Let`sツーリング⑤
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
海岸線沿いの道をひたすらに走行する一行
この時期、最高のロケーションと言える
『サイッコーですね!!』
ミキが弾けるような笑顔で皆に同意を求める
「ホントだね〜♪」
〈このメンバーでロケーションが海!そりゃサイコ
ーだよね♪〉
<気ん持ち良いよね~海岸線走るのって!>
「ホ~ント!景色も風も最ッ高♪」
由貴からしてみれば、帰り道、山岳地帯での上り道
を想定して、最も非力な晴子のAPE100を一行の指標
にすべく先頭を任せた次第だったが、今となっては
その目的は、もうどうでも良いと言えよう
共に旅をする仲間があれだけ楽しそうな笑顔を見せ
ているのだ、ここは黙って任せておけばよい…
海辺を走る一行は、時折見え隠れする海面と、そこ
に点在する船影を横目に見つつも、順調に道なりを
進み、予定よりも10分以上早く目的地を視界にとら
えた
「有楽製菓チョコレート直売所」の看板を見つけ、
広がった入り口に皆で停まると
〈ここで間違いないよね?イナヅママークだし?〉
と晴子がらしくもなく不安げな表情を見せる
〖間違いないよ、とりあえず中行こうか〗
<そうだね、邪魔になっちゃうといけないし>
と、皆に促され、晴子を先頭に駐車場へと侵入する
無理もない、見た目が工場その物なのだ
(ホントにここなのか?)
と、晴子が疑ってしまうのもしょうがないと言うも
のだ、が、スロープを駆け上がり、駐車場へ出ると
そんな不安も解消した
賑わいを見せる入り口、見慣れたパッケージをオマ
ージュした看板に「チョコレート直売所」の文字、
そしてイナヅマ…
ここがブラックサンダーを扱っていなかったら、こ
の世に扱ってる店などないであろう
といった佇まいだ…
晴子を基準に、行儀よく排気量順にバイクを並べる
と、一行は入り口に降り立った
<アガるね~!やっぱブラックサンダーは>
「ホント!どれだけの種類があるのかな?」
『行きましょう、中へ!』
〈そうそう、見た方が早いよ〉
入口をくぐった一行の目に飛び込んできたのは…
うず高く積まれた各種ブラックサンダー!抹茶、ホ
ワイト、Wベリー、見慣れないご当地サンダーも散
見される
『あ、これ買おう!トースト用』
ミキがそう言って飛びついたのは「トースト専用」
と銘打たれたブラックサンダーで、食パンに乗せて
トースターで焼くと、チョコが溶けだしてチョコト
ーストが出来上がる、と言う、なんともジャンキー
な逸品だ
〖白いブラックサンダーって…どうなんだろね?〗
「美味しそうではあるけど、ブラック?ではないよ
ね…??」
などと伸一とやり取りしてる間も、女性陣は忙しな
く見て歩いている
『小売りがないですね、、こうなったらさっきと同
じ作戦でいきましょう!』
ミキの言葉に一同が同意する、さっきの作戦とはブ
ランジェの時と同じ、各々が好みの物をチョイスし
、購入した後にお互いの物をトレードし合う、とい
う意味だ
<良いね!自分の好みを吟味してそれぞれ持ち合う
訳ね>
〈気合い入るね!選んで来る〉
晴子はそう言ってすぐに踵を返して売り場に向かう
意外にも随分やる気のようだ
エミは元々これだ!と言う物が2つに絞られていた
後はどちらに決めるか、というだけだった
〖エミちゃんは何にするか決まってるの?〗
伸一に問われ
「京都サンダーかふわさくきなこで悩んでるのよね」
正直に気持ちを明かすと
〖グリーンとブラウン…〗
ボソリともらした伸一の独り言がなんだか可笑しかっ
た
〖じゃあオレどっちかに決めるから片方選んでよ〗
その伸一の申し出に甘えて、エミは ”ふわさくき
なこ”に決める事にした
会計前にレジ横で集合すると、エミが ”ふわさくき
なこ”、伸一が ”京都ブラックサンダー”、晴子は
”大阪ブラックサンダー”で、ミキが ”豊橋ブラック
サンダー” 由貴は ”沖縄ブラックサンダー” と決
まった
〖う~ん、カブりなし!良いね♪〗
そう言う伸一だったが、自身の好みとかは良かったの
だろうか?せっかく来たのに、、、エミは小声で
「良かったの伸ちゃん?アタシの好みで…」
と聞いてみたのだが
〖あ~いいよいいよ、何ならプレーンだって問題ない
!ブラックサンダーは無条件で好きだから(笑)〗
と、至って明るく返された、別に取り繕ってる様子も
無理をしてる様子もない所から、心からの言葉だと思
う事にした
会計を済ませ、店の前の顔ハメパネルで、各々が撮影
を済ませた後、かしこまった調子で由貴が言った
<ハルちゃん…帰り道は本宮山って言う峠道を通る予
定なんだけどね…>
その改まった様子に少し押されながらも
〈う、うん、、何?〉
<上り坂が激しくて急、おまけに峠道なのよ、結構ヘ
アピンが続く感じの…>
〈結構険しい道行くんだね、頑張る!!〉
<うん、だから先頭任せて良いかな?ペースを作って
欲しいの>
晴子は少し悩んだ後、ボソリと…
〈アタシが先頭だと遅いかもよ…〉
最もな心配だったが、これには由貴が
<走り屋じゃあるまいし、あんなとこ誰だって遅いわ
