素の川本
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
会計の段になって
「今回はアタシが払います!」
と断言したのだが川本に
〖んなダッサイ真似出来ないよ!奢らせといて〗
と須賀の真似をされてしまい、スゴスゴと引き下
がった、よけいな話までしてしまったものだ、、
ヘルメットを被りながら
〖そういやコレ〗
と川本からバイクの本と雑誌を3冊渡された
〖そんなにマニアックな内容じゃないからスッ
と読めると思うよ〗
とのお達しだ
「ありがたくお借りいたします!」
と平伏する真似をして受け取った
〖あと、バイクや運転の事で分かんない事があ
ったら何でも聞いて〗
と言われ
「でも、、自分で頑張らないと…」
川本は ”アハハッ” と笑い
〖分からない事を人に聞くのは甘えとは違うよ
それにね、オレは聞かれればミキちゃんにだ
って晴子さんにだって答えるし、それが
”素のオレ” だから〗
と言われ納得してしまった、確かに川本に聞け
なければ須賀に尋ねる、結局は同じなのだ
〖あ、そうだ!エミさん〗
「ハイ??」
〖良かったらLINE交換してくれない?〗
「え???」
〖そんな構えなくても良いよ、浮ついた話題は
免許取るまで禁止!って事で、バイクで分か
んない事は聞いてくれれば良い〗
「分かりました!」
エミはすぐさまスマホを取り出しQRコードを
表示した、川本がスキャンすると画面にセロー
の画像のアイコンが現れた
名前は ”K” 言うまでもなく川本のKだろう
〖んじゃこれで、帰ろっか…〗
「ハイ!」
〖しっかり捕まっててね!〗
いつもの言葉の後に静かにセローが走り出した
川本の背中は暖かく、風を切って走るもうすっ
かり慣れてしまったこの感覚も、ホンの1ヶ月
前までは縁もゆかりもない世界の物だったのだ
と改めて思い出す
(ホントに恵まれてるなぁ…)
不意にそんな思いが胸を突き上げ、気づくと涙
が流れていた
慌ててバイザーを上げて涙を拭う
川本もミラーごしにその様子に気づいたのか、
しきりにエミを気にかけていたようだが、不思
議と話しかけてはこなかった
今のエミにはその優しさが心地よかった…
駅に着くと川本は
〖エミさん大丈夫??〗
と尋ねてくるのだが、何とも言えない今現在の
満たされた気持ちを何と表現したら良いか分か
らなかった
「大丈夫です、、スミマセン、泣いちゃって、
でも」
〖???〗
川本は心配そうな表情だ
「これは良い涙です…」
〖良い涙??〗
「そう、、やりたい事、なりたい自分、知らな
かった世界、頑張ってる自分、そんな事を、
ふと思いやってたらなんか涙が流れてました
…満たされてるなぁ~って、、、」
「お祝いしてもらって有難うございました、送
ってもらって間に合った事も、とっても嬉し
かったです!」
〖いえいえ、また残業で危なかったら言ってよ
!必ず間に合わせて見せるから!!〗
そう言って川本は”ドン”と胸を叩いて見せた
エミはそれには答えず、微笑みを返しただけだ
った
川本はエミが望めば毎日だって送り迎えしてく
れるだろう、だがそれは、甘えなのだ
例え過失がない不可避の残業っだったとしても
自分の担当業者は自分で責任を持つ!
仕事の上でも浮つかない!教習があろうとキャ
ンセルしてでも自分の仕事はこなしてみせる
そういう決意がエミの返事を曖昧な物にさせた
〖じゃあ長く引き留めても悪いから、気をつけ
て帰ってね〗
「ハイ!明日また会社で!今日はごちそうさま
でした」
〖んじゃおやすみ~〗
「おやすみなさい」
そう言うと川本は颯爽とセローのアクセルを吹
かし走り去って行った
エミはなんだかまだ夢の中にいるような感覚で
自転車を漕いでいたが、頬を撫でる風が”これ
は現実”だと言う事を感じさせた
家に着いて着替えを済ませ、風呂の自動を入れ
た際にようやくスマホがミュートな事を思い出
した、恐る恐るLINEの通知を確認すると、予想
通りすごい数の通知がきていた
現在時刻21時50分…さて何と言ったものか、、
とりあえず”作戦会議”に挨拶する
「今帰りました、ただいま~」
〈おかえりエミちゃん!どうなった?残業だっ
たでしょ??〉
『大丈夫でしたか?間に合いましたか?キャン
セルしちゃって落ち込んでたんじゃ?』
【おかえりエミちゃん…】
皆がそれぞれの反応を示す、エミは端的に
「教習には間に合いました、そして1段階の見
極め受かりました!」
〈おめでとうエミちゃん!〉
『おめでとうございます!』
【お~やったね!おめでとう】
「ありがとう皆さん!」
皆がそれぞれ祝福を述べた後、当然の疑問が
エミに投げかけられた
〈でも残業だったんでしょ?よく間に合った
ね?〉
『ホントですよ~アタシ変わりましょうか?
