決戦!前編
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
合格発表を確認した三人は、その足ですぐ由貴の元
へと向かった
『由貴さんっ!合格しましたよ!アタシたち全員で
す』
ミキの報告を聞いた由貴は、大いに破顔して喜んだ
<やったね!おめでとうっ!!みんな>
⁽ おめでとうございます、それじゃこれから卒業式
ですね ⁾
由貴の後ろから中年、と思しき女性が声をかけてき
た、知らない女性に祝福され困惑していると
<アタシがいつもお世話になってる主任の長谷川さ
ん、IRONPLATEを教えてくれたのも長谷川さんな
の>
由貴の口ぶりから、職場で親しくしているのがよく
分かった
〈ありがとうございます、由貴さんには色々お世話
になってます〉
『ホントホント、業務外でも仲良くしてもらってま
す』
⁽ この娘めんどくさがりだから、打ち解けるのは珍
しいハズなんだけどね~、珍しいから仲良くして
やってね ⁾
「へ~意外ですね、由貴さん友達多いと思ってた」
<特別少ない訳じゃないよ、もちろん多くもないけ
ど、ね…>
⁽ こ~んな可愛い顔してるのに出会いがないらし
いから、連れ出してやって!お願いね ⁾
『う~~男っ気はアタシたちもないかも…』
ミキの言葉に一同が大いにウケた
⁽ さぁ、最後の一仕事!この学校での最後の行事
!頑張ってきてね ⁾
『〈「ハイ!!」〉』
揃った返事を返して、エミたちは由貴と主任の二
人に手を振りながら2階へと向かった
卒業式はありきたりの流れで進んだ ”卒業おめで
とうございます” に始まり” 君たちはこれから
自動車社会に飛び込みます” や、”ルールを守っ
て” といった聞き覚えのあるフレーズが並ぶ校長
の講話をありがたく拝聴し、いよいよ卒業証書を
受け取る段となった
『感慨深いですねぇ…』
ミキの言葉にはエミも同感だった、順調だったと
は言え、会社が終われば、受けられる学科を受け
るべく学校に向かい、可能な限りの時間を実技と
、それを都合つける為に費やした日々…
今ではすっかり、生活のリズムは自動車学校での
都合を元に形作られていた
終わってしまうのは少し寂しい…
〈ホントだね…〉
同じ事を思っているのだろう、晴子の横顔も、ど
こか寂し気だった、
⦅ ところで… ⦆
ここで校長が話を区切って一息ついた、エミたち
の視線が集中しているのを確認したかのように、
話の続きを語り出した
⦅ お三方にとって、当校はどうでしたか?楽し
かったですか? ⦆
不意に校長に尋ねられ、少しキョドっているエミ
を横目に、ミキがハキハキと
『ハイ!とっても居心地が良くって、教官はみん
な優しくて丁寧で、事務員さんも親切でした!』
饒舌に答えた
「アタシも!とっても通い心地の良い学校でした」
〈楽しかったですよ!とっても〉
三人の答えに、とても満足そうな笑みを浮かべた
校長が一言
⦅ 当校のモットーは ”バイクは楽しく!” で
す、もちろん真剣に教習に挑み、時には教科
書を持ち出して交通法令や標識などを勉強す
る必要もあったでしょう…それら全てを含め
て、バイクを楽しむ、その点につながってく
れたでしょうか? ⦆
『学科はめんどくさかったです…』
ミキがボソリと言った
⦅ ハハハハ、学科はたしかに面倒ですね、です
が安全に楽しくバイクに乗るためには必要な
事です ⦆
今や三人とも、真剣に校長の言葉に耳を傾けてい
た、たった三人の卒業生、大型免許の前座のよう
な、今どき珍しい普通二輪免許、だけど、、、
エミたちにはこれ以上ない大きな一歩!
