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困惑と驚愕

日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです

仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを

肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが

なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます

温かい目で読んでいただければ幸いです。

 トヨタ駅の向かいの松坂屋の2Fにはスターバックス

 コーヒーが入っている

 男はエミを引き連れて入店するとカウンターで

「ダークモカチップフラペチーノのTallを」

 スラスラと注文し終えてしまった

 「何にする??」

 無邪気に男に問われ

 「じゃあ和三蜜ほうじ茶フラペチーノTallで」

 「さっすが和菓子派、そうこなくっちゃね」

 2人してオーダー品を受け取り丸テーブル席に向か 

 い合って陣取る

 「さてと、、、」

 男がかしこまって座り直した

 「オレは須賀幸太、51歳既婚、普通の会社員、君  

  は?」

 エミは驚いた、ずっと40そこそこと思っていたこの

 男は、思っていたより遥かに年かさだったのだ

 「わ、私は長坂エミ、25歳、ど、独身でこちらも普

 通の会社員です…」

 「エミちゃんね、了解!俺の事は須賀って呼んでく

  れ」

 「あぁ、誤解しないで欲しいから最初に言うけど、

  君とどうこうなりたいとかそういうんじゃないん 

  だ」

 エミの表情がとたんに曇る

 「そうですよ、ね、私なんかに、興味なん

  か、、、」

 須賀は顔を左右にブルンブルン振りながら

 「いやいや、興味はあるよ、それもすごく」

 「え???」

 エミはますます困惑した、だが須賀の意図はさっぱ

 り解らない…

 「さっきから必要以上に自分を卑下する、なんでそ

  んなに自信無さげなのかな~って」

 エミはいたたまれ無くなり、そろそろ無くなりそう

 なクリームを

 スプーンで無為に掬ってばかりいた

 「昔っからなんです、私ってメガネだし、地味だ

  し、これといって取り柄もないし…」

 「そうかな~??」

 そういいながら須賀は両手の人差し指と親指でフレ

 ームを作りその中にエミの顔を覗き込む

 「エミちゃん可愛いのに、勿体ない」

 須賀は飲み物の残りを一気にズズズと吸い込むと不

 意に立ち上がった

 「ちょっと、もう一か所付き合ってくれるかな、す

 ぐそこだから」

 真剣な表情でエミに言った


 須賀がエミを伴ったのは2Fの化粧品売り場だった

 「さてさて、、、あ、すみませ~ん」

 30代前半と思しき美容部員を見かけるやすぐに声を

 かける

 「はい、どうされましたか?」

 「ちょっと聞きたいんだけどさ、」

 エミの耳に(今はちょっと外しております)や(あ

 ちゃ~間が悪い)などと聞こえる

 「それじゃあさ、、」

 勿体つけて喋る須賀に、女性店員が首をかしげなが

 ら尋ねる、名札には「前原」とある

 「はい、なんでしょう?」

 これって出来るかな?そう言って須賀が前原に見せ

 たのはYOUTUBEの動画だった

 画面にはお世辞にもキレイとは言えない女性が、絶

 世の美女に化けるまでの過程が

 映し出されていた

 「このメイクを施して欲しい、という事ですか?」

 「いや~今日のとこはアイメイクだけで良いんだけ

 ど、いきなりじゃあ難しい、、かな??」

 この言葉に少々プライドが傷つけられたのか

 「少々お待ちください…」

 須賀に告げ前原が隣の女性店員の元へ駆けて行った

 エミは不安に駆られ

 「あ、あの??」

 須賀に話しかけようとしたが

 「お待たせしました!」

 それよりも早く前原が、もう1人の女性店員を伴っ

 て戻ってきてしまった

 胸には「磯山」の文字

 「お待たせしました、アイメイクをご希望、との事

 で伺っておりますが」

 「あ、あの、わたしっ、、、何も、、」

 「あ~ちょっと良いですか磯山さんっ、ちょっとこ

  ちらへ…」

 須賀が割って入って前原と磯山を脇へ連れ去った

 束の間エミは置いてきぼりをくらってしまった

 須賀と2人のボソボソ話が聞こえてくるが、内容ま

 では分からない

 しばらくすると3人が揃ってエミの元へ戻ってきた

 「要件は伺いました、今日のところはアイメイクの

  み、という事で私、磯山が担当させて頂きます」

 「は、はぁ??」

 エミには訳が分からなかった、が、どうやら自分に

 はアイメイクが施されるらしい

 なんだか話が見えないが、軽くウィンクする須賀に

 流されるようにエミは鏡台の前に

 連れて行かれるのだった

 「アイメイクを施しますがベースメイクはこのまま

  の方が良いですか?」

 「え、あ、分かりませんが、おまかせします、、」

 「下地のメイクはお上手ですね、このままで良いと

  思います」

 「ありがとうございます」

 エミは訳も分からず返事をするが事が自分を置いて

 どんどん進んでしまう

 「お父様のご希望は見違えるような目元!という事

  なので、つけまつ毛も使いましょう」

 (お、お父様??)

