Let`sツーリング①
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
レッドバロンに到着した一行は、言わずもがな注目
の的だった、それもそのはず、ミキのVINOを先頭に
APE、TW、セローと続き、最後には由貴のハーレー
だ、統一感が無い事この上なく、そのほとんどが女
性ライダーなのだ、しかも皆、初ツーリングと言う
事もあり、バッチリメイクをキメて来ていた
〖ハハッ、ミキちゃんなんだかボスみたいだな〗
⦅良いんじゃないの~今日は主役でしょ!伸兄ちゃ
んもな⦆
<そうそう、新車のお披露目なんだから胸張って行
かないとね!>
〈楽しみだね~〉
ワイワイと集団で現れた川本を見て担当店員は
[今日はまた大勢で来られましたね~、しかも面白い
取り合わせだ]
『こちらがVINOを引き取ってくれる須賀綾太くんで
す』
⦅あ、名義変更よろしくお願いします、これ住民票
です⦆
そう言って住民票を店員に渡す、マイナンバーカー
ドでコンビニでも住民票を出せる、便利な時代にな
ったものだ…
伸一とミキがセローを並べ見ている間、綾太はせっ
せと名義変更の手続きを進めていた
『わぁ、並べてみると同じセローでも結構違いがあ
りますね~』
⁅225と250はサイズ感も一味違いますからね、でも
セローは250でも他のオフローダーより格段に足つ
きが良いですよ⁆
〈これまであったサイドのマークがタンク上のエン
ブレムにきてるんですね〉
⁅そうです、このエンブレムは評判良いですね⁆
「伸ちゃんなら足つき問題なさそうだけど、アタシ
達だとちょっと高そうだね」
⁅フルサイズのオフローダーに近いサイズになりま
したからね、225の頃は本当に足つきが抜群でした⁆
『これが一番アタシに乗りやすい頃のセローって事
ね』
⁅そうですね、女性が最初の愛車に選ばれる事が多
いです⁆
〖とっても乗りやすくて良いバイクだよ、乗ってた
オレが言うんだから間違いないよ〗
そう言う伸一が店員から書類とキーを受け取った、
店員が書類入れについて説明してくれるのだが、ど
うやら開けるのに工具を必要とするらしく、開けて
見せてくれたのだが、面倒そうだ
225の方は、というと樹脂のサイドポケットに書類
が収まっていて取り出しもとても楽そうだ
そんなこんなで説明を受け終わった伸一がいよいよ
エンジンをかける
キーを差し込みイグニッションを回す、デジタルな
メーターに緑がかったバックライトが点灯する、ニ
ュートラル表示が緑の四角ランプではなくNの文字
だ、セルを回すとアッと言う間にエンジンが始動す
る、250㏄とは言え225㏄のモデルとエンジン音はそ
っくりだった
「どう?新車の感触は?」
〖感無量だね!しっくりくる…新型でもセローはセ
ローだな〗
⁅赤をお選び頂きましたが、我々としてもどこか懐
かしさを感じるカラーリングですね⁆
〖えぇ、THE SERROWって感じのカラーリングで
すよね〗
⁅私としてはヘッドライトが暗かった元祖セローを
思い出します⁆
⦅伸兄ちゃん、女性陣がおいてきぼりになってる
よ…⦆
つい店員とセロー談義に花をさかせていたのを綾
太に諫められた伸一だった
『名変は終わったの?』
⦅手続きは終了、これで後は明日提出してもらえ
ば書類が届くっと…⦆
「綾太くんは今日は行かないの?」
⦅オレはツレと出かける用事があるからお邪魔は
しないよ⦆
〖よし、これで手続き面は全てカタがついたな〗
そう言ってキーホルダーからセローのキーを外す
とポケットから出したスペアと共にミキに手渡す
〖さぁ、これで今日からミキちゃんがこのセロー
のオーナーだ!存分に可愛がってやってくれ〗
『ありがたく頂きます、それとコレ、セローの代
金です』
そう言って伸一に封筒を渡す
〖後で良かったのに、ではありがたく…〗
そう言って封筒をリュックにしまう
これでミキも愛車をゲットした、伸一の愛車も新
しくなり、それぞれがそれぞれの、新しいパート
ナーを得た
「じゃあ、今日の道順を確認しましょう」
本日の道順はこうだ、まず豊橋の有名スイーツ店
「ブランジェ」を目指す、ここを訪れた後、伊良
湖岬で昼食、その後はブラックサンダーで有名な
有楽製菓㈱の豊橋夢工場を散策、新城方面から本
宮山を抜けてトヨタ市街へと帰路につく
概要を皆で確認した後、フォーメーションを決め
た、先頭は由貴が務める、須賀夫妻からもらった
タンクバッグには背面に透明窓が設けられており
スマホの画面が見られるだけでなく、入れたまま
タッチして操作する事が出来るのだ
伸一のタンクバッグにはこの窓がついていない為
GOOGLEMAPを使いながら先頭を走る事が出来な
い、ここは経験もある由貴に先頭を任せる事にな
った、伸一は最後尾、遅れる者、トラブった者が
居た場合は伸一がフォローする
中間にエミ、晴子、ミキと挟まれる格好だ、これ
なら何かあった場合でも対処がしやすいだろう
<じゃあ行くよ~しっかり付いて来てね!>
「ハイ!」
〈ハイ!〉
『は~い!』
〖了解~〗
⦅じゃあオレはここで、ミキさんありがとうね⦆
『うん、可愛がってやってね~』
〖綾太またな~〗
〈<「またね~」>〉
そう言い皆が手を振ると、綾太は颯爽とVINOで
走り去って行った
それを見た由貴がエンジンを始動したのを皮切り
にそれぞれがエンジンを始動した、たちまち騒が
しくなった店先に周囲の人間の注目が集まる
そんな事には一切お構いなしの由貴がスタートを
切る、続いて晴子が、エミとミキが、そして伸一
が続く、さぁ、記念すべき初ツーリングのスター
トだ!
