モヤモヤ…
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
あくる日の教習、エミは第二段階も中ほどとなり、
いよいよ急制動の実演となったところだ、急制動は
・速度が40㎞以上出ており
・晴天時は11m以内、雨天時は14m以内で停止
・停止した後に大きくふらついたり、転倒したり
しない事
などが取り決めで、相変わらずテキパキと分かり
やすく説明してくれる水木がお手本を見せてくれた
水木はスタート地点から、普段は見せないぐらいの
加速をつけた後、パイロン2本の間を通過する瞬間
にブレーキランプを点灯させ制動を始めた、11mの
ラインから2m程手前で車体が停止し、見事急制動は
成功、となった
《 今の手順でやってもらう訳ですが、急制動はタ
イヤがロックして転倒したり、と危険が伴う教
習です、まずは40㎞出ていなくても良いです、
一度自分で加速してみてパイロンの位置で無理
だと判断したら、無理をせず、停止線オーバー
しても構いませんので、まずはやってみましょ
うか 》
水木の後に続きエミを含め、同じ時間の教習の3名
が水木の後に続きスタート地点に集合した
《 まずは平岡さんから行きましょうか、急制動の
際のブレーキのバランスはフロントが7、リアが
3ぐらいの配分が理想です、前ばかりかけすぎる
とつんのめってしまうのと、最悪の場合前輪が
ロックして転倒の原因になります 》
《 シフトは3速か4速くらいまで上がると思います
が、停止してからニュートラル戻しで構いませ
ん、まずはやってみましょう 》
平岡と呼ばれた30歳前後と思しき男は、おずおずと
スタートラインでシフトを入れると、おもむろに加
速を始めた、傍目にも40㎞に満たない事は皆が分か
っていたが、水木も特に指摘もせず、淡々と一連の
流れをこなさせていた
《 では次に村上さん 》
村上と呼ばれた若者は、最初から最後まで緊張した
面持ちで急制動に臨んだが、パイロンを通過しても
制動を始めず、停止線も大きくオーバーし、しまい
にはクラッチを切り忘れエンストした
《 では最後、長坂さん 》
いよいよエミの番だ、ここまでの教習で、エミの運
転テクニックは飛躍的に向上していた
普通にコース内を走る分には、何の問題もないレベ
ルまで達している、苦手だった一本橋も今では逆に
得意になってしまった
とは言え、急加速、急制動共に初のれている40㎞
を10㎞も上回る50㎞の速度をメーターで確認出来た
が、代わりに停止線は14mラインすら大きく、およ
そ2m程もオーバーしてしまった
《 長坂さんは思い切りは良いですね、後は急制動
の際にニーグリップで身体を支えていたのも良
いです 》
褒められはしたが、やはり一朝一夕ではいかない事
を三人が三人共に感じ取っていた
《 皆さん急制動を実際に行ってみて、自分が今ま
で認識していたバイクの性能、挙動、そのどち
らもが、限界領域では激しく現れる事を知った
と思います 》
皆が一様に水木の言葉に聞き入っていた
《 平岡さんは、まずは40㎞に達する速度を出す事
、制動停止位置は二の次で構いません、村上さ
んも同じく40㎞に達する事、あと、村上さんの
場合は制動開始位置を意識して制動を始める事
を忘れずに、長坂さんは40㎞は十分に出ていま
したが、逆に速度がやや出過ぎです、おそらく
50㎞以上出ていたと思いますが、速度を出し過
ぎず、今度は制動距離に注意して行ってみて下
さい 》
三人それぞれが、水木に問題点の指摘と課題を与え
られた
《 今日はひたすら急制動の練習をしてもらおうと
思います、私もここで見ていますので分からな
い…があれば随時聞きに来て下さい、、では順
番を守って、安全に練習して下さい 》
そう言うと水木は8の字コースの当たりで自主練か
と思われるターンを始めた
切り返しの際にちゃんとこちらの様子を伺っている
のが見て取れた、教官とは大したものである
エミ達三人は、行儀良く順に並び、前の者が停止し
その場を去ってから練習を繰り返した
なんとなくコツが掴めてきた頃、それは起こった
制動の際、フロントタイヤがロックしてしまい、焦
ったエミはつい、ハンドルを右に切ってしまった
その後はなす術もなくフロントタイヤが横滑りし、
あっけなく転倒してしまった
しばらくは茫然自失のエミだったが、水木の
《 大丈夫ですか!?長坂さん?》
の声で我に返った