 一体どういう話の流れなのかエミにはさっぱり分か

 らないが、、、

 「失礼します、メガネ外しますね」

 メガネを外されエミはますます不安になった、とい

 うのも、エミの視力は裸眼だと

 0.1程度の「ド」がつく程の近眼なのだ、、

 5分ほど身を任せていただろうか、磯山が不意に

 「こんな感じでどうでしょうか?お父様」

 須賀に確認を取り出した

 「うぉ!さすがプロ!?こんな変わるかね~」

 「ちょっと派手めですが、その気ならこれ以上でも

  出来るんですよ」

 磯山は少し得意げだった、エミは恐る恐るメガネを

 かけてみた、すると、、、

 エミは鏡の中に別人に変身した自分自身を見た

 そこにはパッチリとした目、うっとりする程のまつ

 毛、それでいて自然な目尻と目元

 まるで整形手術でも施されたような気分だった

 「ご感想は、どうですか?」

 穏やかな表情の磯山に問われ、エミは

 「まるで自分じゃないみたいです、あの、、ありが

 とうございます、、」

 ニッコリと微笑みながら磯山が満足そうに頷いた

 「お父様もご満足頂けましたでしょうか?」

 磯山に問われた須賀も満足そうに

 「いや~お見事ですよ、ありがとうございます、そ

 れじゃあ約束通り、」

 ニコニコしながら磯山とカウンターの奥へ行ってし

 まった

 エミはまだ信じられない、角度を変え、表情を変

 え、自分の顔をしげしげと眺める

 「いい表情なさってますね、そんなに喜んでいただ

 けるとこちらも嬉しいです」

 言いながら須賀と磯山が戻ってきた、須賀の手には 

 紙袋があった

 「ほいよエミちゃん」

 須賀が紙袋を手渡してくる

 エミが中を確認すると、コンシーラー、アイライナ

 ー、つけまつ毛

 マスカラ、ペンシル、その他も色々、多くの化粧品

 が入っていた

 須賀は飄々とした様子で

 「んじゃ行こうかエミちゃん、ありがとね~お2人

  さん」

 と言って出口の方角で歩き出してしまう

 「あ、ありがとうございました!」

 エミは深々と2人にお辞儀をした後、小走りで須賀

 を追いかけた

 「ま、待って下さいっ」

 須賀に追いすがり肩を掴んだ

 「こ、こんなの困ります!私ちゃんと代金お支払い

 します!」

 須賀は首だけで後ろを振り返ると、軽く言い放った

 「んなダッサい真似出来ないよ、貰っといてw」

 「で、でも、、、」

 不意にクルリと体ごと振り返った須賀が明るく言っ 

 た

 「じゃあさ!」

 「認識を改めてよ」

 エミには須賀の言ってる意味がよく分からなかった

 「え、ど、どういう事ですか?」

 「君は可愛い、そして可愛いは作れる!って事さ」

 エミは俯いた

 「でも、私なんか、、、」

 不意に須賀が真剣な表情でエミを見つめて言った

 「それだ!それが気に入らない」

 須賀に気に入らないと言われエミは困った

 「気に入らない、と、言われても、、、」

 「あ~もう分かんないかな?いい?今この場でいっ

 ぱい歩いてる女の子いるでしょ」

 「はい、、、」

 「ザッと見渡してもエミちゃんが一番可愛いの!」

 エミは瞬間的に顔が火照ってしまった、恐らくはた

 から見れば真っ赤な顔をしてるだろう…

 「今時、ルッキズムの観点からしてもあまりこうい

  うのは良くないんだろうけど、、」

 「エミちゃんがどうしようもないブスやデブだった

  らやるだけ無駄な訳よ」

 「でも君はアイメイクしただけでここらで一番にな

  っちゃった訳だ」

 「だから、その、なんだ、、、もうちょっと自分を

  認めてあげなよ」

 頭を掻きながら照れた様子で言う須賀に目頭が熱く

 なる

 「てな訳で、オレは帰るよ、またね!」

 振り返って立ち去ろうとする須賀に

 「待って下さい!!」

 つい大きな声が出てしまった、周囲の通行人が何事

 かと振り返る

 「あの、ああの、私、、わ、た、し、、、」

 「落ち着いてエミちゃん、どうした?何が言いた 

  い?」

 須賀が優しく促した

 「ありがとう、ございます、私、、その、今まで自

  分に自信が無くて、、」

 須賀は黙って聞いてくれる

 「今日、メイクしてもらって、その、新しい自分に

  出会えました」

 須賀がニッコリ微笑んでうなづく

 「なんていうか、その、私っ、メ、メイク、頑張っ

  て、みます」

 「いいね!頑張ってみなよ、きっと君にとってプラ

  スになる」

 エミは微笑んで須賀に尋ねた

 「これ、ほんとに良いんですか?」

 「もちろん!上手に使いこなしてみな」

 「はい!頑張ります!」

 笑顔が眩しい、須賀は満足そうに微笑んだ

 「あの、それと、、」

 エミは言いよどんだ、、、

 「どうしたの?」

 須賀が不安な様子で尋ねた

 「私とLINE交換して下さい」

 「え??」

 さすがの須賀も面食らったようだ

 「私、メイク頑張ります!、でも須賀さんに成果を

 見てもらいたくて、、」

 須賀は合点がいった

 「なるほど、いいよ!」

 須賀はスマホを出すとLINEを操作しQRコードを表示

 した

 エミはQRコードを読み取るとすぐさまアイコンが表

 示された

 およそ似つかわしくないパピヨンのアイコン

 「わ、可愛い!」

 「それ、うちの愛犬なのよ、可愛いでしょw」

 「とっても!」

 「いい報告を待ってる、頑張って!」

 言うが早いか須賀はクルリと踵を返し歩き出してし 

 まった

 「ありがとうございます須賀さん、頑張ります!見

  てて下さい」

 須賀は振り返らずに右手を軽く上げて答えた












 

 

 

  





 



今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります

多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が

ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい

メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は

「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。

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