決意!
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
<悪いんだけど、その日は遅番の日だから終わりが
20時過ぎになっちゃうの、あの喫茶店で待ってて
くれる?>
由貴の返事の内容は以下のようなものだった、浜崎
は問題ない、との旨を返事し今に至る
時刻は19時50分、もうすぐ仕事を終えて由貴が現れ
るだろう
結論から言うと卒業検定は合格!いともアッサリと
卒業する事が出来た…
もちろん感動した、自身の番号が表示された時は思
わずガッツポーズを取ってしまったほどだ
だが、今の浜崎にとってはこの事よりも心を大きく
占める物があった
由貴にはお礼がしたい、と言ったが、実はその事に
ついて尋ねたいのが大半の理由で誘ったのだ…
ドドドドドドドドド
カランカラ~ン♪
聞きなれた排気音に続き、聞きなれた鐘の音
<アイスを~>
背中から由貴の声が聞こえ、気づくとドサリと対
面に由貴が腰掛けていた
<お待たせ~、ゴメンね遅くなっちゃって>
〘いえ、全然問題ないです…〙
<卒業おめでとう!これで2種免許でも取らない
限り自動車学校に用はないね(笑)>
〘ハハハ、そうですね〙
乾いた笑い、どうしても元気が出ない、自分から
誘っておいてこんなんじゃダメだ!
<なんかあんまり嬉しそうじゃないね?>
〘い、いえ、嬉しいのは間違いないんです、けど
…〙
<なぁに?アタシに会えなくなるのが悲しいの
(笑)>
〘イヤ、そんな事はないんですが…〙
由貴の表情が曇る、即座に否定されたのが少しシ
ャクに障ったのかもしれない…
〘あぁ、もちろん寂しくはあるんですがね…〙
<へいへい、フォローありがとね…>
〘それで何が食べたいですかね?何処でも良いで
すよ?〙
<マスター!!>
浜崎がそう言うのも無視して由貴はマスターを呼
ぶ
(ホイよ!何にする?)
<アタシはミックスフライの定食、ハマちゃんは
?>
〘え?え?〙
<何処でも良いんでしょ?ホラ>
〘え、と、じゃあカレー焼きそばのセットとサラ
ダを別で…〙
(ハイよ~!ちょっと待っててね)
少しすると由貴のアイスコーヒーが運ばれてくる
由貴はガムシロップを垂らしながら
〘で~?何に悩んでんのよ?〙
不意を突かれて浜崎は少し咳き込んだ…
おしぼりで口元を拭いながら
〘な、何で?、、、〙
<分かるわよ~この世の終わりみたいな顔して
〘お礼させてください〙なんてさ、みえみえだっ
ての!>
由貴には全てお見通しのようだ…
初めてのお見合いのように黙り込んでしまう浜崎
と、そこへ…
(ホイ!ミックスフライとカレー焼きそばの定食
ね~)
とマスターが注文品を運んでくる
(ごゆっくり~)
そう言ってマスターが去ってゆくと由貴が
<せっかくのご飯なんだから美味しく食べましょ
う、話はその後>
そう言って促す、浜崎も言われるがままに箸を進
めるのであった…
食事を終えると
〘良かったんですか?由貴さん〙
<ん~?どうせ焼肉とかお寿司とか奢ってくれち
ゃうつもりだったんでしょ?そんなもんもっと
ふさわしい娘に奢ってあげなさいよいるでしょ
?もっと喜んでくれる娘が…>
なんでもお見通しなんだな…
〘実は…〙
浜崎が口を開きかけたその時
<マスター、ゴメンね、長くなっても良い?>
そう言う由貴の言葉で時計を確認すると20時55分
もう店内に他のお客の姿は無い…
(いいさ、ひょっとして別れ話かい(笑))
そう茶化すマスターだが、由貴は意にも介さず
<逆よ逆!アタシじゃないけどね>
本当に敵わない…何もかもお見通しのようだ…
(待ってな、今飲み物持ってくから…)
そう言ってアイスコーヒーを由貴と浜崎の前に新
しく出すと、2人のテーブルの脇のカウンター席に
ドッカと陣取り話を聞く気満点のようだ
参ったな…
と思いつつも、埒が明かないと判断した浜崎は重
い口を開き始めた
由貴は知っているであろう晴子との最初の食事、
由貴を交えてのここでの食事、入校に際しての買
い物デートから、何度も食事を共にし、デートと
銘打っての最初のデートや晴子からのお礼での飲
み会までを克明に、詳細な情報を添えて…
話を聞き終えてマスターはやれやれ、と言った体
でため息まじりに両目を覆うと
(で、そのハルちゃんの事はどう思ってるんだ?)
