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四季  作者: Lamman
一年目

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10/10

閑話-夢二夜

そろそろ大晦日である。


せっかくなので、家で買い貯めしていた本を読んでいこうと、(一部埃をかぶっていたが)本を本棚から一冊取りだした。


「夏目漱石か、、、」


読み進めて行くうち、奇妙なことに気づく。

(部屋の間取りが変わっている、、、?)

一見すると何も変わっていないように見える。


だがそこには確かになにかが居座っている。


「そうか」


午前中日の光を取り入れていたはずの窓が、今この時は茜を中央に映している。


私は奇妙に思いながらこの本を読み進めていく。


本を読み進めていく。


次に瞬きすると、そこは夜であった。

何も無い、ただの日常の風景だと思った。


次に瞬きするとそこは昼間であった。


正面を見上げると、そこには運慶がいて、黙々と仁王を掘っていた。


(ページ)も第六夜であった。


私より少し仁王に近い場所に、阿呆共が下馬表をしていた。


その下馬どもは「大きなもんだなぁ」と言っていたり「子供を拵えるよりよっぽど骨が折れるだろう」とも言っていた。

そうかもしれんと思っていると、

「へえ、仁王だね、そうかね」とか言ったものがいた。

「どうも強そうだな、何だってますぜ、昔から誰が強いって、仁王ほど強いものはほかにいないと聞きますからねえ。なんでも、大和岳の命よりも強いんだってんだからねえ」

と話しかけて来た男もある。

そいつは着物の尻を端折って帽子を被らずにいた。どうも、余程無教養な男と見える。

そのような下馬評には目も暮れず、運慶は(のみ)と槌を動かし、仁王の顔のあたりを一心に掘り抜いている。

その様子を眺めるうちに自分は、何故(なにゆえ)運慶は今時分まで生きているのかな、と思った。

どうも不思議なことがあるもんだと思いながらも、やはり私はたって運慶を見ていた。

そこで1人の男が振り向いて、

「さすが運慶だな、眼中に我々無しだ」

と話しかけて来た。

「天下の英雄は、ただ仁王と我あるのみという態度だ」

と言って褒め出した。

私はこの男を面白いと思った。

するとその男は

「あの鑿と槌の使い方を見たまえ。大自在の妙境に達している」

と言った。

私はあの鑿と槌の使いようを見て、

「よくああも無造作に鑿をつかって、思うようなまみえや鼻ができるものだなぁ」と半ば独り言のように呟く。

すると若い男は、何、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない、あのとおりの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すかのようなものだから、決して間違うはずはない、と言った。

その通りなら私も彫れるに違いない。そう思い出した。

どうも不思議なことに、次の瞬きにの後には自分の家に着いていたので、私はすぐに鑿と槌を持って、(たきぎ)にするため木挽きしていたものの中で一番大きいものを選んで、勢いよく彫り進めた。


次の瞬きの時には、手には鑿も槌も残っておらず、ただ一冊の褪せた本が残っていた。


辺りを見渡す。

(つる)のようなものがすぐそばの筆立てに巻き付いている。

その生え様に私は昔の恋人を思い出す。


蔓を眺めている。


やがて蕾ができ、白いアサガオが咲いた。


私の体が驚いた様に揺れた。


私は気づく。

椅子の上に座っている。

この部屋も全て、元通り。


「ご飯ですよ」


妻の声が聞こえる。

私は本を机に置き、部屋を出た。


残った部屋には、ただ伽藍が居座っている。











引用:夏目漱石「夢十夜」

こいつ結局本を読みながら寝落ちしてただけっていうね笑。

どうも、ラマンです。

ついこの前、久しぶりに小説を読む時間ができ、1日を溶かしました。


チョウセンアサガオの花言葉は「夢の中」「愛嬌」などがあります。


さて、早くも1年目が終わりましたね。

では、また来年もよろしくお願いします。


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