おれが作ったから
ほら、あれ見える? そう、窓の外。え? 虫じゃないよ、その奥だってば。見えるでしょ? ほら、あれだよ、あれ。え、よく見えない? まあ、さすがに遠いよね。じゃあ、これ使ってみてよ。どう? ほおー……痛っ! 違うって! 胸を見たかったわけじゃないってば! それで、見えたでしょ? うん、あれ、まあまあ綺麗でしょ。昔はもっと綺麗だったんだけどねえ。
それでさ、あれ作ったのって実は……おれなんだよね。
え? 嘘じゃないって! いや、本当だよ、おれよ、おれ。まあ、そりゃあ確かに大工事だったから、おれ一人で全部やったわけじゃないよ。でも、おれが指揮を取ったんだよ。そうそう、監督ね。
いや、だから本当だって! ほら、まだおれそんなに酔ってないでしょ? はははは! ほら、君も飲んで飲んで、それで、このあとさ……え? さっきの話? ああ、もちろん本当だよ。え? 証拠? うーん、映像とかあったかな……まあ、昔の話だからなあ……いや、でも本当におれなんだって! 証拠ねえ……うーん、あ! 実はさ……あれの壊し方、知ってるんだよね。うん、一箇所、出っ張りがあってさ、そこをね、こんなふうに突くと……痛いっ! 触ってないじゃん! たとえばの話だって! と、とにかく、そこを突くと、一瞬で崩れちゃうんだよ。もうバラバラにね。
実はこの前、あれを近くに見に行ったんだよ。そしたら、もう結構老朽化しててさ、汚れてるし、壊しても誰も気にしないかなーって思ってさあ。だから、それが証拠ってことで、どう? よかったら、今から一緒に行って壊れる瞬間を間近で見てみない?
……え? どうしたのお兄さん、え、出禁? いやいや、だから触ってないですってば! ねえ、触ってないよね!? わかった、わかったってば! 掴むなよ! もう! だけど、話は本当だからね! ああ、これからぶっ壊し行くから、信じてくれよ。だから、付き合って――
『速報です。突如、上空に現れた巨大な円盤は、現在オーストラリアに移動し、エアーズロックの真上に位置して――』