アンニュイな日常
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
『晴子さんのお弁当美味しそう~!』
そう言うミキの弁当は、またも趣向を凝らした物で
、今日はオムそばだった
「そう言うミキちゃんのオムそば美味しそうだね!」
と言うエミの弁当はヘルシーな野菜たっぷりのハン
バーガーだった
〈なんか可愛いねそのバーガー!?〉
「小さいバンズ売ってたからミニバーガーを二つな
の」
〖やぁ!今日もみんな美味しそうだね!!〗
〘ホントだ!?ってミキちゃんオムそばなの?〙
「ミキちゃんのお弁当っていつもアイデア満載だよ
ね」
『エヘヘ♪アイデアで勝負しないと味ではお二方に
及ばないから…』
〖そんな事もないだろうに、毎日作ってるんだから
腕前も上がってるんじゃない?〗
天ぷらそばに七味をかけながら伸一が言う
〘そうだよ、ミキちゃんのは決して手抜きじゃない
ように見えるよ〙
『2人とも優しいですね…じゃあ今日のお弁当で誰の
が一番美味しそうですか?』
この質問にクルリと全部のお弁当を見まわした伸一
は
〖晴子さんのかなぁ…〗
と即答した、これに浜崎も
〘僕もハルちゃんのかなぁ、ガッツリ系で美味しそ
うだから男子はそこ行くんじゃないかな?〙
「ハンバーガーは人気ないのかな?」
〖そうじゃなくて、、、まず小さいのと、野菜タッ
プリすぎて…男子には物足りないって感じ、かな
…〗
「これがテリヤキバーガーで普通サイズだったらど
うなの?」
〖そうなるとエミちゃんのになるかな…〗
〘それだと僕もそっちかも…〙
男子と言う奴は、全く…
『ちなみにアタシも晴子さんのが良いです…』
「あ、アタシもハルちゃんのが良いかも…」
思いのほか晴子の弁当は人気のようだ?確かに自分
でもこれは美味しそうに見えた…
〈そうそう、コレ食べてみてよ!〉
そう言って晴子は大根の一夜漬けを差し出す
「漬物??」
〈そう、一夜漬け、ゴマ油と塩昆布だけの簡単なや
つ!!〉
〖じゃあ遠慮なく…〗
そう言って伸一が箸を伸ばして口に入れた瞬間…
〖あ、コレめちゃうま!!〗
〘ホントだ!美味しいねコレ〙
男子勢は漏れなく口に含んだ後、白飯をがっついた
「あ、美味しい!良いねコレ」
『でも簡単なんですね?』
〈そうだよ、ゴマ油ちょっとと塩昆布入れて冷蔵庫
で一晩、、以上っ!〉
「これは流行るね!!」
『ですね!!』
エミとミキは2人して晴子を見やって親指を立てた!
こうして毎日、何やかやとお弁当をつついては意見
を交換する、一過性の物で長くはつづかないのかも
知れない、でも、欠けがえのない仲間と、今、こう
して食卓を囲んで共にする食事は、とても楽しく、
そして美味しいのであった…
晴子にとって、バイク、メイク、お弁当、洋菓子と
充実した毎日を送る中、浜崎という人物が、とても
良い潤滑剤のような存在となりつつある…
それは友達と言うには親しく、恋人と呼ぶには何処
か踏み込み切れず、といった曖昧な状況が作り出す
もどかしくも、何故かホッとする、そんな甘酸っぱ
い居心地の良さを感じていた
浜崎にとってもそれは同じで、昨夜の晴子の言葉が
実は浜崎の心を捉えて離さないのであった…
〈アタシは好きでもない男とご飯にも行かないし
、ましてやお酒なんて飲まない!〉
あれはどういう意味なのだろうか?
