意外な一面…
トヨタ駅に着き、続き階段からいつものスタバの方
へ歩きつつ、スマホでミキに連絡を入れた、が、視
界の中でミキがスマホを手にして画面を見るのが見
えた為コールを止めた
「ゴメンね~待たせちゃった?」
『いえいえ、さっきついた所ですよ』
〈原付でもかなり便利そうだよね~、ミキちゃん見
てると免許取った後の自分の生活に希望が持てる
ね♪〉
『早く免許を取って皆でお出かけしたいですね♡』
「ホントホント!その為にも頑張らないとね…」
などと話しながら例の化粧品店まで上がって行った
⁅ いらっしゃいませ!お三方お揃いで ⁆
磯山は嬉しそうだった、まだ3回目なのだが印象深
かったのか、すっかり常連客のような扱いだ
「みんなそれぞれテーマが出来ちゃって…」
⁅ あ、それなら前原も呼びますね ⁆
磯山はいそいそとバックヤードに声をかけると前原
を伴って戻ってきた
⁅ ではご用件をそれぞれ伺いましょうか ⁆
「じゃあアタシは先に道具見てくるから二人が先に
どうぞ」
二人に先を譲るとエミはメイク下地のコーナーへ向
かった
探したかったのはヘルメットの内装に移りにくい
化粧下地、とは言えどういった物が良いのか今イチ
ピンと来ないのであった
ファンデーションのコーナーで注意書きとにらめっ
こしていると、いつの間にか店長がとなりに居た
❝ いらっしゃいませ、たしかエミさん でしたよ
ね? ❞
店長はエミの名前を口にした
「アタシの事ご存じだったんですね?」
❝ 須賀から良く聞いてます(笑)メイクもバイク
もお仕事も、趣味のスイーツも頑張ってる子、
だと ❞
(須賀はそんな風に思ってくれていたのか?)
エミは嬉しくなった
❝ 今日はどういった内容の物をお探しですか? ❞
店長に問われ、エミは素直に自分の疑問をブツけた
「最近バイクの免許の教習に通ってるんですが、免
許を取得した後もヘルメットを被る際のメイクに
悩んでまして…」
❝ あぁ、なるほど、いくつか気を付けるべき点が
ありますね ❞
❝ さしずめメイク移りと崩れ、そもそものメイク
の方向性、といった所ですか? ❞
エミの悩みは完全に分かっている様子だ
「そうなんです、ヘルメットの内装にファンデーシ
ョンが付いちゃったり、崩れちゃうから後で直し
が大変だったりと、、結局どういった形にするの
が良いのか?と、、」
❝ そもそもの私の今のメイクがそれ対応、と言い
ますか、私もバイクに乗るのでメイクもそれ用
にしてるのですが ❞
なんと!?店長さんもバイク乗りだという事だった
改めて店長のメイクを見ると、濃すぎない目元のメ
イク、控えめながらししっかりと引かれたアイライ
ン、そして、全体的には薄めのナチュラルメイク…
❝ まず第一に、ですがファンデーションとパウダ
ーはウォータープルーフです、ヘルメットは蒸れ
るので汗ですぐメイクが崩れちゃいます、次に、
パウダーファンデーションは持ってるかしら?
❞
店長に尋ねられ、エミは
「有ります」
と答えた、店長は満足そうに
❝ それがあるなら出先でのメイク直しはほとんど
心配いらないかな、あとはメイクの仕方次第だか
ら ❞
それからエミは店長に、気をつけるべき事、おスス
メのコスメ、道具などを教わり、最後に
❝ エミさんも晴子さんもミキさんも、今日はこの
後お時間はありますか? ❞
と問われ
「三人とも教習までは1時間以上あります」
と答えると
❝ じゃあ十分ね、あちらへ行きましょうか ❞
と、店長に引き連れられてエミは2人が相談してい
る鏡台まで連れてこられた
⁅ あ、店長、おつかれさまです ⁆
❝ こちらのお客様はどういったご相談? ❞
⁅ こちらのお客様がメイクの狭間のボカし方を知
りたいとおっしゃるので、今仕上げた所です ⁆
晴子の首元の仕上がりをマジマジと見た店長は
❝ うん!いいわね ❞
と上々の反応を見せた、とても嬉しそうな磯山の表
情が印象的だった
❝ 須賀から話は伺ってます、お三方はバイクに乗
られる、という事でメイクの悩みは当面共通かと
思います、そこで実際にメイクを体感してみても
らい、説明したい、と思います ❞
❝ えぇと、そちらはミキさん、だったわね? ❞
突然名前を呼ばれてミキは動揺していた
『ハ、ハイ、、』
❝ ミキさんの今日のご相談内容は何だったかしら
?❞
店長に問われ、ミキはおずおずと
