待ちに待った…!!
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
金曜日、そう今週の勤務が終わる日、そして、つい
に明日はTWを引き取りに行く日だ!
仕事には影響させない!浮ついたりもしない!そう
誓ったハズだったが、こればっかりはどうしようも
ない…
(こんな事じゃハルちゃんにまた叱られちゃう)
などと思ってはいたが、見事なまでに杞憂だった
と、いうのも、当の晴子もまたソワソワと一日中落
ち着かない様子だからだ
10時の休憩でも気と2人自販機でカップのコーヒー
を購入し食堂に向かうと、晴子が食堂のサーバーで
マグカップにお湯を注いでいるところだった
「ハルちゃん何してるの?」
そう尋ねると晴子は
〈今日から飲み物もドリップのコーヒーにしたの!〉
と、可愛らしい薄いブルーのマグカップに、ドリッ
プパックが被さっていた
『なるほど!!』
「徹底して倹約するのね~ちょっと感動しちゃった」
大げさでも何でもなく、エミは素直に感動していた、
自分では思いつきもしない倹約方法だった、たしか
に一回100円程度とは言え、毎回自販機で買ってい
ては不経済だろう、かと言ってエミ達にしてみれば、
会社での休憩時間こそ、まさにリフレッシュの時間
であり、この時間の雑談が仕事の活力のほとんどを
与えてくれる、と言っても言い過ぎではないぐらい
だ、最近ではメイク、バイク、お弁当、と話題に事
欠かない、エミの場合は和菓子、メイク道具は趣味
だと割り切り、そこに費やす資金は、心の安定と安
らぎを与えてくれる、そう考えているからこそ、オ
ヤツへの投資はケチらない、バイクを趣味にしてい
くなら、更に資金は必要になってくるだろう…
晴子も同じで、今後も洋菓子に費やす資金はケチら
ないだろう、だからこその倹約であろう
本気の本気でお菓子とバイク、という趣味を両立し
てゆくつもりなのだろう
〈スーパーで眺めてたらどれがいいか迷っちゃった
、最近ってすごいいっぱい種類があるんだね…〉
「でもコレ、ホントに良いアイデアだね!真似して
良いかな?」
『アタシも真似たい!良いですか?』
〈良いと思うならどんどんやって(笑)〉
さっそく週末にでも見に行ってこよう、お茶のティ
ーバッグや粉のインスタント飲料もアリだろう…
ほうじ茶は外せないとして…などと考えていたら
『〈おつかれさまです〉』
二人が挨拶した先を見ると、伸一が現れたところだ
った
〖おつかれ皆さん…〗
「おつかれさま…です、川本主任」
社内ではどう呼んだものか、悩ましい問題ではあっ
たが、波風立てるのも良くないので今まで通り呼ん
でいる
〖晴子さんドリップコーヒーにしたの?〗
〈えぇ、倹約の一環です!〉
「アタシとミキちゃんも切り替えるの!良い事は真
似しないとね!」
『ね~~♪』
〖オレもそうしようかな、、絶対自販機より美味い
よね!さっきからすごい良い香りが(笑)〗
〈ドリップ仲間に入りますか?(笑)〉
〖良いかもね!試しに自宅で飲んでみて、良いやつ
持ってこよう〗
最初はこんな始まりだった、だがこれは後に社内の
自販機の売り上げを激減させる一大ムーブメントと
なるのだが、それはまだ先の話…
昼休憩にはエミ、晴子、ミキのそれぞれがお弁当を
見せあいっこしていた、全員が入れてきている卵焼
きを、焼き目があった方が美味しそうだの、砂糖か
塩かで盛り上がったり、エミの入れているおからが
お手製だと知ると驚きの声が上がったりと、ワイワ
イ騒ぎながらの昼食シーンは、まるで遠足のお弁当
タイムのような賑やかで楽しい時間だった
好きこそ物の上手なれ、とはよく言ったもので、エ
ミは料理をする事を苦にした事がない、それは自分
でも最近気づいた事だが、料理が好きだからだ
お弁当タイムは、自分達が思っていた以上に楽しい
時間になっていきそうだ
得意ではない、と言っていたミキの弁当も当人の努
力か、はたまた情報によるものか、色どりもバラン
スもエミと晴子の弁当と見劣りする物ではなかった
ただ、ワイワイやってると時が経つのが早く、お弁
当を食べ終わった頃には休憩時間は残りが15分しか
なかった、晴子がいそいそとドリップし出すのを見
て、改めて真似しよう!と誓った
心が充実していると仕事もはかどるようで、本来は
少し手こずりそうな内容も、最初から怯む事なく挑
むせいかサクサクと進んでゆく
15時の休憩で、伸一が持ってきた水ようかんを皆で
仲良く楽しんでいると、部長と今泉さんが話し込み
ながらやってきた
〝あら、今日は水ようかんって事はエミちゃんね〟
「今日は川本主任が持ってきてくれたんですよ」
〖小玉の水ようかんがいっぱい入ってるんで、部長
も今泉さんも摘まんで下さいよ〗
《遠慮なくいただくとしよう、すまんな川本くん》
そう言いつつ一つを今泉さんに手渡すと、自らも水
ようかんを口にする
《お!?程よく甘すぎないところが良いね》
〝エミちゃんが和菓子に拘ってるからハンパなのじ
ゃダメだものね~〟
「そんな事ないですよ!?コレとっても美味しいし
、有名なんですよ「古月院」の水ようかん」
〝そうなの?何処のお店かしら〟
「三重です、伊賀の方ですね」
〖うわ!?何も言ってないのに何処のかまで分かる
んだ!?〗
『さすがエミさんですね、和菓子博士みたい!』
〈そう言ってミキちゃんだって大抵の洋菓子は作れ
るでしょう?それの方がすごいかもよ〉
《ハハハ、君たちは本当に楽しそうにお菓子を食べ
るんだね、趣味と言うだけはある》
「最近はバイクとかメイクとか料理とか…趣味が増
えちゃって時間がいっぱい欲しいです…」
〈ホント!やりたい事がたくさんありすぎよね〉
『お弁当作りもやってみたらすごく楽しいし♪』
《結構じゃないか、最近の仕事ぶりを見ていてもそ
れぞれモチベーションの高さを感じる、実に良い
ね》
太田部長を評する人は、口を揃えて「真面目」「お
堅い」「厳格」といった表現を用いるのだが、エミ
たちからすると、部下に理解があり、キチンと評価
してくれる素晴らしい上司だ
「明日アタシたち、バイクを譲り受ける日なんです」
〈そうなんです、もう待ち遠しくって♪〉
《活力の源はそれか!じゃあ月曜日は私もSTEEDに
乗ってくるとしようか》
あのSTEEDの横に自分のTWを並べる日が来るとは!