転倒した際、背中から地面に転げたエミだったが、
プロテクターのおかげもあり、幸いにも無傷だった
《 どこかケガは無いですか? 》
水木の質問に
「大丈夫です、スミマセン、お騒がせして、、」
と申し訳ない思いで告げた後、エンジンを切って教
習車を起こすと、スタート地点まで押していった
スタート地点では平岡と村上が心配そうに”大丈夫
か?”と声をかけてきた
「大丈夫です、スミマセンご心配おかけして、、」
と笑顔で返したエミだったが、教習中での初の転倒
と言う事もあり、実はかなり動揺していた
水木は三人をスタート地点に留め置き、説明を始め
た
《 フロントブレーキのみを強烈にかけすぎると、
フロントタイヤがロックし、転倒につながりや
すいです、逆にリアタイヤがロックしても、フ
ロントタイヤ程は挙動が崩れやすくはありませ
ん、が、どちらも危険な挙動である事には変わ
りありません、時と場合、場所と状況にもよっ
て変わってきますが、基本的にはフロントとリ
アのブレーキは同時使用が原則ですね 》
そう言うと自らの教習車に跨りエンジンをかけた
《 まずはフロントのみでブレーキをかけて見せま
す 》
そう言うと水木は急制動ばりのスピードで走り出し
た、しっかりと加速した後、パイロンを通過した所
で強烈にブレーキをかけた、すると車体は前輪側へ
激しく車体を沈み込ませ、急激に前傾した
それでもタイヤをロックさせずに止まる事が出来る
のは水木のテクニックによるものだが、教習生の三
人にはまだ理解出来てはいないだろう
《 ご覧のようにフロントのみだと急激に前傾して
しまい大変危険です、ニーグリップが甘いとロ
ックしなくても転倒の危険があります 》
そう言うとまたスタート地点に教習車をつけ、また
発進の気配を見せる
《 次にリアブレーキのみで行ってみますね 》
そう言うが早いか水木はまた教習車を加速させた
パイロンを通過した後”キャアアアアアアッ”という
甲高いスキール音を響かせると、リアタイヤがロッ
クし煙を上げた
やや車体を横滑りさせた後、停止線で止まった水木
が戻ってくると
《 わざと少し派手めにやりましたがリアタイヤが
ロックするとああなります 》
《 こうならない為に、、》
言いながらまた教習車を発進させた水木は、40㎞は
楽にクリアしているであろう速度でパイロンの間を
通過すると、急制動を開始し、見事11mラインの1
m程手前で停止した
分かりやすくやって見せてくれたおかげで、フロン
ト、リア、それぞれのブレーキの特性がよく理解出
来た、それは平岡、村上の両名も同じだったようで
しきりにフロントブレーキレバーとリアブレーキペ
ダルを握ったり踏んだりしている
《 では練習を再開して下さい、長坂さんはちょっ
と話があります 》
水木に呼ばれたエミは、練習場の脇に教習車を停車
し、水木の話に聞き入った
《 初転倒ですね、ショックでしたか? 》
水木に問われ、エミは正直に答えた
「ハイ、ショックでした、思い上がりかもしれない
けど、自分がバイクで転ぶ程の運転をするとは思
ってもいませんでした」
言葉の通り、エミはバイクの免許を取得した後も、
むやみに速度を出して飛ばした運転などする気もな
かったのだ
《 そうですよね、勿論誰もが自分が転ぶ事など、
あまり想定していないと思います 》
《 ですが今回の転倒も、もし一般道だったら?後
続に車がいたら果たして停止出来たか?プロテ
クターをしていなかったら、果たして擦り傷す
らなく済んでいたか?、そのあたりの事を心に
留め置き、練習してみて下さい 》
「ハイ、、、」
水木の言葉に力なく返事したエミだったが、逆に水
木は優しく
《 ケガが無くて本当に良かった、外傷はなくても
どこか捻ったり、傷めたりしているかも知れな
い、痛みが出たり、何か異常があったらすぐ言
って下さい 》
水木の優しさが身に染みる
「ご心配ありがとうございます、気をつけて、教習
に臨みます」
《 長坂さんは集中していれば大丈夫です、あなた
は運転センスがあると私は思ってますよ、では
、練習に戻って下さい 》
”集中…”図星だった、ずっとモヤモヤしている、言
うまでもなくそれはミキと川本のLINEの件だ
(今は忘れよう!集中!集中!)
エミは教習に全集中しようと心に決めた
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




