絶対受かるっ!!
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
自動車学校までの道は案の定渋滞していた、が、川
本は
〖普段はしないんだけどね、、〗
と前置きをして、すり抜けをしながら時間を短縮し
ていった、その道すがら
〖一本橋が苦手なんだったよね?〗
不意に川本に尋ねられ
「ハイ、、あまり得意ではないです…」
と答えると、ある信号の少し手前で止まった川本が
〖見てて!〗
と言い、白線の上を信号まで低速走行し出した
〖こんな感じにゆっくりクラッチミートした後は、
アイドリングのみでゆっくりと走行して、と〗
〖どうかな?感じわかった?アクセルは開けなくて
良いからアイドリングの惰性だけで、そして早す
ぎるようならクラッチを切っちゃってリアブレー
キで調整すれば良い、あとはバランスだけ気を付
けていけばきっと大丈夫!〗
丁寧な解説と実演で、ボヤッとしていた一本橋での
操作の仕方がはっきりとイメージ出来た
「ありがとうございました!すごく分かりやすかっ
たです」
〖それなら良かった♪見極めまでに何周か走れるハ
ズだから、そこでやってみて〗
「ハイ!」
(こんな事があって良いのだろうか!?)
地獄に仏とは正にこの事で、教習に間に合いそうな
どころか苦手としていた一本橋のコツまで掴めつつ
あった、心の底から川本に感謝しつつ、改めて、自
分はこの人の事が好きなのだと再認識した
(でも何でこんなに良くしてくれるんだろう?もし
かして…)
などと都合の良い妄想が頭をもたげてくる、、、
そんなこんなの複雑な心境のエミを乗せたセローは
順調に自動車学校に到着し
〖着いたよエミさん!急いで!〗
時間は18時45分!しっかり間に合ったのだ
「あ、あの、、本当にありがとうございました!」
〖帰りの足はあるの?〗
川本に尋ねられたが
「教習所のバスが駅まで行ってるので大丈夫です」
これ以上川本に甘える訳には行かなかった、この上
教習時間まで付き合わすなどエミにはとても出来な
い
〖じゃあ頑張って!応援してる〗
「ありがとうございました、絶対受かります!」
〖そうだ!エミさんは絶対受かるっ!〗
川本に深々と頭を下げ、エミは受付に向かった
原簿を取り出し、乗車券を発券していると、例の事
務員さんが
<ギリギリでしたね~、ところで彼氏さんですか?
(笑)>
「え?えぇ?!」
<素敵な彼氏さんですね、バイク乗りってところが
また良いですよね♪>
と口に手を当てながら囁いてきた
「彼氏では、ない、、です、、、」
<あら、そうなんですか?2人乗りで来るからてっ
きり彼氏さんかと、、>
「会社の上司なんです、教習に遅れそうだ、って
話したら送ってくれて」
<な~んだ、付き合う前ってだけですね、時間の問
題みたい(笑)>
よほど良い感じに見えたのだろう、確かに自分でも
”脈ありなのでは?”とは思ってはいるのだが、、
「でも、間に合って良かったです、今日は1段階の
見極めなんです」
<もうそんなになるんですね!?頑張って下さい!
落ち着いて乗ればきっと大丈夫です>
「ハイ!絶対受かります」
事務員さんの激励までももらい、エミはメラメラと
闘志が沸いてくるのを感じた
と、そこへ、、
<あ、そうそう>
事務員さんが声をかけてきた
<お二方には内緒の方が良いですか??>
川本の事だろう、エミは頬が紅潮するのを感じた
「あ、出来たら、ナイショで、お願いします…」
<承知しました、頑張って下さいね♪>
どっちの意味だろうか??と、思いながらも、今
は目の前の見極めに全力を注ぐ事にした
プロテクターを装着しながら、必要事項を思い出
していた
1段階の見極めでは第1コースを走行して教官が採
点する、この中に坂道発進、クランク、S字、ス
ラローム、そして一本橋がある
正直エミはバイクの適正に関しては全く問題はな
いと自分でも思っていた
アクセルワーク、シフトチェンジ、車体のバンク
によるコーナリングなど、これといってコツを掴
むのに苦労はしなかったので、これも一重に高校
時代の陸上部という部活動で培った運動神経によ
るもの、だと思っている
だが、陸上ではあまり気にも留めなかった”バラ
ンス”がバイクの運転にとっては重要なのだ
この部分を磨いてこなかった為、一本橋で苦労
しているのだろう
《 19時開始の普通二輪(中型)教習の方~ 》
ついに呼び出しがかかった、教官に続いてコー
ス入りする、お決まりの乗車前点検も、今日は
特に念入りに行った、というのも、川本のアド
バイスで
〖ミラーの調整は特にしっかりやっておいた方
が良い、しかもこれは教官に見られてるから〗
というものがあった為だ、無論ほかの部分に関
しても手を抜く事はなく、慎重に確実に行った
エミの他に知った顔の男子が1人と、初めて見
る年下ぐらいの男子がこの時間の教習生のよう
だ、お馴染みとなった水木は
《 ではエンジンをかけてそれぞれ見極めのコ
ースを走行していて下さい、気になる箇所
練習したい点は特に復習しておくように 》
とのお達しがあった、エミは早速コースへ出よ
うとしたのだが
《 あ、長坂さんから行きましょうか、最初の
1周は僕が後追いで見極めコースを走りま
しょう、気になった点は都度説明しますの
で 》
「ハイ、わかりました」
どうやら最初は水木が伴走して見極めにあたり
気になる点を指摘してくれるらしい
