卒業検定:前編
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
〈昨日は美味しかったね~♪〉
『ホントですぅ~エビフライもビーフシチューもハン
バーグも美味しくって、でも…』
「ナポリタン、、アタシも試してないのよ、、」
〈じゃあ、また行くしかないね!〉
「そう!自分のバイクで!!」
エミはそう言うと右手を前に突き出した
「絶対合格するぞ~~!」
〈『「お~~~~!」』〉
<みんな気合入ってるねぇ~♪>
『もちろん!由貴さんも一緒にまたIRONPLATE行くで
しょ?』
<”自分のバイク”で、ね♡>
「〈『ハイ!!』〉」
<頑張って!応援してる>
「行ってきます!」
〈由貴さんに教えてもらった事を活かして、きっと合
格するから〉
『アタシは経済的にも余裕なんてありません!必ず合
格します!』
全員がドッと笑いに包まれた良い雰囲気だ、最も、エ
ミにとっては免許を取る、と言う意味合い以外の部分
が多く、気楽には挑めない状況でもあった
川本に必ず合格すると言った手前、落第など許されな
い状況だとも思っていた
<ちょっとエミちゃん…>
由貴に肩を叩かれ、エミは勢いよく振り返った
つもりだった、が、エミの頬は由貴の指によって動き
を止められた
「ゆ、由貴しゃ、、ん??」
古典的なイタズラでエミの頬を指で突いた由貴が、開
口一番
<バイクは楽しいもんよ!>
頬をさすりながら困惑するエミに一言放った由貴が
<楽しんであげなきゃバイクが可哀そうよ!>
『そうですよぉ~エミさん、TWに乗るまでは、ここの
教習車がアタシたちの愛車です!』
〈ホントね(笑)〉
<そうそう、ここの教習車は教官と整備員の愛によっ
て整備されてんの、だから安心して身を預けておい
で♪>
そう言ってエミの背中をポンと押し出す
満面の笑みを浮かべたエミ達が由貴に敬礼しながら
”行ってきます!”と、歩を進め出した
その背中を見送っていた由貴に背後から
⁽ 珍しいのね~、由貴ちゃんがあんなに親しげに教
習生とおしゃべりなんて、あの娘たち、知り合い
だったの? ⁾
主任の長谷川に問われ、由貴は正直に
<仕事明けに一緒にお食事したんです、それ以来の
仲良し♪>
⁽ あらあら、ますます珍しいのね(笑)めんどくさ
がりの由貴ちゃんたぶらかすなんて、良い娘たち
なのね ⁾
<えぇ、とっても♪>
長谷川は笑ってとても嬉しそうだ
<主任から聞いてたIRONPLATEにみんなで行ったん
ですよ~♪>
⁽ アラ!?ビーフシチュー食べた?あそこ何食べる
か悩むわよね~ ⁾
由貴もまた、職場に恵まれていると実感していた、
その自分の本業で知り合った気のいい娘たち
是非とも合格してバイクの世界の仲間入りを果たし
て欲しい、と、切に願っていた
中型自動二輪免許=現在では普通二輪免許と呼ばれ
るこの免許は、取得の難易度としては大型とさほど
変わらない、ただし、400㏄までの排気量のバイク
に乗る事が出来る、非常に利便性の高い免許なのだ
資金と心に余裕がある者は大型を選ぶだろうが、”4
00㏄までで十分”と、考える者にとっては、都合の良
い免許なのだ
卒業検定での採点方式は減点式で、100点の持ち点を
70点以上残して終了すれば合格となる
注意すべき点としては大きく3つ、一時不停止、一本
橋での脱落、その他事故に至りそうな危険な走行行為
それ以外にも、即試験中止に至るものとしては、接触
(強め)、派手な転倒(ケガをする危険がある、後続
車に巻き込まれる危険がある等)や、その他にも各試
験教官の判断により、危険と判断された場合も即試験
中止となる
「プロテクターはどう?おかしいとこない?」
エミは自身の装備確認にも余念が無かった、マジマジ
と一周みまわした晴子が
〈問題ないよ、安心して〉
と太鼓判を押した、エミはお返し、とばかりに晴子と
ミキを見まわし
「二人ともカンペキ!問題なし」
と太鼓判を押し返した
《 入念ですね~とても感心です 》
すっかりお馴染みとなった水木の言葉に、一同が顔を
綻ばせて喜ぶ
「今日はよろしくお願いします」
〈『お願いしま~す』〉
皆の挨拶に”こちらこそヨロシク”と軽く挨拶を交わし
