美味しい晩ゴハン②
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
先頭を走る川本は、かったるい街乗りがなるべく楽
しく感じられる道を選ぶ、と言ってたように、アッ
プダウンやちょっとした公園沿いの山道、ゆるやか
なコーナーといったバリエーションに富んだコース
選択をしたようだ、そのせいもあってか、以前駅近
くのうどん屋へ行った際のコースとは雲泥の差を感
じる程の楽しさだった
一方晴子と由貴は…
<ハルちゃ~ん>
〈ハイなんですか?〉
<エミちゃんから聞いたよ、パーシャルで悩んでる
んだって?>
〈そうなんです、今イチ文章読んでるだけじゃピン
とこなくって…〉
<この先緩やかなコーナーが続くんだけど、アタシ
がアクセルどうしてるか注目してみて>
〈ハイわかりました!〉
一行は墓地公園横の緩やかな連続コーナーに差し掛
かっていた
<ホラ、ハルちゃん、今ゆるいコーナーを左右に三
つ走ってきたけど、アクセル一定で来たでしょ?>
〈ハイ…〉
<早い話、今のもパーシャルなのよ、前にずっと50
km/hで走る車が居たとしたらアクセル一定で後
に続くでしょ?それと同じ>
晴子の中でパーシャルに対する”特別なテクニック”
という解釈のせいでかかっていたモヤが、一気に晴
れて行ったような感覚が得られた
(な~んだ、そんな事だったんだ!?)
<どう?疑問は解決したかな?>
〈ハイ!!すごくよく分かりました、有難うござい
ます〉
<良いよ~水臭い、こんな事ならいつでも協力する
し>
<あちらさんも熱心にエミちゃんに同じような事言
ってる最中じゃないかな?ハルちゃんがもう分か
っちゃったならあっちにインカム付けてあげよっ
かな?>
〈なんだか無くても良さげな雰囲気に見えるけど…〉
<ホントだ、あっちはほっとこうか(笑)>
恐らく自分が弱音を吐いたから、エミは色々気を回
して今回の食事会を計画してくれたのだろう
エミに対する感謝と、それに付き合ってくれる皆の
存在が本当に有難かった
交差点で停止した際、3台が横並びになる、ハーレー
、セロー、原付、なんとも異色な取り合わせだ
〈エミちゃ~ん〉
由貴のハーレーが爆音な為、自然と大きな声になっ
てしまう
「な~に~」
負けじと大きな声で答えたエミに
〈ありがとう!スッゴく良くわかった!!〉
晴子の言葉にエミの表情がパッと明るくなった
「良かった!じゃあもうハルちゃんは合格確定みた
いなもんだね」
〈それはまだ分からないよ!だから油断しない!〉
努力家の晴子らしい意見だった
「駅裏の〇〇屋に2階に行きたいの」
エミに請われた川本は
〖あ、エミさんがイケおぢさんにメイクを勧めら
れた店か~〗
「そうそう、そこの店長さん達がアタシたちのお
師匠様なの」
〖お師匠様かぁ~、女性のメイクにノコノコつい
て行くのは野暮だから、オレは本屋にでも行っ
てくるよ〗
さりげない気遣いが川本らしかった、エミとし
ては店長に川本を紹介したい気持ちもあったが
、それはまた今度でも良いだろう、ん??また
今度とは…
表の駐輪場にバイクを停めると、一行は2階の
化粧品店を目指した
川本は
〖それじゃまた後でね~〗
と、一行から別れ、向いのB館へと歩いていっ
た
<アラ?川本さんは来ないのね??>
「女性のメイクについてくのは野暮だからって
…」
『うわ、イケメンムーブですね…(笑)』
〈ホントね〉
一行はドッと笑いながら化粧品店へと向かった
「みんなは先に行ってて、アタシはちょっとメ
イク直してくる」
そう言うとエミは化粧室へと向かった
化粧品店へと行くのだから、そこで直せば良い
のだろうが、エミにとっては今日の店長らとの
対面は大きな意味を持つのだった
自然と晴子とミキも後に続く、由貴は(みんな
どうしたの?)といった感じで少しキョドって
いた
『アタシたち、ここの店員さんには熱心に指導
してもらっていて、ハンパなメイクは見せた
くないんです…』
〈アタシも、こないだ教えてもらったメイクの
コツは最低限出来ているところを見せたいん
です〉
エミが化粧室に来なくても、晴子もミキも自然
と向かっていたに違いない、気持ちはエミと同
じようだ
<なんだか真剣なのね、、アタシ緊張してきち
ゃった>
思ってもいなかった一同の熱量に、少しタジタ
ジの由貴だったが
「全然心配いりませんよ、店長さんも店員さん
も優しい人ばかりです!」
<みんなこの店大好きなのね??>
「〈『もちろん!!』〉」
<あらあら、ハモっちゃって(笑)行くのが楽
しみになってきた>
三人が三人ともに入念なメイク直しを行い、各
々が納得いく結果を得た様子だ
「では行きましょうか!」
化粧室を出ていざ!あの店へ…
入店しカウンターへ向かうと、いつものように
磯山と前原の二人組が出迎える
⁅〘いらっしゃいませ〙⁆