《 それではコースを回りましょうか、覚えて
ますよね?》
「ハイ!大丈夫です」
力強く返事をしてエミはコースに走り出した
外周の外回りを半周した反対側に坂道発進教習
用の坂路がある、問題なくそこまでの道のりを
走行し、既定の白線で停止した
(落ち着け、坂道は大体5000rpmぐらいでク
ラッチを繋いで、)
思惑通りにクラッチミートさせると車体が前に
進む力を感じた
(ここでブレーキを離す、、)
スムーズな坂道発進が出来た、思わず笑みを浮
かべながらバックミラーを見やると
水木もウンウンと頷いていた
さらに1/4 周回程回るとクランクコースの入り
口がある、どうやら入校したての教習生の自動
車らしくクランクに苦戦しているので、入り口
の停止線で待機した
横に並んだ水木が
《 随分上達しましたね!坂道発進、文句なし
でしたよ》
と褒めてくれた、滑り出しは上々と言えよう
《 お、空きましたね、では行きましょうか、
あせらずゆっくりで良いですよ 》
水木の指示通り、エミはあせる事なく、アク
セルもほんの少し開ける程度でクランクをク
リアした
続くS字ゾーンでも同じ要領で通行し、タイ
ムも走行ラインも文句なしだと自己評価した
そしてついに、エミにとってはコース最大の
難関「一本橋」へたどり着いた
停止線で止まっている時に水木が
《 長坂さんは一本橋が苦手ですよね? 》
と聞いてきた、エミは正直に
「そうなんです、どうしてもバランスが崩
れそうでついアクセルを開けてしまうん
です」
《 ほとんど半クラ状態で走行すれば問題
ないと思いますが、バランスが崩れそ
うな時に焦ってアクセルを開け過ぎて
しまわない事が大事ですね、アイドリ
ングでも完全につないでしまうと早す
ぎるくらいなので、リアブレーキと半
クラをうまく使う事が大事です 》
驚いた事に川本のアドバイスと酷似してい
た、ただ最後に
《 後は視線ですね、下の橋ばかり見てい
るとかえって脱輪しやすいです、普段
走行している時の前方視線を、若干手
前に引いて視界の隅で橋を捉える、ぐ
らいの視線が良いです 》
「わかりました!気をつけてみます」
水木に返事して頭の中で今の内容を反芻する
・アクセルは開け過ぎず、アイドリングで
・スピードが出過ぎたらクラッチとブレーキ
で調整
・視線は普段より、やや手前下
「よし!」
意を決してエミは一本橋へ入った、スタート
は順調だ、だが速度が若干出過ぎている、ブ
レーキをかける、と同時にクラッチも握り込
む、推進力を失った車体がフラつきかける前
にクラッチを繋いで推進力を与える
(これだ!!!)
エミの中で閃くものがあった、徐行のコツ、
とでも言おうか、今まで悩んでいた事が氷解
した気分だった、水木のアドバイスで視線を
少し先に向けたのも大きい、今までは橋の幅
の恐怖に負けて下ばかり見ていたのだ
無事橋を通過し終えるとタイムが表示される
”9.6秒”今までで最高のタイムだった
(やった!やりましたよ川本さん!!)
エミは心の中で川本に感謝した
スタート地点に返ってくると水木が
《 やりましたね、見事に一本橋クリアです
よ、全体的にも文句なしです、あとは時
間まで自主練でコースを走るかここで発
進や停止の練習をしててもらえますか?
40分のここに集合して下さい、そこから
見極めです 》
「わかりました!」
エミが返事をすると、水木はあとの二人の指
導をするべくコースに出て行った
ついにコツを掴んだ!エミは集合場所で徐行
の練習を始めた、クラッチを繋いでは勢いを
殺す為リアブレーキを踏む、フラつく前にク
ラッチを繋ぎ車体に推進力を与える
(これだ!これだったのだ!)
間違いない手応えを引っ提げて、エミは満を
持してコースへ出た、坂道発進、クランク、
S字もなんのその、一本橋へたどり着く
(さぁいくぞ!)
自らを鼓舞し、一本橋へ挑む発進は順調、ス
ピードも悪くない、リアブレーキを使い、下
を見すぎず、、、、
通過、、タイムは!?
”11秒2”
(やった!)
これ以上ないタイムだ、一本橋への不安も解
消し、逆に得意科目へと変貌を遂げたかのよ
うだ
爽快な気分でゴールへ戻り、少し休憩した
と、そこへ2人への指導を終えた水木が帰っ
てきた
《 すごいですね、完全にコツを掴んだよう
だ11秒2なら文句なしですよ 》
どうやらエミのタイムを確認していたようだ
「ありがとうございます、教官のおかげです
ね」
《 あとは時間まで、コースの復習とつまら
ないミスをしないように動作の復習をし
てて下さい、あ、それと 》
「ハイ?」
《 長坂さんはたまにウィンカーの消し忘れ
があるので見極めでは特に注意して下さ
い、それと出来ているから言いませんで
したが一本橋ではニーグリップが大事で
す、お忘れなきよう 》
「ハイ!ありがとうございます」
《 その調子のままならハンコは確実です、
頑張って!》
と言って水木はコースに戻って行った
見ると最初に年下かな?と思った教習生が一
本橋で指導を受けていた
(だよね、一本橋って難しいよね、、)
水木以外にも教えてくれる人間が複数いてく
れる自分の状況に感謝しつつ、今度は本番の
つもりでコース走行に臨んだ
(エミさんは絶対受かるっ!)
川本の言葉が頼もしく思い出されていた
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