感無量とは正にこの事である、喜びを嚙みしめてい
る横で晴子とミキもまた似たような表情をしている
こういった部分で、上司が理解を示してくれると部
下のモチベーションは格段に上がる!
太田と言う男は本当に優秀な上司と言えよう
その後の仕事も順調この上なし!太田が実情を知っ
ている以上、舞い上がった様子や仕事ぶりを見せる
訳にはいかず、一同ピリッとした仕事ぶりで終業を
迎えるのであった
「おつかれさま~今日も終わったね~」
『いよいよ明日はTWとAPEの受け取りの日ですね』
《バッチシメイクして一番バイクに乗るのに相応し
い服装で行こうっと!》
晴子の気合の入りようがすごい!無理もない、エミ
も同じ心境だからだ、当然と言えば当然の事だろう
〖ミキちゃんだって日曜にはコイツに乗るんだよ〗
横からセローを押す伸一の声が響いた
『とっても楽しみです~♪』
「今日は三河庵さんに寄って和菓子買ってくるの」
〈あ!?須賀さんへのおみやげ?〉
「そうそう、たい焼きは初めて会った日に買ってた
から違う物にしようかな~」
〈アタシも何か手土産持って行こうっと♪〉
『アタシはセローが来たらシフォンケーキをホール
で持って行こうと思ってます』
「ホール!?」
〈でもシフォンケーキってホールでもすぐ食べれち
ゃいそう…〉
『クリーム塗ったり、あんこ乗せたり、バター塗っ
て軽くレンチンしたり、ハチミツかけたり、シフ
ォンケーキって色々楽しめて良いですよ、フレー
バーも紅茶だけじゃなく、抹茶、ほうじ茶、緑茶
なんかもアリで…』
さすが作る派!なんだか聞いた事ないアレンジがポ
ンポン出てくる、エミが古月院の水ようかんを言い
当てたのと同じ理屈だろう
楽しく話しながら正門を出ると、伸一がセローのエ
ンジンをかけた
〖じゃあ、明日迎えに行くから!ミキちゃんは日曜
の10時にこないだの駐輪場に集合で良いかな?〗
『分かりました、10時に駐輪場ですね!』
「今晩位置情報送ってもらう約束だから、明日はそ
れ見て行く事になると思う」
〖分かった!明日の朝確認するよ、それじゃまた
明日!〗
「またね~」
『〈お疲れ様です~〉』
軽快なエンジン音を響かせ、セローが颯爽と走り去
っていった
『それじゃ明後日に~お疲れ様でした~』
そう言い残しつつミキも原付で去って行った
その背中を晴子と共に見送りつつ駅へと歩く
「いよいよ明日だね~」
〈ホントだね、まさに待ちに待った!って感じ〉
「ハルちゃんは本当にAPEが好きなんだねぇ」
〈エミちゃんだってTW大好きでしょう?〉
「もちろん!」
〈もう一目惚れ!最初のバイクはこれしかない!っ
て感じ〉
「アタシも!バイクに乗るならコレが良い!って思
ったの」
お互いグッと来るものがあったのが違うバイクで良
かった、仲間内で要らぬ取り合いをせずに済んだ
電車に揺られながら、お互いこれからどうしたいか
を話した、バイクの運転を上達させたい、お弁当を
ゆくゆくは仲間内で交換したい、詐欺メイクにも挑
戦してみたい、それでカラオケなど行ったら楽しい
だろう、と、そんな感じのもしも話を取り留めもな
く交わした、恐らくは最後になるであろう電車通勤
を噛みしめるように…
晴子の最寄り駅が近づいてきた
電車の速度が緩み、停車の気配を感じる頃、晴子が
座席からスックと立ち上がり
小さな声でエミに言った
〈ありがとねエミちゃん…アタシ、1人だったらこん
なに充実した毎日送れてなかった…〉
最後の電車通勤、その節目で晴子としても感じ入る
ものがあったのだろう
目に力強い光が宿っていた
「こちらこそありがとう!一緒に免許取りに行けて
とっても楽しかった、これからはバイクで一緒だ
ね!」
〈うん!それじゃまた明日〉
小さく手を振り晴子が電車を降りてゆく…
エミも小さく手を振り返すと、なんだか言いようの
ない寂しさがこみ上げてきた
それが何なのか?電車通勤が終わる事への寂しさな
のか、定かではない…
一つ言えるのは、これは自分たちにとって、確実に
前進である、と言う事だけだった
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