よ(笑)そんなの気にしなくて良いからAPEで走り
やすいペースで走ってくれればそれで良いの>
〈そ、それで良いなら…〉
〖多分心配いらないけどね、あそこは他の車もゆっく
りだからよっぽど大丈夫だよ…〗
<変なのいたら川本さんに任せるね>
〖了解、アオってくるような奴が居たら追い越して適
当な所で停まって譲るように合図するよ〗
当面の作戦を立て終え、GOOGLEMAPの設定も完了し
出発の準備は万全となった
少し緊張気味の晴子に、由貴は
<バイクなんて困ったら道の脇にすぐ停まれるんだか
ら、道の間違いなんて心配しなくても良いよ、それ
より変に気を使って無理にペースを上げたりしない
で、自分のペースで走ってくれれば良いからね>
<アタシすぐ後ろについてるから、何かあったらすぐ
言ってね>
由貴がそう言うとコクリと頷いた晴子が
〈じゃ、じゃあ出発するね…〉
と、晴子はAPEを発進させた、ソロリとした出足だっ
たが、公道に出るとスムーズに加速してすぐに流れを
掴む
〈なんか、あ~んまり考えすぎない方が良いみたいだ
ね…〉
途中、信号停止した際に由貴にそう告げると、そこか
らはスムーズにペースを作り出す
信号で後続が途切れた際には、冷静に道路脇で停まっ
て後続を待つ余裕も見せていた
<なんか…特にこれといって心配する必要も無かった
みたいね>
由貴の言葉に
〈そんな事ないよ~山道入る前にガソリンスタンド寄
っておきたいだろうけど、何処が良いか全然決めら
れなくって…〉
由貴は驚いた、晴子は冷静に山間部に入る前に給油の
必要にまで思いを巡らせていたのだ
<それなら、山道に入っちゃう前にちょうど良いスタ
ンドがあるからそこに寄ろうか>
〈ホント?じゃあ近くなったら教えてね〉
どうやら取り越し苦労のようだ、思っていたよりも晴
子には全然余裕がある
むしろ先頭向き、とさえ思える、由貴としては今後、
行先を希望した者に先頭を走らせ、徐々に皆をツーリ
ングに慣れさせようと思っていたのだが、やはりこう
いうものは習うより慣れろ、のようだ…
しばし一本道が続く中、目前に大きな山がそびえ立っ
ているのが視認出来た頃
<もうすぐガソリンスタンドだから先頭変わるよ>
と由貴が颯爽と先頭に返り咲く、やはり何と言っても
貫禄が違う、晴子もミキも安心してその後へと続く
左側に見えた大き目のガソリンスタンドに由貴がすべ
り込むのを見て、一行はそれに続いた
「ハルちゃん全然先頭問題ないね!」
『でも先頭ってペースに気を使いますよね…』
そんな事を言い合いながら、向かい合った給油機2台
に陣取り、それぞれが順に給油を済ませる
終わった者から順にバイクを端に寄せ、順次トイレ
などを済ませてゆく
女性陣も順にトイレへと入るのだが、まだ快適なシ
ーズンと言う事も有り、特にこれといって大きな化
粧崩れも見当たらない
〖確かこの先すぐ山道だったよね?〗
伸一の言葉に由貴も
<そうそう、結構な勾配とヘアピンカーブの連続の
つづら折れだから無理しないでね…>
〖基本的にず~っと一本道だけど左折する所だけ気
をつけないとだからその時は合図するよ〗
<大丈夫、大丈夫!間違ったら止まればいいから
(笑)>
〖間違いないね(笑)〗
緩い会話、気楽な励まし、気の合う仲間とツーリン
グなのだ、何も特別急ぐ必要も無いし、道を間違っ
たら止まって戻れば良い
〈じゃあ出発するね~♪〉
すっかり先頭が板についてきた晴子が颯爽とガソリ
ンスタンドを後にする
軽快なペースで走る晴子は、もはや吹っ切れている
のか迷いが一切感じられない
山道に入ってからも、その走りには迷いも躊躇も感
じられず、連続するヘアピンカーブも物ともせずに
突き進んでゆく
一定のペースを崩すことなく淀みない運転ぶりに、
由貴も伸一も舌を巻いていた
晴子のスムーズ前走が、一行の快適なリズムを生み
出し、エミもミキもそれに釣られるように、スムー
ズに走行できている
(へ~、大したもんだね…)
由貴は心の中で晴子を絶賛していた、初ツーリング
で最軽量、しか登りの強烈なワインディング、この
難しい局面で、これだけ快適なペースを作り出せる
なら何処を走っても問題は生じないだろう
運転適性が高いのだ、由貴はそう結論づけた、恐ら
く排気量が大きいバイクに乗っても、さほど時間を
かけずに慣れるだろう、そしてこのペースでも問題
なくついて来られるエミとミキもまた、十分な運転
適性と言えた
(この娘たちってホントに…)
由貴は嬉しかった、この先このメンバーで出かける
機会はどんどん増えてゆくだろう、自分と一緒じゃ
なくても、しっかりと安全にバイクで過ごして行け
る、そうなれるように積極的に知ってる事を伝授し
てきたつもりだ、3人ともそれをよく理解し、すぐ
に身に着けてくれる
気心の知れたハーレー仲間のオヂたちは、世話を焼
く必要などない、むしろ自分が世話を焼かれっぱな
しのチヤホヤ状態でのツーリングが多かった
それとはまた違った立場と楽しみ…
<た~のしい♪>
新たな発見をした由貴だった…
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




