洗脳されていた可能性
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暫くアーリアと模擬戦をして遊んでいると、次の仕事が舞い込んできた。次はどんなところに投入されるんだろうな。苦戦をしたい。戦場で苦戦がしたい。無双ゲーの修羅のように。こっちのHPがどんどんと減るような事態になって欲しい。まあ、無理ではあるとは思うけど。そんな事態になるようでは、こっちの国が負けるって。頭の中ではそう思っているんだけど、体は欲している。ダメージを与えられる感覚を知りたい。HPが減る感覚を知りたい。無理だとは思っているが、そう言う事も経験しておきたいとは思うんだよ。
「さて、諸君には朗報が2つある。1つ目は諸君らの死地が決定したことだ。今回の死地はここだ。こから歩いて4日の所にある戦場だ。そこで諸君らの力を借りたい。勇敢なる諸君らの事だ。必ずしも今回の作戦を成功に導いてくれることを信じている。2つ目の朗報は、今回は攻めるための準備を整えてくれという依頼だ。つまりは勝ち戦になる。と言う事は、諸君らが生き残る可能性も高い。押し込むだけで、後は別の軍が押し切ってくれるからな。その切っ掛けを作るのが諸君らの仕事だ。簡単だろう? 勝つためのアシストをするだけでいい。今回の作戦は以上だ。それでは向かってくれ」
今回は勝利する事が目的の戦争だ。と言う事は、長引くと言う事でもある。生き残れる奴らもそれなりに居るとは思うな。まあ、相手の拠点を落としたら帰ってきても良い訳だ。それなら簡単だろうとは思う。俺たちの仕事は、勝利をアシストする事。だから、勝ったら戻ってきてもいいはずだ。そのまま居続けろとは言われていない。だから、勝ったら帰ってきても良いんだ。勝てれば、だけどな。
そんな訳で、移動である。今回は一緒に動くことにした。……先走っても無駄だと言う事が解ったからな。ならば、ゆっくりと戦場に向かった方が有意義だと思う。というか、なんでこんなに周りの士気は高いんだろうか。生き残れるからか? いや、それでも死地には変わりないんだが。自分は生き残れるから問題ないとでも思っているんだろうか。それだったら認識が甘すぎる。積極的に捨て駒扱いされているって思わないのかね? なんだかんだと吹き込まれたのかな? まあ、どうでもいいけどな。周りの人間が何人死のうが関係ない。俺は、俺たちは出来ることをやるだけだ。
「皆、楽しそうだねベル君」
「そうだな。誰も自分が死ぬなんて思っていないんだろうな」
「そっかー。でも私も死ぬとは思ってないよ?」
「アーリアが死ぬわけないだろ。そうしたら俺だって死ぬ可能性があるんだからさ」
「そうなるよねー。でも、不思議な感覚だよね。なんでこんなに皆笑顔なんだろうって。何かあるのかな?」
「さあな。……いや、そうでもないのか?」
「どうかしたの?」
「いやな? 俺たちは青色しか知らないけど、別の色もある訳だろ?」
「多分あるよね。赤もあるんだし、他にもあるんじゃないかな」
「それが懸念点なんだよな。……もしかして、俺たちって操られているんじゃないなってな」
「……そうなの?」
「ああ、俺とアーリアに関しては、MNDが高すぎて効いていないだけで、他の奴らは効いてるんじゃないかってな。なんとなくだけど」
「でもそれって、私たちに何か関係あるの?」
「いや、何もないが」
「じゃあ良いんじゃないの?」
「……考えるだけ無駄か。どうせ解らないんだから」
「そうそう。考えるだけ無駄なんだって。もしかしたら、私たちにも効いてるかもしれないしね」
「効いてたとしても、考えるだけ無駄か。……もしかしたら、本当に効いているのかもな」
「でしょ? MNDが高い人なんて他にも居るんだろうし、効いてるんじゃないかなって思うんだよね。だって、私も怖くないもん」
確かに。戦場が怖くないって思ってしまっている。それは確かにそうだ。危険なはずなのに、戦場は楽しい場所だって思っている。それはゲームの感覚で遊んでいるからって考えていたんだけど、精神的に操られているのであれば、なんとなくだけど、説明は出来るな。多分だけど、操られているんだろう。万能では無いのかもしれないが。万能だったらもっと別の方法を取ってきてもおかしくないからな。洗脳的な魔法を使えるのであれば、もっと別の方法を取るだろうとは思う。それをしない辺り、洗脳の効果が万能じゃないって事なんだとは思う。……まあ、職業での事なのか、青色の特徴なのかは知らないが。その時点で戦場の恐怖を取り除かれていたら、あり得ないとは言えないだろう。
あの時点であれば、MNDも低いし、戦場への恐怖は消せるのかもしれない。そうやって色んな場所で洗脳をしているのかもな。こうやって戦場に向かわせるのに、都合のいい駒として扱うために。洗脳が切れても、兵士として使えないようになるだけだからな。どうやって解除して良いのかって解らないけど。俺も操られていた側なのかもな。戦場が怖くなくなるように。職業を与えられた時からずっと。それでも、良いんだけどな。無意味に戦場を怖がる必要がなくなったんだから。
恐怖で動けないって事になったら困るのも確かなんだよ。怖いから動けないって状況になるのはよろしくない。その方が死ぬ可能性を上げるだけなんだ。死なないとは思う。だが、死ぬ可能性はある訳で。それを0には出来ない以上、精神洗脳を行われていた方が自然にそう言う事だって受け入れられる可能性はある。
まあ、黙って貴族に従えって事じゃないだけマシだとは思うけどな。洗脳は一生効果があるのかもしれないけど、だからどうしたって感じでしかない。戦場に居なければならないのは、5年だけなんだからな。それに、狩場に恐怖するようになっても困るし。ある程度は恐怖を感じないようにされている方がマシなのかもしれないか。その方が、色んな事に対してメリットがあるとは思う。まあ、時間によって、洗脳は段々と弱まっていくんだろうとは思うけど、それが何時になることやらだ。何時恐怖を感じるようになるんだろうな。恐怖を感じるようになれば、どう変わるのかが解らないけど。
「段々と怖い顔になってきているよ? 仕方がないじゃん。そうされているんだからさ」
「まあ、諦めないといけないとは思うぞ? もうそういう洗脳がされているんだろうし。解ったところで、解除できないんじゃあどうしようもないからな。今は感情に任せて、戦場を楽しむしかないか。出来ることってそのくらいしか無いからな」
「そうだよ? 何かされていても、こっちが何も出来ないんだから仕方がないよ。だったら、今を楽しむしかないんだよ?」
それもそうか。どうせなら楽しい方が良い。戦場なんて忌避するのが普通なんだ。それをなんだかんだと受け入れているのも、その精神洗脳魔法のお陰なのかもしれない。別の意味があるのかもしれないが、俺にとっては都合がいい。その都合で振り回されてしまえばいいか。それで何かが変わる訳でもないんだし。新しく洗脳をされることは無いんだろうしな。それくらいにはMNDが育っている。多分だが、大丈夫だと思う。……精神誘導は受けた感じはしないんだよな。なんでかって言われたら、俺たちが強くなったことの証明で良いだろう? そうじゃなければ、俺たちもINT極振りをしていたのかもしれない。そこまでは洗脳されていないはずだ。全く、裏で色々とやっているみたいで嫌になってくるな。そんな事までやっているのかって気分になってくる。初めから洗脳ありきで動いているのかってな。その方が効率は良いのかもしれないけどさ。