走り出しても集団の注目度は高いままだった、そ
もそもからして由貴のパパさん単独でも注目度は
高く、その上ライダーは由貴なのだ、そして集団
としては女性ライダーの占める割合がほとんど、
注目するなと言う方が無茶かもしれない
「やっぱり女性ライダーって珍しいのかな?」
〈今どきはそんな事もないと思うんだけどね~〉
〖みんな美人だからだろう!〗
臆面もなくそう言い放つ伸一なのだが、他意は全
く無さそうだ、いやはや生真面目と言うか何と言う
か表現に困る男である…
『そう言えば、慣らしって何キロするんですか?』
ミキが素朴な疑問を伸一に投げかける
〖そうだなぁ、オレは多分1000㎞でオイル交換×3
回を予定してる、その間は回転数をなるべく抑
えて高回転でエンジンを回さないように心がけ
るよ〗
『ほえ~そんなにマメにオイル交換するんですね
~知らなかった』
〖新車の時は、だね、中古でもなるべくは3000㎞
以内でオイル交換した方が良いね〗
「オイル交換って簡単?」
〖難しくはないよ、大した工具も要らないしね、
幸太おじちゃんの事だからオイルは新しいと思
うけど、今度やる時は一緒に手伝うよ〗
『アタシもお願いします』
〈アタシも~〉
一般道を中型バイクで走る分には、高回転域でエ
ンジンをまわす場面はほとんどないと言って良い
ツーリングはむしろ慣らし運転にはもってこいな
のだろう
一行はトヨタ市を抜け出し岡崎市に入った、この
まま国道1号線まで走行し、あとはしばらく国1を
ひたすら走行となる
信号停止の際、由貴が
<トイレ行きたい人が居たら適当に追いついて来
てね、コンビニか何かに入るから>
由貴は慣れたもので今回のツーリングなどは距離
的にも軽い物なのだろう
大きな住宅街を抜け、2車線の広い通りに出る
「ここ通るの初めて~」
〈アタシも、免許取った~って感じよね♪〉
<ここず~っと走ると国1に当たるからそこで左
折ね~>
『〈「は~い♪」〉』
ベテランの由貴が極めて快適なペースを作り出し
てくれる、簡単なようで一定のペースを維持する
というのはそれなりに疲れるものである
辺りの景色が急に賑やかになってきた、恐らく国
道1号線が近いのだろう
エミの予想通り、しばらく走ると大きな立体交差
が見えてきた、由貴は一番左の車線に入って行っ
た、一行もそれに習い交差点を左折した
年季の入った路面、古臭いガードレール、お世辞
にもキレイとは言い難い道路、だが、自分の運転
で走行するそれは、どこか新鮮で、格別な、解放
感に満ちた空間だった
ふと、追い越し車線に大型のバイクが2台、ハヤ
ブサとZZR、いずれもゴリゴリのツアラーなのに
タンデムシートには可愛らしいヘルメットを被っ
た子供が乗っていた
<アラ可愛い♡>
『キャ~かっわいい!』
〈素敵なお父さんだね~〉
追い越しざまに子供らに手を振られたエミたちは
黄色い悲鳴を上げながら皆喜んで手を振り返すの
だった
しばらく走ると道の駅「藤川宿」が見えてきた、
由貴がウィンカーを出してすべり込むと、皆がそ
れに付き従う、と、駐輪場には先ほどのハヤブサ
とZZRが停まっていた
トイレにでも寄っていたのだろうか、ソフトクリ
ームを手にした子供二人と父親だちが愛車の元へ
と戻ってきた
〖こんにちは!〗
❛ こんにちは~ ❜
伸一の挨拶に、愛想のよい返事を寄こす子供らが
可愛らしい
<そちらも今日はツーリングですか?>
〔えぇ、私らも天気が良いと繰り出すクチでね、
奥さんにそれなら子供連れてけ、と言われてし
まってね…〕
『アハハハ、それはラッキーだったね!』
ミキが話しかけると、子供らは満面の笑みで
❛ うん!! ❜
と返事した、なんとも癒される…
〖さぁ、トイレ行く人は今のうちに済ませておい
てね〗
女子一同は揃ってトイレでお色直し、とは言え、
道程としてはまだまだ序盤という事もあり、化粧
崩れなどは皆無だった
〈そういえばさっき向かいに見えたバイク屋さん
結構大きかったね〉
<あそこが岡崎のレッドバロンだよ、展示台数は
愛知県内でもかなり多い方じゃないかな>
「あそこが岡崎店か~」
『あそこ目指すだけでもショートツーリングにな
りそうですね』
〈ホントね♪〉
<さぁ、続き行ってみましょうかねぇ!>
「『〈お~~~~!!〉』」
〖よし!〗
各自がエンジンを始動する、それぞれが始動を済
ませたのを確認するように由貴がエンジンをかけ
る、全てをかき消すような轟音を上げたハーレー
が先頭を切って藤川宿を出発してゆく
旅はまだまだこれからだ!
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