昨夜遅くまで考えてはみた………
普通に考えるのであれば、晴子が浜崎の事を好きで
、だからこそ酒の席にも付き合うのだ、という事…
だが、、、何が良くてこんな自分など……
少なからず好意を向けられているという自覚はある
もちろん、浜崎も晴子の事は、友達としても好きだ
し、異性としての晴子はとても魅力的だと思ってい
る…
でも、、、だからこそ、、、
浜崎の心の内に何とも言えない、やりきれない気持
ちが渦巻いていた…
「『〈おつかれさまでした~!〉』」
3人娘はいつものように、揃った職場の皆へと挨拶
を残して更衣室へと去ってゆく
〈今日佳澄さんの所寄って行くけど2人もどう?〉
『あ、行きたいです!』
「アタシも!特に何もないけど…(笑)」
〘おつかれさま!皆でこれから何処か行くの??〙
『そうです!これからお師匠さまの所へ(笑)』
〘お師匠様??〙
〈ホラ、前に話したイケおぢさんの奥さん〉
〘あぁ!スゴ腕メイクの!?〙
「そう!その人です、もうホントにすごくって」
3人の表情を見るに、心から尊敬しているのだろう、
〈ハマちゃんは今日も教習?〉
〘そうそう、あと残すところ2回だからね!〙
『いよいよですね!順調に行けば週末に卒検ですか
!?』
〘落とさなければね、多分問題ないとは思うけど〙
「頑張ってくださいね!」
〈うんうん!すぐだよすぐ!頑張って!〉
『卒業したら打ち上げしましょう!』
「いいね!やろうやろう伸ちゃんも部長も呼んで」
〈とにかくまずは、卒検合格、そして本免試験の合
格だね!〉
〘それじゃまた!おつかれさま〙
『「おつかれさまです」』
〈おつかれハマちゃん、頑張って!〉
小さくガッツポーズを作る晴子に合わせて、浜崎も
、腕を上げて拳を見せる
後ろ手をヒラヒラさせながら立ち去るその背中を、
何とも言えない表情の晴子が見守っていた
『洗顔の泡立てってどうやってるんですか~?』
〝ん~やってみた方が早いかもですね〟
そう言って前原はミキを伴って行ってしまった
〈ミキちゃん行っちゃったね、エミちゃんは何が見
たいの?〉
「アタシはアイシャドーとマスカラ!今はアイメイ
クに凝ってるの」
❝エミちゃんは元々ベースメイク上手だったから自
然と部分メイクに移行しちゃうよね❞
”ひとみちゃんお願いね” との佳澄の言葉に、磯山
がエミを伴ってアイメイクコーナーへと消えてゆく
2人の姿が見えなくなったのを確認した佳澄が、待
ってました、とばかりに晴子に詰め寄る
❝で?どうだったの?ちゃんとキレイだ!って言わ
せた?どんな反応だった?❞
あまりの佳澄の勢いに、一瞬後じさりするも、きっ
と自分を心配してくれている佳澄にちゃんと報告せ
ねば、との思いから、晴子は状況を詳しく語って聞
かせた
❝なんだ~そんな簡単に言わせちゃったのぉ~、確
かにバッチシ決まってたもんね!!❞
〈あ、あの、、ハマちゃんの場合は、そういうのじ
ゃ、、ないの、かも…〉
❝え??何か違うの??❞
〈何か、そう言う事を言うのに躊躇が無いと言うか
、何と言うか…〉
❝え~!?意外にも遊び人タイプなの?❞
〈い、いえ、それとはさらに真逆って言うか何と言
うか、、その、、強いて言うなら天然??〉
❝なんだか変わってるのね?❞
〈そうなんです!〉
なかなか伝わらなかったが、浜崎と言う人物を語っ
て聞かせるのは骨が折れる
❝いいじゃない!キレイだとは言ってくれたんでし
ょう?❞
〈ハイ!それは間違いなく〉
❝上々ね、それで今日は何が見たいの?見たとこ二
日酔いメイクもちゃんとしてるようだけど?❞
佳澄にはやはりお見通しのようだ、最もエミにも
見破られたのだ、佳澄の目なら一発だろう
〈今日は佳澄さんに報告がてらオールインワンを
補充に…〉
❝新しいの試してみる??❞
