拍子抜け…??
「お腹が空いたからこないだの喫茶店で話そうか」
『ハ、ハイ…』
覚悟を決めたエミの表情を見て取ったのだろう、ミ
キも神妙な表情で頷いた
二人は各々自転車と原付を押しながら喫茶店へ向か
った、この喫茶店は21時まで営業している
カランカラーン♪
古い喫茶店にありがちな鐘の音を響かせながら入店
すると、奥の角の席に向かいあって陣取った
{いらっしゃいませ}
ウエイターからメニューを受け取ると
「ミキちゃん何にする??」
務めて平静を装い尋ねる
『ん~ナポリタンにしたいけどこないだも食べたし
、、少し悩ませて下さい…』
「じゃあアタシがナポリタンにしようかな…」
何気ない会話、しかしエミの中では緊張感がMAXだ
った、ミキとの間に決定的な溝が出来てしまうかも
しれない、それでも…
呼び出しブザーを押してウエイターに注文を告げる
ウエイターが下がった後、エミは一つ深呼吸をした
後、意を決して切り出した
「ミキちゃん、、」
『ハイ?』
ミキは何を言われるのか身構えている
「ミキちゃんは、、そ、その川本さんと、、つ、付
き合ってる、の??」
覚悟は決めたハズだったがハッキリと口に出して言
うのは勇気が必要だった
『ええ~~何ですかそれ?訳わかんないですぅ~』
ミキはいたく驚いた様子だったが、本当に訳が分か
らない、といった表情で嘘を言っているようにはと
ても思えなかった
だが、エミには確認する必要があった
「でも、アタシ聞いちゃったの、ミキちゃんと川本
さんが話してるのを、LINEを交換してるのも…」
『あぁ、あ~~、なるほど!もぅ~だからダメだっ
て言ったのに川本さん!!(怒)』
「二人が正式に付き合ってるんだったら、アタシ、
、」
『あ~待ってください!そんな、元も子もない…』
そう言うとミキはスマホを取り出し、電話をかけな
がら席を離れた
『エミさん、事情はすぐ分かりますから、取りあえ
ず落ち着いてゴハン食べましょう』
ミキがそう言うと、時を置かずして注文したメニュ
ーが運ばれてきた
『エミさん、、、1つ聞きますね』
不意にミキが口を開いた、エミはミキの硬い表情に
真剣な心情を読み取った気がした
「な、何??」
キョドりながらも返事をすると、ミキの口から出た
言葉は意外なものだった
『こないだの食事の後、川本さんとどんなやり取
りがあったんですか?』
エミはしばし逡巡した後、川本とのやり取りをか
い摘まんで説明した
エミから内容を聞いたミキは
『そんなカッコ良い事言ったんだ~川本さん、ま
ったく(怒)』
と何やら怒っている様子だ、ますます訳が分から
ない、運ばれてきたナポリタンのセットにも全く
手をつけていない状態が続いた
『エミさん』
ミキからの呼びかけに
「ん?」
エミが答えると
『せっかくのナポリタンが冷めちゃいます、温か
くて美味しいうちに食べましょう』
ミキに促され、渋々セットのスープから口に運ぶ
が、全く味がしない、するとミキが
『あと5分くらい待って下さい、全て分かります
から』
そう言うとミキはおろしハンバーグセットを美味
しそうに頬張り始めた
エミもこれと言って手持ちぶさたになってしまい
モソモソとナポリタンを食べ始めた
程なくして表に一台のバイクが停まる音がした
カランカラーン♪
小気味良い音を響かせ顔をのぞかせたのは、誰あ
ろう、川本だった
エミは心臓を掴まれるような思いだったが、ミキ
が川本に向かって手を挙げると、川本はエミを浮
かべてこちらへやってきた
〖こんばんはエミさん、で、ミキちゃん用事って
何だった?〗
「ミキちゃん、川本さん呼び出して、どういう事
なの?」
エミには訳が分からなかった、川本と2人揃って、
エミに引導を渡すつまりなのだろうか?
だが、ミキの口をついて出た言葉は意外なものだ
った
『川本さん、アタシ言いましたよね!エミさんを
見張るみたいでイヤだって』
〖ミキちゃん、それは、、、〗
なんだか川本にしては歯切れが悪い、それにして
も、見張る?とは一体何の事だろうか?
『エミさん、まずこれ見て下さい』
そう言ってミキは自らのスマホを取り出すと、お
もむろにLINEを立ち上げ ”K” とのやり取りを表
示させた
〖ミキちゃんっ!!そ、それは…〗
川本の悲痛な訴えを無視してミキは画面をエミに
見せつけた、、そこには…
(エミさん教習所でナンパされたりしてない?大
丈夫かな?)
