変わる日常そして…
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
川本の勧め通り、ここの釜揚げうどんは熱々に茹で
られているが、それでいてコシがしっかりと有り、
食べ応え満点だった、さらには川本がコッソリ注文
していた天ぷらがまた絶品だった
衣がサクサクしているのだが、食べ味が軽く、いく
らでも食べられてしまいそうだった、特に掻き揚げ
が絶品で、何の変哲もない玉ねぎと人参、そして大
葉が入り、変わっているな、と思わせる部分は細切
りのサツマイモが入っているところだが、これが実
に良い味を出していた
〖ここの天ぷらって食べ味が軽くて、つい食べ過ぎ
ちゃいそうだよね〗
と、エミの感想とほとんど同じ事を言う川本が妙に
可愛らしく感じるエミだった
「ごちそうさまでした!」
2人揃って食卓に手を合わせ、口に出してそう言う
と、どちらともなく席を立ち会計に向かう
(あぁ、終わっちゃったな~)
と川本との共通の時間の終わりを感じていると
”3400円になります”
と会計の段になった、エミが財布から千円札を出そ
うとしていると
〖ここはカッコつけさせてね…〗
と川本が手で制してきた
「乗せてきてもらって、そんな、悪いです…」
というエミの口元に右手の人差し指をかざした川本
は
〖オレから誘ったからね、むしろ夕飯付き合っても
らってありがとう、1人飯より断然おいしかった
よ〗
といなされてしまった
これ以上は野暮だと思い
「じゃあ、ご馳走様でした!」
と軽く会釈し、今日は川本の好意に甘える事にした
ヘルメットをかぶりながら川本に
「今度の水曜日、食堂で3時の休憩に来てくださ
い」
と告げた
〖何かあるの??〗
川本はキョトンとした表情だったが
「アタシのイチオシの三河庵さんの”プレミアムど
ら焼き”を持ってきます!」
川本は大いに破顔して
〖あのいつも三人で盛り上がってるやつ??〗
と尋ねてきた
「モチロン甘い物が苦手でなければ、、ですが」
「大好物です♡」
先ほどのエミの真似をしてくる川本がとても愉快
で、エミは思わず笑ってしまった
その後は、どちらともなく言葉を発さず、おずお
ずとセローに乗り込んだ
走り出す瞬間に思わず回した手に力が入る
(このまま時間が止まってしまえば良いのに…)
思わずそんな事を考えてしまうが、そんな事はあ
り得ないのだ、、だから今、この時を精一杯感じ
る事にした、川本の一挙手一投足も見逃すまい、
と一生懸命に努力した
発進のクラッチミート、アクセルワーク、ブレ
ーキの強弱、コーナリングの挙動、全てが今の
エミにとってはかけがえのない経験であり、こ
れ以上ないぐらいの実習となった
目的の本屋が見えてきた、もうすぐこの幸せな
時間も終わってしまう、、、、
なんだか寂しくもあり、一本の映画を見終わっ
たような、何とも言えない虚脱感があった
駐輪場のエミの自転車の前にセローを停めると
川本は
〖今日は晩飯に付き合ってくれてありがとう〗
と、逆にお礼を言ってくるのであった
「こちらこそありがとうございました、そして
ごちそうさまでした」
〖それじゃエミさん気をつけて帰ってね、あと、
それと…〗
「ハイ?」
エミが言葉の続きを待っていると
〖オレが免許取る時に読んでた本が、まだ家に
あると思うから見つけたら持ってくるよ、あ
とバイク雑誌なんかも〗
「ホントですか!?ありがとうございます」
〖三人で回し読みすると良いと思うよ〗
川本はどんな本を読んで教習に臨んだのだろう
か?単純にそんな部分に興味がわいた
〖あ、それと…〗
「???」
エミは続く言葉を待ったが、川本は言葉を飲み
込んだ
〖ゴメン、何でもない、それじゃまた会社で〗
そう言うとエミの返事を待たず川本は走り出し
てしまった
走り去る川本の背中に小さく手を振り、エミも
帰路についた
楽しく、そして幸せな時間、、、
自転車を漕ぎながら、ついつい頬が緩んでしまう
夜で良かった、昼間だったら通行人に奇異な目で
見られていたかもしれない
小さな、でもエミにとってはこれ以上ない幸せを
噛み締めながら、帰り道べダルをこいだ
帰宅し、部屋着に着替えてお風呂の自動を入れて
きた後スマホを確認すると"作戦会議"が凄い事に
なっていた
帰宅が遅かった事をツッコまれたらどうしようか
考えていたがエミの「ただいま」には
〈おかえりん〉
『おかえりなさ〜い』
【お、エミちゃんおかえり】
と、サッパリした反応で内心ホッとした
『須賀さんと教習所あるあるで盛り上がってまし
た』
ログを流し読みしながら適当な相槌を打ちつつ、
気になる部分を見つけた
"一本橋"というワードが気になったのだ
「一本橋ってなんですか?」
エミの問いに須賀が
【細い板の橋でね、その上を通行する教習がある
んだけど、橋から落ちると見極めとか卒検とかも
一発落ちw)】
「え〜厳しい、、、(汗)」