って係長に言いましたもん』
「実は、、ね、、」
エミは川本に送ってもらった旨、その後食事
に行ってこの時間になった事を端的に、大事
な部分はボカして説明した
『何それ~カッコ良い!!』
〈やっぱ素敵ね主任さん…〉
【主任さん??】
須賀は川本の事を知らない、当然の反応だろ
う、するとミキが
『うちの会社の主任さんで”Kさん”っていう
人がいるんですが、仕事も出来て上司の信
頼も厚く、さらに人あたりも良いナイスガ
イです』
〈そんでもってエミちゃんの想い人です〉
「ハルちゃん!?」
晴子に図星を突かれてエミはあせった、が、
『何を今さら照れてるんですか?バレバレで
すよ、とっくに』
と、いう事らしい…知らぬは本人のみだった
ようだ
『ちなみにアタシが売ってもらう予定のセロ
ーのオーナーさんです』
【なるほどね、大体の状況は分かった…w】
かいつまんで説明したのだが、どうやら良い
雰囲気だったのは話の流れで分かってしまっ
たようだ
『じゃあもういっそ付き合っちゃえば良いじ
ゃないですか』
「なんて言うか、今はダメなの、、ちゃんと
教習もやり切って、メイクも納得いくまで
努力して、自分自身にちゃんと自信が持て
る、そういう状況で、ちゃんと気持ちを自
分で伝えたいの、流されて、とかなんとな
く、っていうのは絶対にイヤ!!」
〈良いんじゃないのそれで…〉
晴子は理解を示してくれたようだ
【エミちゃんが自分で”こうしたい!”っての
がちゃんとあるならそうするべきだろうね】
須賀もエミに理解を示す
『へ~皆さん分かるんですね?アタシは好き
な人ならいつでもOKなんですけどね…』
ミキが不満を漏らす、と
【それはそれでまたアリなんじゃない?ミキ
ちゃんの時はそうすれば良いさ、結局本人
がどうしたいか、だよ】
〈そうそう、結局は本人同士の問題だからね
、でも…〉
晴子は含みのある言い方をした後続けた
〈今後どうなったか、決着が着いたら教えて
ね、勿論ただの興味じゃなくて友達として
、ね〉
「うん、何がどうなるか分からないけど、そ
の時にはちゃんと報告するね」
『どうなろうとエミさんは大事な先輩でスイ
ーツ仲間なんだから、これからも一緒です』
「そうだね、ミキちゃん、免許取ったら皆で
ツーリング行こうね♪」
『そうですね、その時は須賀さんも一緒に行
きましょう♡』
【いいね、是非ご一緒させて頂こうかな、そ
の時はオレの一番の愛車に乗って行こう】
〈須賀さんの一番の愛車って何なんですか?〉
晴子の問いに須賀は思いがけない答えで返し
た
【せっかくだからその時までのお楽しみ、っ
て事でナイショにしとくよ】
『え~知りたいです~』
「ホント!興味深いね」
ミキとエミは知りたがるのだが、晴子は
〈分かりました、じゃあその時までの楽しみ
にしておきます〉
”お風呂がたまりました”
アナウンスの声が流れた後、皆に風呂に入っ
てくる旨を伝えて、エミは風呂場に向かった
自分の胸にハッキリと「こうしたい」という
目標がある、今はこれをやり遂げる事に全集
中するのだ!川本も応援してくれている
・免許を取得する
・川本とツーリングに行き、お気に入りの和
菓子を入手して須賀に届け今までのお礼を
述べる
そして今日、新たな目標が加わった
・皆でツーリングに行き、須賀の愛車を見せ
てもらう
そして現在最大の目標が、、、
・川本に気持ちを伝える!
毎日自分の未来に期待している今の自分が本
当に誇らしく思える
またも頭まで湯船に浸かると10秒ほど沈んだ
後浮上する
「ぷはぁっ!」
(ノボせない!浮かれない!)
自分自身に言い聞かせる、まだ途中!何もや
り切っていないのだ、
自身の両頬をパンパンと両手で打つと、勢い
良く湯船から上がった
明日の教習は学科のみ、しかも時間が少し開
いている、エミはあの化粧品店に寄って行こ
う、と思っていた、そろそろ自身のツーリン
グ仕様のメイクとそして本気仕様のメイクを
完成させたいと思っているからだ
免許を取って川本と行くツーリングが、その
決戦の日になるだろう、今の自分に足りない
部分を、あの店長さんなら導いてくれる
エミはそう確信していた
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




