救世主参上!?
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
シミュレーターは3台しかなく、エミ達三人で埋ま
ってしまった、教官も三人の事情は良く分かってい
るようで、雑談を交えながら終始和やかな雰囲気で
進められた
シミュレーターをこなすのは、どこか粛々としてい
て、ある意味流れ作業に似た風情だった
趣旨としては、車体のバンクと速度の関係の把握、
といった所だろうか、実際にバイクに乗る感覚とは
違いが有る為、しょせんはゲーム感覚、と言ってし
まえばそれまでなのだが、、、
『ぶっちゃけちゃうとツマらないんですよね~』
「確かに実車で走行する方が全然為になる気がした
よね」
〈まぁでも、雨の日の滑りやすい場所とか、路駐と
かは為になったじゃない〉
「ハルちゃん路駐の車の前で停止して1人だけ事故
らなかったもんね(笑)」
〈路駐してあったら止まった方が良いかな~って〉
晴子は今回のシミュレーターで唯一事故を起こさな
かった教習生だ
『これかわした人初めて見たって教官が言ってまし
たもんね(笑)』
三人の中で不評なシミュレータも終わり、今後は一
段階のうちは実車での教習のみとなる
『でも、一段階の見極めの要点を教えてくれるなん
て知りませんでしたね~』
〈須賀さんの言った通りの所が一発落ちだったね〉
「コース図が赤ペンだらけになっちゃった(笑)」
そう言いながら見せたエミのコース図には表の1コ
ースにも裏の2コースにも”ここで1速に入れておく”
などの書き込みが「これでもか!」と赤ペンで記さ
れていた
『見極めどころか卒検のコツまで伝授してくれてま
したもんね』
和気あいあいと教習に臨む三人だった、判で押した
ように同じタイミングで教習を進める三人だったが
1段階の終わり頃には、各々がなんやかやと用事にみ
まわれ教習の進み具合に少し差が出てきた
エミは2人に比べ特に何の用事にも追われる事なく、
順調に今日、1段階の見極めを迎えていた
3時の休憩でエミが持参したプレミアムどら焼きを
皆で頬張りながら
『エミさん今日1段階の見極めですよね?頑張って
下さい!』
〈エミちゃんかなり上達してるから大丈夫!〉
二人に励まされエミも
「うん!コースも完全に覚えたし大丈夫!昨日も
このコースは走ったから、一本橋だけ不安だけ
ど、、」
口にした通り正直一本橋は苦手だった、既定の7秒
以上かけて通過する、のがいつもギリギリなのだ
須賀などは
【あれは緊張するよね~、今なら2~3分ぐらいい
けそうだけどw】
と異次元な事を言っていた、正直参考にも何もな
らなかったのだが、、
などと話していると
〖やぁ三人さん〗
川本が現れた
「買ってきましたよ~ハイどうぞ」
エミはいそいそと川本の分のどら焼きを二つ手渡
した
〖いいの?2個も!?〗
川本は驚きの声を上げたが、エミはニッコリと笑
顔を返した
横で晴子とミキがニンマリと2人を見やっていた
のを当人たちは気づいていない
『エミさん今日1段階の見極めなんですよ!』
〖お~~順調だね!そりゃ頑張らないとだね、コ
ースはもうバッチリ?〗
〈今話してた所だけどしっかり覚えてるみたいで
すよ〉
〖ミスコースと一本橋の脱落は一発落ちだったよ
ね、気をつけないとね〗
「実は一本橋が苦手なんですよね、、、、」
『大丈夫ですよ~練習でもなんとか7秒クリアし
てたし』
「3回に1回は時間が足りなかったのよね…」
〈そんなに気負ってちゃよけい良くないから、ホ
ラ!川本主任も励ましてあげて下さいよ〉
〖普段教習で出来てる事も見極めとなると、急に
難しい事に思えてくる、でもね、最悪落ちたと
しても次頑張れば良いさ、二輪だとストレート
で行かない奴の方が多いんだから〗
〈『そうなんですか?』〉
〖そうだよ、二輪の教習で見極め落とすなんてザ
ラだよ、俺だって2段階の見極めは1回落ちたし
ね〗
「そうなんです、か?」
〖うん、まわりには4回とか落ちてる奴もいたよ〗
『うわぁ~アタシが何故か緊張してきた』
〖まぁソイツはシフトアップの時にアクセル戻す
事すら出来てないような奴だったけどね…〗
「そっか~じゃあアタシなんか2~3回は落ちるか
も」
〖いや、普通に出来てれば問題ないはずだよ、そ
うじゃなくて、落ちて元々って開き直っちゃえ
ば良いさ、って事、次がある!ってね〗
〈いいかもね、その方が、緊張しなくて済みそう〉
〖ミスコースだけはつまらないからね、コースだ
けはしっかりと!〗
「ハイ!」
などと話していたらアッという間に休憩時間が終
わってしまった
〖教習は何時から?〗
「19時です」
〖そっか、頑張って!応援してる〗
「ありがとうございます」
いそいそとテーブルを片付け各々のデスクに向か
った、まずは目の前の仕事に集中集中!