そう言うと晴子を伴って化粧下地のコーナーへと
向かう、様々な化粧水や美容液などが並ぶ中から
数点手に取ると、その特徴と使い勝手について詳
細に説明をしてくれる
正直、佳澄は晴子以上に晴子の肌に詳しいのでは
?と思えるほどだ、これまで佳澄の勧めでイマイ
チだと思った事など全くもって無かった
結局ミキは洗顔の泡立てを学び、洗顔料と小物を
数点、エミはアイシャドーにマスカラ、晴子はオ
ールインワンを、とみな満足のいく買い物を済ま
せた
❝〝⁅ありがとうございました~⁆〟❞
と揃った声の佳澄たちに見送られ、ホクホクと袋
を片手に愛車へと向かう
『これで明日の朝は泡まみれです~』
「逆さにしても手の平から落ちない感じ?(笑)」
『あれ、憧れです!』
〈多分コツを掴めばすぐだよ!〉
『さっきは出来たんで、今度こそは!』
「洗顔ネット買えば良いのに」
『自力で泡立てたいんです!』
こだわりが強いミキらしい一言に、皆が”分かる~”
と共感し、一時の沈黙が訪れる…
(今頃浜崎は教習の真っ最中だろうか…)
ふとした瞬間に浜崎に心が向く今の状況を自身で
客観的に見るに、どんどん心惹かれているのだろ
うか…
一方教習所では、浜崎が正に教習車の乗車前点検
を行っている最中だった
各箇所を指差して確認し、教習車に股がってミラ
ーを調整する
〘よし、っと!〙
バックミラーの調整も済み、あとは実走するのみ
となったその時、教官から話しかけられる
⦅浜崎さんは以前の3人娘さんたちと知り合いな
んだって?⦆
よく世話になる福田という教官だ
〘えぇ、伊藤さん、長坂さん、園田さんですよね
?〙
⦅そうそう、その3人、あれから元気かな?⦆
〘みんな元気ですよ、同じ部署ですけど仕事も頑
張ってます〙
⦅しばらく2輪教習の名物みたいで彼女らがいた
頃は活気があったよ⦆
〘ハハハ、会社でも同じです、バイクの免許を取
ってからますます元気ですよ〙
⦅それは良かった!楽しく過ごすのにバイクが一
役買ってくれてるならこんな嬉しい事はない⦆
〘僕も教習所で乗り出して、ますますバイクが好
きになりました〙
⦅じゃあ、今日も頑張りますか!もうひとぶんば
りだね⦆
〘ハイ!よろしくお願いします〙
そう言うと、促されるままエンジンをかける、も
う坂道発進も一本橋も、苦手に感じる事は何もな
い、コースを間違えさえしなければ卒検も問題な
いだろう、今週末には卒業だ!
由貴さんには色々お世話になっちゃったなぁ…
(そうだ!!)
浜崎の頭に一つの思い付きが浮かんだ…
教習を終え、原簿を返しに行く浜崎
⦅良いですね、全体的に見て特に言う事は無いで
す、卒業検定もこの調子なら問題なく合格出来
るでしょう⦆
教官のお墨付きはもらえた、後は当日問題なく検
定に臨み結果を出すだけだ!
原簿を返却すると由貴が
<おつかれハマちゃん!どうだった?>
〘えぇ、問題無いと言われました、大ポカさえし
なければ無事卒業出来そうです!〙
そう言う浜崎はさして嬉しくもなさそうな表情だ
<どしたの?なんか元気ないじゃん>
〘いえ、そんな事はないんですが、、、〙
しばしの沈黙の後、浜崎は切り出した
〘由貴さん、今週の土曜って出勤の週ですよね?〙
<そうだけど、どうしたの?>
〘卒検の後、付き合ってくれませんか?今までの
お礼がしたくって〙
由貴は少し考え込んだ後 ”いいよ” と軽く返事
を返した
浜崎も ”ありがとう” と小さく返事を返してそ
の場を後にした
由貴とは卒業したら2度と会わないかもしれない
その前にお礼をしておきたかった
律儀な浜崎の性格が、幸か不幸か後の展開を大き
く変えるのだった…。
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




