アスタロト、アベトの実力を見る
朝になった。アスタロトは食事をする。食事自体は神である我々には必要は無いが娯楽として食している。
今日の食事はクリームパンとドラゴンジュースだ。
ドラゴンジュースとはドラゴンの死体の血を甘味類に混ぜたものだ。アスタロト自身はそれなりに好んでいる。
以前、ミクスに見られた時は軽蔑な目で見られたが気にする事はない。
食事が終わると家を出る。
村はかなり広く、家だけで20軒ほどある。畑もあり、朝から労働に勤しむものも居る。
そしてアベトを見つけたので声を掛ける。
「おい、アベト。」
「なんだよアスタロトさん。」
「お前の力が見たい。ちょうど近くに混沌たまりが出来ているようだ。付いてこい。」
「ちょっ…!待てって。村はどうすんだよ。」
「そんなもの、俺が結界を張っておこう。」
アスタロトが指パッチンをすると村を覆うように透明な結界が張られる。
「す、すげぇ…。」
「これは神格によってできるできないが分かれるからな。しょうがない事だ。」
「た、確かにな…。」
「さて、行こうか。」
2人は移動する。アベトは走る。
アスタロトについて行こうと必死だ。
涼しい顔をして混沌たまりへと向かうアスタロトはとても早い。無駄を削ぎ落としたかのような動きだ。まだ若いアベトにとっては憧れそのものだ。
(アスタロト様は恐らく時空間を操る神様だ。それらを使用しないという事は…。)
するとアベトの考えることを見抜いているかのようにアスタロトが言う。
「できるだけ楽をしたいだけだ。」
「な、なるほど…。」
2人は混沌たまりへとついた。
「ハデスの時より大きいな…。ここ最近、混沌の繁殖範囲が拡がっているな…。よし、アベト。お前の力を見せてみろ。」
「はっ!」
アベトは神力を込める。己の神格に力を込める。すると、アベトの肉体はどんどんと筋肉がモリモリになっていく。そこから繰り出されるパンチ。
(中級神とは思えん…。さすがは武闘派の神格持ちか。)
混沌たまりのうち2割が消え去った。だが消え去った傍からどんどんと広がっていく。
「おおよその力は把握した。あとは任せておけ。」
混沌たまりの全体を囲うように神力を込め空間を生成しそれらを消去する。
一瞬にして混沌たまりが消え去った。
「す、すげぇ…。」
そんな感想も聞こえたが、それよりも考えている事があった。
(混沌たまりが益々大きくなっていくな…そろそろアイツに言っておかねばな。)
アスタロトは念話を使用し、とある神へと繋げる。
(おい、ウィシュマ。今話せるか?)
数秒ののち、女の声が聞こえてきた。
(はーい、聞こえてますよー。)
(そろそろ警戒レベルを2から3に上げておけ。そろそろ邪人が出てくる可能性がある。)
(わかりましたー。アスタロト様ー、それはそうとー、神学の入学式のお言葉の担当が決まられたそうですー。)
(それに俺は関係ないだろう。俺はダラダラ過ごしたいのだが…。)
(いえー、それがー担当がアスタロト様に決まられたようでしてー。)
(それは断れないのか?)
(基本的に毎年お言葉を言われておりましてー、今まで4人でこなされてきたそうですー。)
(そんな頻度でやっていたのか…普通に知らなかったぞ…。)
(ですからー、1度神学にー来てはいただけませんかー?)
(とりあえず、こちらの…。)
そう言おうとした時、突如として
アスタロトの後方から先程とは比べられないほどの量の混沌たまりが吹き出したのだ。
(まずい!警戒レベルを最大限に引き上げろ!武装体制を整えて神界最西部に集結するように手配しろ!奴らが湧いてくる!)
(か、かしこまりましたー!)
その後、神界、冥界全土に警戒レベルを最大にする通知が送られた。危険区域は神界最西部であると。