『アタシ、いつもメイクが派手になり過ぎちゃうん
です、それを、なんとかしたくて…』
❝ 確かに、ちょっとメイクが濃い目ですね、ステ
キなお顔立ちなのに勿体ないです ❞
ミキは顔立ちをホメられたが、メイクは駄目出しを
受け、なんとも言えない表情になった
❝ でもメイク自体が未熟な訳ではないですね、キ
チンと仕上がってはいます、ただ、ご自身の顔
立ちとメイクが合ってないだけですね ❞
❝ エミさんはお時間大丈夫と仰ってたけどお二方
は大丈夫かしら? ❞
〈大丈夫です!〉
『大丈夫、、です、、』
❝ では皆さんのお悩みを一気に解決したいと思い
ます、ミキさんメイクを落として全部やり直して
もよろしいかしら? ❞
『ふぁ、は、ハイ!!』
なんだかスゴイ事になってきた!しかしエミは店長
のメイクに俄然興味がわいていた
それは晴子もミキも同様の様で、2人とも驚きより
もワクワクが勝る表情をしていた
❝ あら、メイクなんて全く必要ないぐらいキレイ
な肌ですね ❞
メイクをすっかり落とした後、店長に褒められミキ
はニコニコが止まらない様子だった
❝ エミさんはヘルメットを被る際のメイク、晴子
さんはメイクの際の自然な仕上げ、ミキさんは派
手になりすぎないメイク、でしたね? ❞
『〈「ハイ!」〉』
全員が声を揃えて返事した、三人はおろか、いまや
磯山や前原まで店長の一挙手一投足を固唾を飲んで
見守っている
❝ まずベースメイクですが、皆さんはバイクの教
習に通ってるという事で、ヘルメットを被りま
すね、この中でどうしてもフルフェイスを被り
たい方はいますか? ❞
これには誰もが首を振った
❝ 懸命ですね、でももしフルフェイスのメイクで
悩んだら、また別途ご相談下さい ❞
❝ では、ジェット型ヘルメットを想定した場合で
すが、まず気を付けるべきは日焼け、あと汗対
策ですね、ファンデーションはウォータープル
ーフが大前提です ❞
そう言いながら店長は下地を塗り込んでゆく
❝ まずおでこ、Tゾーン、そして両頬と顎 ❞
言いつつ店長はクリームを言った箇所にチョンチョ
ンと少量乗せたかと思うと、丁寧な手つきで塗り伸
ばしてゆく
❝ 決して力を入れすぎず、均等に、丁寧に、そし
て、、❞
そう言うと店長は両手の親指をミキの目元に、そし
てほかの指を両頬から顎にかけてミキの顔を包み込み
❝ このラインが下地の基本になります、なので分か
れ目はこのラインに沿ってボカしてゆきます ❞
「あ、このラインって、、」
❝ そう、ヘルメットのライン ❞
そこで店長はミキの顔を包み込んだ手を優しく動かす
と、丁寧に分かれ目を仕上げていった
❝ ミキさんは少しお顔が首元より色黒だから丁度良
いですね、逆に晴子さんみたいに首元が顔と同じ
ように白い方は分かれ目が目立ってしまいやすい
です ❞
❝ 晴子さんの場合は自分の肌色にごく近いファンデ
ーションを選ぶと良いでしょう ❞
そう言いつつファンデーションをはたく店長は、見
るも鮮やかな手つきでどんどんメイクを進めていく
磯山と前原も店長の手技から目が離せないようだ
まさに”店長オンステージ”といった状況だった
❝ このように、下地、ファンデーションと、ウォ
ータープルーフの物を使用して崩れにくい下地
を目指します ❞
それにしても手際が良い、エミ達三人に説明しなが
らだと言うのに、物の2分程で下地を終えてしまった
❝ 最後にこれです ❞
そう言うと店長は幅の広い筆を取り出した
❝ カブキブラシですね、これでファンデーションの
際を自然にボカしていきます ❞
ササッとカブキブラシでヘルメットラインの周りと
顎のラインをボカしてゆく、一切淀みの無い手つき
で1分弱で仕上げてしまった
❝ どうです?こんな感じのボカし方ですが、分か
りましたか? ❞
〈さっきアタシも使ってもらいましたが、すごくソ
フトタッチですよね?〉
❝ そうですね、あまり強く当てると最悪ブラシの
ラインが出てしまいますので、極力ソフトに、
このぐらいのタッチで ❞
と言うと店長は晴子の腕にブラシを当て、軽く動
かした、エミにも同様にすると
❝ 要は”慣れ”ですが、何回か使ってみるとコツが
掴めると思います ❞
店長の言葉にエミ達三人も、磯山と前原すらが頷
いていた
❝ ではアイメイクに入って行きます ❞