た後、一足先に教習コースへ入って行った
恐らくは教習に使う車両の最終確認を事前に行うのだ
ろう
『緊張するなって言っても無理な話ですよね(汗)』
「何がどうなっても少しは緊張するよねぇ…」
ミキとエミが強張った表情をしていたのだろう
〈由貴さんなんてわざわざインカムまで持ち出してア
タシにご教授くれたのよ!ここで足踏みなんてして
られない〉
「『うん!』」
拳を握りしめて力説する晴子に、力強く大きくうなづ
く二人だった
2~3分が経過しただろうか?水木が教習コースから戻
ってくると
《 それでは、卒業検定に向かいましょうか、細かな
説明はそちらで行いましょう 》
水木に促され、三人は連なって階段を降り、教習車の
元へと向かった
エミたちのここでの愛車 ”CB400 SUPERFOUR”は今日
も行儀良く並べられていた
「今日はお願いね!相棒」
キーを受け取った教習車の燃料タンクを撫でながらエ
ミがつぶやくと、晴子とミキも同じ様な事をしていた
由貴の話を聞き、水木が入念に事前のチェックをして
いるのを見て、今さらながら愛車感がわいてきたのだ
ろう
教習車を愛でる三人の姿が好ましかったのか、水木も
すこぶる機嫌が良さそうだ
《 以上が注意点となりますが、何か質問したい事は
ありますか 》
水木の問いに、エミがサッと手を挙げると口を開いた
「あ、あの、、緊張をほぐすにはどうしたら、良いで
しょうか?」
『アタシも知りたいです!!』
〈アタシも!!〉
三人の切実な表情に、極めて意外、といった表情の水
木が口を開いた
《 皆さん緊張してますか? 》
「ハ、ハイ…」
水木に問われ、エミは素直に返事した、晴子もミキも
コクリと小さく素直に頷いた
《 では、、コホン… 》
水木は小さく咳払いをひとつすると、もったいつけな
がら話始めた
《 まず長坂さんは、全般的にこれといって得手不得
手が見当たりません、二ーグリップも良く出来て
います、少しウィンカーを出し忘れる時がある、
といったぐらいでしょうか…》
「あ、あの、、、」
話しかけたエミを振り切るように、水木は先を続けた
《 伊藤さんは、全般的に非常に良く勉強している印
象を受けます、取り回しからコーナリング、シフ
トワークに至るまで、私やほかの教習生、他者の
走行手順まで、よく観察してますね 》
もはやエミは、水木の話を遮るのを諦めた様子だ
《 園田さんは、もともと原付に乗っている、との事
でバイクの挙動自体に慣れている様ですね、その
分、教習所での運転とのクセの違いを合わせるの
に苦労していた印象です、、、》
何故か語られた、水木の三人への寸評は終わった
もう一度エミが口を開こうとした時、再び水木の言葉
によって遮られた
《 総評すると、あなた方三人は十分卒業検定を合格
するだけの技量に達している、と判断します 》
「え、、?」
〈本当ですか!?〉
『ホント??水木先生??』
三人が三人ともに、水木に聞き返す
《 えぇ、本当ですとも、だから緊張は少しだけにし
て、自信を持って、堂々と試験に挑んで下さい 》
少し間をおいて水木が一言付け加えた
《 最後にひとつ、バイクは楽しいものです、楽しん
で、かつ安全に、試験にのぞんでください、合格
してくれる事を我々も望んでますよ! 》
「あ、それ、由貴さんも言ってた…」
《 あぁ、そう言えば有賀さんと仲が良いんでしたか
当校のモットーなんですよ、”バイクは楽しく!”
ってね 》
〈由貴さん、それで…〉
『円陣組みますよ!』
言うや否や、ミキが右手を前に差し出した、その手に
エミと晴子が手を重ねる、と、、
水木も手を重ねてきた
《 合格するぞーー!! 》
「〈『お~~~~!!!』〉」
意外や意外、、こういうノリは苦手だとばかり思って
いた水木が音頭を取った
三人の中の緊張はいつしか、バイクを楽しむ、という
この学校の理念で上書きされていた
いよいよ卒業検定が始まろうとしていた、エミの中に
緊張を上回る充実感と希望がうずまいている
(合格するんだ!)
決意も新たに、卒業検定に挑む、少しの緊張を残して…
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