核心の中の核心をいきなり突いてきた
自身でもボヤかした表現ばかりしてきた浜崎だっ
たが、この話の本質はこの部分を避けては通れな
い事は分かっていた
<そうだよ!ハマちゃんはどう思ってるのよ?>
ストレートに自分の気持ちを聞かれ、たじろぐ気
持ち半分、迷う気持ち半分の浜崎…
ようやく口を開くと一言
〘ハルちゃんの事はもちろん好きですよ、あんな
いい娘いないです、でも…〙
<じゃあ何も問題ないじゃない、何に悩んでるの
よ??>
サッパリ分からない、といった体の由貴、だが浜
崎にとっては大いに問題があった
〘だって、僕、エミさんの事が好きだったんです
よ!ハルちゃんだってその事は知ってる!〙
この言葉を聞いて顔を見合わせる由貴とマスター
相変わらずやれやれ、といった表情のマスターに
少し呆れ気味の由貴は静かに口を開いた
<そんなのがハマちゃんの悩んでた事なの?>
〘そんなの、って、、これでも真剣にっ…〙
言いかけた浜崎を手で制してマスターが口を挟ん
だ
(ハマちゃん、で良いか?)
この言葉にコクリと浜崎が頷くと後を続ける
(いいかハマちゃん、オレにだって小学生の頃好
きだった女子がいる、例えば由貴ちゃんがオレ
の奥さんだったとしてそれを聞いたらどうだい
?)
<まぁ良い気分ではないけど、それだけ、かな>
(だ、そうだ…)
〘え???〙
(つまりな、昔どうであれ今はハルちゃんが好き
なんだろ?)
〘ハイ!〙
(誰より一番か?)
〘ハイ!!〙
<あらあら、だったらそれで良いじゃない>
(そうそう、その程度の事だよ…)
〘でも、僕の場合はっ!!〙
<アタシならそうやって拘ってるのが逆にイヤか
な>
(そういう訳だ、もう気持ちが残ってる訳じゃな
いんだろ?)
〘ハイ…〙
返事をしたものの絶対の自信は無かった、エミに
気持ちが残っていないと言い切れるだろうか?
(んなもんスパッと忘れられるようなら好きでも
何でもないよな!)
<わ~マスターカッコ良い!(笑)>
(ハハッ。由貴ちゃんには初めて言われたな)
自分は考えすぎなのだろうか? でも…ハルちゃ
んと仲良くなったキッカケは僕が失恋した事で…
落ち込んで、励まされて、食事に行くようになっ
て、相談して、デートもして…次第に……
黙り込む浜崎…と、、、
<ハマちゃん…>
〘はい…〙
<ハルちゃんとはもう二桁回数近くデートして
るんでしょ?>
〘はい、最初は成り行きで、僕から相談だった
り、と…〙
<ハルちゃんはどうだった?>
〘楽しそうでした…とっても〙
そうだろうね、と由貴は思った、晴子の気持ち
は明らかだ、だが自分の口からそれを言うべき
ではないのも分かっていた
<一つだけ言っとくけど、ハルちゃんはアタシ
にとっても大事な友達なの、だから半端な真
似はしないでね…>
浜崎は自分で気づかなければならない、どうす
るべきか、今後晴子と自分がどうなって行きた
いのかを…
そして、その為には何が必要なのかを!