”教習所にそんな人いませんよ!何言ってるんで
すか?”
(エミさん教習は順調かな?転んだりはしてない
かな?)
”直接聞けば良いじゃないですか、アタシも完全に
把握してる訳じゃないんですよ”
(エミさん帰り道とか大丈夫かな?夜遅いし、、)
”子供じゃないんだから大丈夫ですよ、そんな不安
を無くす意味でも免許取った方が良いでしょ”
…
「何コレ??」
『見ての通り、エミさんの様子が心配で心配でた
まらない誰かさんがアタシに情報提供を求める
LINEです』
川本は黙り込み、顔を真っ赤にして伏せている
よほど恥ずかしいのだろう
『だから最初に言ったんですよ!スパイみたいで
イヤだって、エミさんアタシと川本さんが付き
合ってるんじゃ?って誤解してたんですよ!』
〖そんな事は絶対にない!〗
『そんな事は分かりきってます!でもエミさんは
動揺して、今日の教習ハンコもらい損ねたんで
すよ!』
「ミキちゃん、それはアタシが悪いの…」
『エミさんは何も悪くないです!自分の好きな人
を信じきれない川本さんが悪いです!』
川本はぐぅの音もでない、といった体で黙り込ん
でしまった
かろうじて振り絞ったような声で
〖ゴメン、、ミキちゃん、イヤな役回りさせちゃ
たね、エミさんも誤解させてすまない〗
何の事はない、エミの事を心配した川本がミキに
現況報告を頼んだのが真相のようだ…
『エミさんが許すならアタシは良いです、でも、
こんな事で大事な先輩との信頼関係にヒビが入
るのは絶対イヤです』
〖返す言葉もない、エミさんも、監視するような
事をしてしまって申し訳なかった、本当にゴメ
ン!〗
川本はテーブルに頭を擦り付けて謝った
「そんな、全然良いですよ、頭を上げて下さい」
川本の低姿勢な謝罪にエミは恐縮してしまうばか
りだった
『良いんですか~エミさん、しっかり怒っておい
た方が良いですよ~今後の為にも…(笑)』
ミキがニヤニヤしながらエミを促す
「もういいの、それよりゴメンねミキちゃん、ア
タシが大きな声出したから、動揺したよね、、
ゴメンなさい」
エミは心からミキに頭を下げたが、ミキはと言う
と
『全然気にしてませんよ、エミさんが転んだ時に
心配はしましたけど』
〖え、エミさん転んだの?大丈夫?ケガとかして
ない?〗
「ハ、ハイ、大丈夫です…」
『川本さんのせいですよ、いらない心配かけるか
ら!』
ミキが追い打ちをかける
〖本当に申し訳なかった!何と言ってあやまった
ら良いか、、、〗
「そんな、、もう過ぎた事なんですから止めて下
さい」
『はぁ~もうハッキリ付き合っちゃえば良いのに
…』
ミキがボソリと呟いた
エミも川本も聞こえてはいたのだが、2人には交
わした約束がある、自分の気持ちを伝えるのも、
川本の気持ちに応えるのも、全ては免許を取って
から!そう決めていた、この決意は揺るがない
エミの気持ちを悟ったのだろう、川本が代弁した
〖ミキちゃん、エミさんにはエミさんの事情と目
標がある、オレ達が口をはさむ問題じゃない〗
ビシッといつもの川本らしく決めたセリフだった
のだが…
『そう言う川本さんがエミさんの邪魔してちゃ元
も子もないでしょう』
と、ミキに言われ返す言葉もない様子だった
「じゃ、じゃあ、この話はここでお終いっ!」
エミの出した助け舟にミキも渋々頷くと
『じゃあ、アタシチョコパフェ追加します、良い
ですよね?川本さん』
どうやら川本に奢らす気のようだ
〖好きな物好きなだけ注文してくれ…(笑)〗
観念した様子の川本がアッサリと白旗を上げた
ふと川本と視線を交わすと、照れた様な表情を浮
かべながらも、どこか嬉しそうにエミを見つめ返
してくるのだった
大切な友達、ステキで大好きな上司、だけど子供
みたいな一面を持っている事が分かって、ますま
す気持ちが増してゆく、、、
『エミさんもデザート頼みますよね??何にしま
す??』
ミキの問いに
「アタシはあんみつ!」
『〖さすが和菓子派!!〗』
他愛の無い会話がたまらなく愛おしく、そして、
このかけがえのない瞬間が残酷にも過ぎてゆく現
実を噛みしめながら(頑張ろう!もっと!もっと
!)と自らを叱咤する
エミの心を覆っていた薄曇りは、いつの間にか晴
れ渡り、いつしか明日へのモチベーションで満た
されていた




