく彫り進めた。
次の瞬きの時には、手には鑿も槌も残っておらず、ただ一冊の褪せた本が残っていた。
辺りを見渡す。
蔓のようなものがすぐそばの筆立てに巻き付いている。
その生え様に私は昔の恋人を思い出す。
蔓を眺めている。
やがて蕾ができ、白いアサガオが咲いた。
私の体が驚いた様に揺れた。
私は気づく。
椅子の上に座っている。
この部屋も全て、元通り。
「ご飯ですよ」
妻の声が聞こえる。
私は本を机に置き、部屋を出た。
残った部屋には、ただ伽藍が居座っている。
引用:夏目漱石「夢十夜」
こいつ結局本を読みながら寝落ちしてただけっていうね笑。
どうも、ラマンです。
ついこの前、久しぶりに小説を読む時間ができ、1日を溶かしました。
チョウセンアサガオの花言葉は「夢の中」「愛嬌」などがあります。
さて、早くも1年目が終わりましたね。
では、また来年もよろしくお願いします。