<アタシから言えるのはこれだけ、後はハマち
ゃんがどうしたいか、だね!>
(そうそう、要らない事気にし過ぎなきゃ答え
は出るだろ)
黙り込む浜崎、色々思う所があるのだろう、こ
れ以上こんな出先で考え込んでも良い考えはま
とまらないだろう…
<さぁ今日はここまで!マスター、つき合わせ
ちゃってゴメンね…>
ハッと我に返ると浜崎も頭を下げる
〘本当にすみません僕なんかの為に…〙
(大事な事だろうよ!むしろよくぞウチで相談
してくれたぜ)
会計を済ますとマスターに挨拶をして扉をくぐる
カランカラ~ン♪
同じ音色でもどこか物寂しく響く退店の鐘…
由貴に手を振り立ち去ろうとすると
<ハマちゃん!>
由貴が大きな声で浜崎を呼び止める
振り返ると満面の笑みを浮かべた由貴が
<卒業おめでとう!あと、、、、>
しばし溜めた後、拳を突き上げて叫ぶ
<頑張れ!ハマちゃんっ!!>
懸命に浜崎を応援するその姿に、思わず見とれる
も、傍と我に返ると浜崎は
両手を体側にキレイに揃えて気を付けの姿勢で深
々とお辞儀をし、たった一言
〘ありがとうございますっ!〙
それを見届けると、すぐさまエンジンをかけ轟音
を轟かせながら走り去ってゆく
由貴のハーレーのエンジン音が聞こえなくなった頃
浜崎もまたハイラックスに乗り込んだ
駐車場からの物音が聞こえなくなった頃、マスター
は
(また常連さんが増えるかねぇ…)
と独り言ちた…
結局あの後、自然に眠りに落ちるまで浜崎は考え込
んでいた
”自分がどうしたいのか?”
由貴に言われたこの言葉をずっと噛みしめていた…
答えはとっくに出ていた…
”ハッキリさせたい!”
今の曖昧な晴子との関係、友達である事は間違いな
い、でもそれだけじゃ居られない、もう気持ちがそ
の曖昧な関係を拒んでいるのだ…
想いを告げる、、、要は告白だ!
今すぐにでも…そんな気さえしてくる、だが思いと
どまった、何でもない時に呼び出して ”あなたが
好きです” と告白する事は出来る、でも女子にと
っては一大事であろう異性からの告白…たとえ自分
の様な者からだとしても、そんなぞんざいな方法で
は誠意も本当の気持ちも伝わらないだろう…
考えろ!考えろ!!
どうせなら最高のシチュエーションで…
そうだ!!
すぐさまPCを立ち上げる、と、それを待つのももど
かしく由貴に電話をかける
<もしもし、ハマちゃん?どうしたの>
〘あ、もしもし由貴さん?実は!!〙
PCで検索をかけながら浜崎は懸命に自身の考えを由
貴に説明した
<ま~たアンタはもう、小難しい事考えてんのね>
と由貴になじられながらも、これだけは譲れない!
と、自身の考えを述べる
〘分かったわよ、うまくハルちゃん誘って聞き出し
てあげるから、ちょっと時間くれる?〙
〘お願いします!〙
電話を切った由貴はため息をつくと、晴子に電話を
かける
(全く、手間かけさせるわね!まぁいいわ!随分思
い切ったみたいだから手伝ったげる)
ほどなくして晴子が電話に出る
<もしもし、ハルちゃん?>
〈もしもし、お久しぶりです!どうしました?〉
<な~に、ハマちゃんも卒業しちゃってヒマになっ
たからミニツーリングでもどうかな?と思ってさ>
〈そう言えば合格したみたいですね!アタシにも連
絡ありました〉
”ちゃっかり報告しやがってあの野郎!”
そう思いながらも、晴子が誘いに乗ってきた事をホ
ッとしつつ、ノープランで誘ってしまった自分を呪
う…………さてどうしたものか、、、
すると晴子の方から話を持ちかけてきた
〈アタシ岡崎のケーキ屋さんで行ってみたい所があ
るの〉
正に渡りに船!由貴としても断る理由などなかった
<良いね!じゃあそこに行こうか>
〈エミちゃんとミキちゃんも誘ってみる?〉
<せっかくだしそうしようか!>
由貴の返事を聞くや否や、すぐに晴子が連絡を取り
出す、こちらとしても人数が多い方が自然に話を切
り出しやすい…
由貴の頭の中でミッションインポッシブルのテーマ
が流れ始めていた…。
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