⦅ 自動二輪は転べば大きなケガにつながります
、人を巻き込めば、それだけ多くの人が不幸
になります、、、そんな事になってはバイク
を楽しむ事も出来なくなります、肝に銘じて
下さい、自分の命を、誰かの命もまた乗せて
走っているのだと、今後のバイクライフを、
どうか楽しく、安全に過ごして行って下さい
、私からのお話は以上となります、平針での
試験も頑張って下さい ⦆
”起立” ”礼” の合図で校長に深々とお辞儀をし
た後、順に名前を呼ばれて卒業証書を受け取った
証書を受け取り席に着いたとたんに、いよいよ卒
業なんだという実感がヒシヒシとわいてきた
その後は細々とした説明を受け、無事、卒業式も
終了となった
『終わっちゃいましたねぇ、全部…』
〈まだだよ!〉
「そうそう、学科落ちたなんて締まりもしない
から…」
『そうですね!学科落ちなんてシャレにもならな
いです!!』
時間は11時45分、愛知県の県試験場「平針」での
本免試験は土日、祝日はやっていない
エミたち三人は月~金の間しかやっていない本免
試験を受ける為、上司や職場の同僚たちに事情を
説明し、来週の月~水までエミ、ミキ、晴子の順
で、一日交替で有給を取る旨を説明し、了承を得
ている、むろん三人同時に有給を取る事も出来る
のだが、エミ同様に、晴子もミキも仕事に少なか
らず影響を出す事を良しとしなかった結果、こう
いった結論となったのだ
エミが一番手なのは、川本とエミの事情を、なん
とはなしに察してくれている晴子とミキの温情だ
ろう
「景気づけにゴハン食べに行こう!!」
『カレー焼きそばですか!?』
〈いいね!マスターにも報告しなきゃだし…〉
三人はその足で由貴の元に向かうと
<今日はそうくると思って、お昼ご飯用意してこ
なかったのよね…(笑)>
『さっすがぁ~!!』
「アハハハハ」
〈じゃあもちろん、あの店で!〉
<先行ってて、主任に言っとく>
奥に引っ込んで行く由貴に ”先に行ってます” と
声をかけて、三人は例の喫茶店に向かった
カランカラーン♪
いつものノスタルジックな鐘の音を響かせて店内に
入ると
( いらっしゃい! )
マスターが威勢よく出迎えてくれた
( お!また来たねお三方!って事は卒検終わった
のかな?結果は?? )
三人揃ってピースサインをマスターに向けたのを見
てマスターが満面の笑みで喜んだ
( おめでとう!こりゃ良かったね♪三人揃って合
格なら文句なしだ )
カランカラーン♪
あまり間を置かず由貴が騒がしく入店してきた、肩
で息切っている所を見ると小走りで来たのだろう
<お待たせ!>
『ぜんっぜん待ってないです!まだ席に着いてもな
い…』
( ワハハハ!めでたいな、好きな席に座っててく
れ )
マスターは豪放な笑い声を上げつつ水とおしぼりを
用意しに引っ込んだ
手近な4人掛けのテーブルに着くと、4人はそれぞれ
メニューとにらめっこを始めた
そこへやってきたマスターに
『マスター、ここのミートスパってどんな感じなん
です?』
と、まるで常連客のような気やすい感じでミキがマ
スターに尋ねた
( オレとしては結構自信作なんだがね、鉄板盛り
で下に卵焼きが敷いてある昭和のアレって感じ
のやつだ )
『うわ!絶対美味しいやつ!アタシそれにします』
<アタシは久々にナポリタン!>
〈アタシは王道のカレーで!〉
「みんな早いな~アタシは何にしようかな、、、」
エミが悩んでいるとマスターが
(何気に日替わり定食とかもやってるが…)
と口を挟んだ
<ちなみに今日は何?>
(今日はオムソバのセットだね、サラダとスープが
付く)
『む~戦闘力が高い、、です…』
ミキは変更するか悩んでる様子だ、エミはマスター
の勧めに従い
「じゃあ日替わり定食で!」
と即決してしまった、ミキは ”ちょっと待って”
とひとしきり悩んだ挙句
『やっぱりミートスパで!』
と初志を貫いた、一通り注文が終わりひと段落つい
たところで、エミは皆に自然に、何でもない事のよ
うにそっと告げた
「今日この後、川本さんとハッキリしてくる…」
しばしの沈黙の後
『とと、突然ですね…』
<いよいよか~>
と、当然とも言える反応が二人から返ってきたが、
晴子だけは意外そうな顔もせず
〈だよね、頑張って!〉
と、真剣な表情でエミを激励した、付き合いが一
番長い晴子は、恐らくは表情からエミの決意を読
み取っていたのだろう
ミキも由貴も、むしろ晴子に驚いた表情を向けて
いたが
『頑張って下さいね!』
<エミちゃん!ファイト>
と、気を取り直して激励をくれた、平静を装って
はいたが、エミもその実、内心では心臓バクバク
であった
<でも意外だよね~、免許取っちゃてからの告白
にこだわってるのかと思ってた>
そう思うのも無理はないだろう、エミとて最初は
そのつもりだったのだから…
〈エミちゃんてば頑固なとこあるからね~〉
『アタシには分からない部分ですね…』
「あの、ね、最初はアタシもそう思ってたの、免
許を取って、納得いくメイクを完成させて、そ
れから川本さんに思いを伝えて、って」
「でもね、川本さんにそれを伝えて、待ってもら
って免許を自分の力で取るんだ~って気合入れ
て、」
ここで過去を思い出してフッと口元がゆるむ…
「でも違ったのよ、アタシなんて1人じゃ何も出
来なくて、仕事だって、出来てるつもりでも出
来ない事の方が多くって、免許だって、1人だ
ったらどれだけ落ちてたか…」
「だから頼るところは頼るの、仕事だって、無理
だと思ったら川本さんにもハルちゃんにもミキ
ちゃんにも頼るし、何かあったら由貴さんにだ
って、こないだみたいに頼るかもしれない…」
「そんなアタシが、意地張って川本さん待たせる
なんて、バカみたい!だから一番近い今日この
日、卒検に受かって川本さんに伝えよう、って
…」
〈なるほどね~〉
<いいんじゃない、エミちゃんが決めたなら>
『なんだかちょっと大人ですねぇ…』
そんな話をしていると、マスターが注文の品々を
運んできた
(どうだい?イメージ通りの見た目だろ?)
ミキにミートスパを渡しながら、ニカッと笑う店
長の笑顔がなんとも印象的だった
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