【一本橋の脱輪と急制動の停止線オーバー、あと
パイロンタッチ(倒す)が3大落第要因かなw】
『へえぇぇぇ〜〜』
〈そうなんですね!〉
「気をつけます!」
【何にせよ自分の手での初走行おめでとう!輝か
しい第一歩だね】
「『〈ありがとうごさいます〉』」
皆が皆須賀の祝福を素直に喜んだ
『でも外周をアイドリングで走行しただけですけ
どね、、』
【そこらでデカいハーレーとか乗り回してる奴ら
だってそこから始めたのさw】
「間違いないですね!」
〈そう言えば事務のお姉さんがハーレー乗ってる
って言ってました〉
『そうそう!去年大型取ったって言ってました
ね、何だっけ?ママさん??』
【それって、、883ccの"パパさん"じゃない?】
「ママさんっって、、、(笑)」
〈ナイスボケ!〉
『う〜恥ずかしいデス、、、』
【パパさんか!良い趣味だね!ハーレーはその気
になればエンジンをデカいのに載せ替えられる
しね】
「そうなんですね!?」
〈知らなかった、、〉
何気にミキの間違いをイジらず、さりげなく話題
を逸らす須賀の優しさが見て取れた
"お風呂がたまりました"
自動モードのアナウンスが流れ、エミは皆にお風
呂に入ってくる旨を告げて退席した
髪を洗って湯船に浸かっている間も、なんだかニ
ヤけてしまう自分がいた
湯船に頭の先まで浸かり、10秒ほど待った後
飛び出す
「ぷはぁっ!!」
どうしても湧き上がってくる浮ついた感情を強引
に鎮める為の行動だった
(ノボせない!浮つかない!)
そう自分に言い聞かせ、お風呂から上がった
髪をドライヤーで乾かした後、念入りにスキンケ
アを施す、今の自分にとってバイクと同じ位大事
なメイク、そこだけは怠らない、妥協は有りえな
いのだ!
「ただいま〜いいお湯でした♪」
と"安全会議"に報告すると
晴子とミキもちょうど入浴しているところらしく
須賀がヒマそうにしているところのようだ
【おかり、スキンケアは済んだかい?】
と、的確な質問を飛ばしてくる須賀に
「ハイ!そこだけは怠りません」
と胸を張って答える、ずいぶん上達したとは言え
まだまだ修行中という自覚があった
【女の子には男とは違った苦労があるね、オレな
んか朝も歯磨いてヒゲ剃るだけでいいもんな】
軽口を叩くように激励してくれる須賀に
「おかげさまでそれを楽しみに変えられました♪」
お礼の意味も込めて、自分がメイクを楽しんで取
り組んでいる旨をさりげなく伝えた
【楽しんでくれてるなら何よりだ♪】
「でもまだまだです!メイクって思ってた10倍ぐ
らい奥が深いんです」
【満足しちゃったらそこで終わりだからね、とこ
とんやってみるといいさ】
【あぁ、そうそう、こないだ行ったあの店に皆で
行ったんだよね?】
「ハイ!ミキちゃんもアイメイクしてもらってま
したよ」
【ああ、見た見た、派手にアイメイクしてもらっ
てたねw】
「ミキちゃんは派手めでも似合いますよね」
【あそこの店長はオレの知り合いだから、何かあ
ったら相談すると良いよ】
「そうなんですね!?こないだ相談に乗ってもら
いました」
「値段を抑えた商品を勧めてくれたり、とっても
親切な方でした、それに、すっごい美人だし…」
【ハハハ、伝えておくよ】
『ただいま~、アタシもスキンケアちゃんとして
きましたよ!須賀さん褒めて下さい』
ログを見たのであろうミキが催促する
【ん、若いうちから感心感心♪その調子!】
『(∀`*ゞ)エヘヘ』
可愛らしいスタンプで喜びを表現するミキが可愛
らしかった
『でもアタシってほっぺたすぐカサカサするんで
すよね~』
ミキの言葉にすかさずエミが
「Tゾーンがテカっちゃったりとかない?」
『あ~ありますあります!、カサカサするくせに
日中テカるんですよね~(汗)』
「だったら”混合肌”だね、スキンケアは保湿優先
で選ぶと良いみたいよ」
『さすがエミさん!アタシももっと自分で調べな
きゃ、、』
そんな話をしていると晴子も帰ってきた
〈ただいま~〉
「ハルちゃんおかえり」
『おかえりなさ~い』
〈アタシだってちゃんとスキンケアしてますよ…
ボソリ…〉
【クールな晴子ちゃんがそういうとこ見せるとと
ても可愛いね!】
須賀の褒め方はとても上手く、皆が皆上機嫌だっ
た
その日は他愛ない会話をしながらも、これからの
教習、とりわけシミュレーターの話題で盛り上が
って10時30分頃まで過ぎてしまった
【さぁ、夜更かしは美容の敵だぜ!おやすみだお
嬢さんがた】
と須賀に打ち切りを切り出された
『ハ~イ、ではおやすみなさ~い』
「おやすみなさい」
〈おやすみなさい〉
【ハイ、おやすみ、またね】
とおのおの挨拶を済ませ床についた
(また明日も頑張ろう!)
最近のエミは、毎晩こう思える事に感謝して眠り
を迎えるのであった
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