⁅アラ、今日はお1人増えてらっしゃいますね
(笑)⁆
磯山の言葉に
<はじめまして、三人の友達の有賀由貴と言い
ます、今日はバイクに乗る時のメイクでご相
談に伺いました>
丁寧に自己紹介する由貴に、磯山も前原も丁寧
なお辞儀を返して返事した
「店長さんはいますか??」
エミに問われると磯山が
⁅あ、呼んできますね、少々お待ち下さい⁆
とカウンター奥へ引っ込んで行った
由貴に紹介する為だが、何故か自身が緊張して
きた、と、言うのもエミにはどうしても見ても
らいたい理由があるのだ
などと、やりとりしている間、前原が三人の顔
をマジマジと眺め
〘皆さんメイクお上手になりましたよね~〙
と感心した様子で言ってきた
「上手く、なってます、か?」
エミが自信無く尋ねると
〘もっと自信を持ってください、間違いなく上
達しておられます!〙
と太鼓判を押してくれた
〘メイクってプロと一般の間に壁があると思っ
てるんですが、皆さん壁を越えつつありますね〙
〘ミキさんは今日ちょっと派手目にしてるとこ
見ると、この後お出かけですか?〙
『わ!スゴイ!!分かるんですか?ちょっと良
い所に行くらしいのでやや盛ってます♪』
さすがプロ!前原も磯山も、エミが上達したと
は言え、客を相手に即座に満足させるメイクが
施せるとは思えなかった、それが出来るからこ
そプロなのだ、道行きは長い、エミはそう感じ
た
<スッゴいね~そんな事も分かっちゃうんだ>
〘なんとな~くですよ、そんな大層な事じゃあ
りません…〙
照れながら話す前原がとても可愛らしかった
❝ お待たせしました ❞
「『〈お久しぶりです!〉』」
三人がかしこまって挨拶するのを見て由貴が
<なんだか部活みたいね~(笑)>
と言ったところで大爆笑が起きた
<はじめまして、有賀由貴と言います、アタ
シがバイクに乗る時のメイクで悩んでたら
三人がここを紹介してくれて…>
店長は三人を見まわすとウットリするような
笑みを浮かべて
❝皆さん当店を選んで頂いて本当に有難うご
ざいます❞
と深々と頭を下げた
「とんでもない!頭を上げて下さい」
と恐縮するエミに向き合った店長が
❝ アラ!?、、、 ❞
と、ふと何かに気づいた様子でマジマジとエ
ミの顔を眺めた後
❝ ちょっと失礼 ❞
と言ってエミのメガネを外してしまった
❝ ふ~ん、、、 ❞
としばらく再びエミの顔を眺めた後一言
❝ とっても良く研究してると思います、こ
の後見に行くんですか? ❞
と質問してきた
「いえ、今日は店長さんに見てもらいたくて
、、」
❝ そうですか、とっても良い出来だと思い
ますよ ❞
とニッコリ答えた、他の面子は意味がわから
ずいたが、エミが不意に
「コンタクト用のメイクを練習してて、今日
はそれで来たの…」
と発言した所で、磯山と前原がすぐさまエミ
の顔に見入ってきた
〘 ホントだ!?今日の色調はメガネに合わ
せた物じゃないですね〙
⁅ メガネの時の縮小効果もちゃんと計算され
てますね… ⁆
と感心し出した
❝ あなた達もっと早く気づいてあげないと
、エミさんがこんなに研究して努力して
きたのに ❞
と店長にたしなめられるのだが、それは酷と
いう物だろう、エミにはむしろ店長の慧眼が
信じられなかった
エミが一言も発する前に全てを見破られて
しまったのだ
だが、店長の慧眼はそれに留まらなかった
❝ 晴子さんはメイクの際がとても上手に
なりましたね、ヘルメットラインが不自
然にならずに綺麗にボカしてあります、
今日は有賀さんも同じようにメイクが仕
上がるようにレクチャーしましょうか ❞
〈おかしな所は無いですか?〉
晴子がはにかんで尋ねると、店長は
❝全然!さすがバイク女子!って感じですね
注目を浴びるのが避けられないなら何処
に出しても恥ずかしくないメイクを!と
いったところでしょう? ❞
晴子はやや頬を赤く染めて小さくコクリと
頷いた
エミですらが初めて見るような表情だった
❝ では有賀さん、バイク用のメイクを施し
ていきましょうか?❞
と、言うといつもの鏡台の方へと由貴を導
いて行った
晴子は興味があるのか後に続いた
『アタシは評価が無かったですね…』
ミキが寂しそうにポツリと呟くと
❝ アラ、前原がちゃんと言ってたじゃな
いですか、今日この後おでかけなんです
よね?少し普段より強めた良いメイクの
あんばいですよ ❞
『ちょっとエミさん聞きました!?良いあ
んばいだそうですよ?』
元々メイクの強弱が下手で、ケバくなりが
ちだったミキからすると一番嬉しい評価な
のだろう
友達が評価されるのは素直に嬉しいものだ
と、いよいよ由貴のメイクが開始されるよ
うだ、復習の意味も兼ねてしっかりと見学
せねば…
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