事件は午後の4時を回った頃に起こった
《岡田くんちょっと、、》
部長の太田が岡田を呼びつけた、なにやら不穏な
雰囲気だ、、”今再印刷をかけてるのだが” ”定時
時間内では間に合いませんね”
などと聞こえてくる
[長坂さん、ちょっと、、]
岡田からの呼び出しだ(きっと良くない内容だ…)
エミは覚悟して岡田のデスクに向かう
《長坂さん悪いんだが、S社へ納品したチラシに
客先でミスプリが判明した、再印刷がもうすぐ
終わるので申し訳ないんだが担当として納品に
行ってもらいたい》
(今から!?教習には間に合うのだろうか??)
不安には思ったのだが教習に通うと決めた時点で
仕事には影響を与えない、と心に誓った
「わかりました」
務めて平静を装い返事をした、これも仕事だ、し
かもS社は自分が担当として窓口業務をこなす大
事なお客様だ、担当として頭を下げに行かない訳
にはいかなかった
〖エミさん、大丈夫??〗
川本が小声で心配そうに声をかけてくる
「大丈夫です、最悪間に合わなくても仕事の方が
大事ですから!」
言った言葉は本心からだったが不安ではあった
見極めに遅れたらどうしよう、、、、
だが今は頭からその考えを追い出し、目の前の仕
事の問題に向き合う事にした
《浜崎くんと社用車で向かってくれ、今積み込み
をしてるはずだから、、》
「分かりました、それでは失礼します」
太田と岡田に会釈すると、エミはすぐさま印刷所
へ向かった
扉を開けると浜崎が台車に段ボールを積み込んで
いるところだった
「浜崎さん、あといくつですか?」
〘この箱で最後、表に車まわしてくるので台車お
願いします〙
「わかりました、行って下さい」
エミが返事をするや否や浜崎はダッシュで部屋を
出て行った、エミは印刷所の面々に会釈すると、
すぐさま台車を押してプラットフォームを目指し
た、到着すると、ちょうど浜崎が社用車のプロボ
ックスをバックで車庫入れしているところだった
リアハッチを浜崎が開けるのを待つのももどかし
く、エミは段ボールを持ち上げ、一つずつ浜崎に
手渡してゆく、すると
横から力強い手が段ボールを2箱ずつ持ち上げ始
めた、見ると川本が手伝いに来てくれていた
〖こんな事しかやってあげられないけど、、〗
川本の言葉に胸が締め付けられるほど感謝したエ
ミだったが、のんびりしてもいられない
アッと言う間に荷物を積み終えると浜崎に
〖浜崎!頼んだぞ!!〗
と檄を飛ばす、それに応えて
〘行ってきます!!〙
と熱い返事を返す浜崎が頼もしかった
時刻は16時30分、微妙な時間だった、夕方のこの
時間は道が混みあい始めるのだ
悪い予感は当たるもので、普段なら20分程で着く
はずのS社に辿り着いたのは17時15分、、、
嫌な予感が現実になろうとしていた、気ばかりが
焦るのだが、大事なお客様への納品で不具合を出
しておきながらそうも言ってはいられない、まず
は謝罪と訂正品の納品が最優先だった
担当者に謝罪し、訂正した品の確認と納品を済ま
せ、帰社の途に就いたのは17時45分をまわってい
た
(これはきっと間に合わないな…)
エミの中に諦めの感情が沸き上がっていた
渋滞に巻き込まれ会社に着いたのは18時20分だっ
た、電車通勤のエミには絶望的な時間、、タクシ
ーを使ったとしても間に合わないだろう
太田と岡田から労いの言葉をもらい、急いで着替
えてはみたものの、エミに出来る事はキャンセル
の電話をかける事ぐらいかと思われた
そこへ…
〖エミさん急いで!早く!!〗
川本の声が聞こえてきた、と同時に駐輪所からセ
ローがこちらへ向けて猛然と走ってきた
〖急いで!絶対間に合わすから!〗
その言葉を聞いてエミは自らの両目に涙が浮かん
でくるのを抑えられなかった
それを隠すかのように急いでヘルメットをかぶる
と
「ありがとうございます!!」
大きな声で川本にお礼を告げた
〖少し飛ばすよ!こないだよりしっかり捕まって
て!!〗
言われてエミが捕まる両手に力を込めるや否や、
セローは猛然と唸りを上げて走り出した
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




