実走!
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
晴子が発進後のコーナリングの指導を受けている
のを遠目に見ながら、エミは自身の発進の練習に
集中しようと務めた
ギアを1速に入れてクラッチミート、進んでは停
まり、ニュートラルへ、繰り返しているうちに段
々とコツが掴めてきた気がする
《 長坂さん、長坂さ〜ん 》
呼ばれている事になかなか気づけなかった
「ハ、ハイ、すみません」
《 集中してましたね、発進見てましたが良かっ
たですよ、では中央の8の字まで行きましょ
うか 》
教習車を押して8の字の縁まで移動した
《 バイクのコーナリングでは大きく分けてリー
ンアウト、リーンウィズ、リーンインと3つ
の体勢があります、よくハングオンとか言わ
れるカーブの内側に体を倒し込んだ体勢、あ
れがリーンインです、そしてオートレースと
かで良く見る足を出して倒し込んだバイクの
上に立ったような体勢、あれがリーンアウト
です 》
《 教習所で教えるのは最もオーソドックスなリ
ーンウィズです、これは車体に対して常に垂
直、つまり車体と同じ傾きの体勢でバイクに
乗る、という事ですね、そしてこれを行う上
で最も大事な事がニーグリップです 》
「??」
エミが分かっていない表情をしたのが見て取れた
のだろう、水木が丁寧に説明を始めた
《 良いですか?ニーグリップと言うのは、この
ように、タンクを両の足で挟み込む事です、
この挟み込んだ両足で自分の身体を支える訳
です 》
言いながら教習車で実演して見せてくれる水木の
指導はやはり分かりやすいとエミは感じていた
《 これを踏まえて、バイクを倒し込んだ時はニ
ーグリップで身体を支えて下さい 》
センタースタンドを立てた状態でニーグリップを
練習した、これを長時間となるとなかなかキツそ
うだ
《 慣れるまでは力が入ってしまうでしょうがす
ぐに慣れます、コーナリングの際にうまくニ
ーグリップ出来るよう練習しましょう 》
《 ではこれを踏まえて、発進からコーナリング
までやっていきましょうか 》
エミは気を引き締めた、だが水木の語り口は優し
かった
《 あまり緊張しすぎず、発進でクラッチが繋が
ったら、あとはアクセルを開けなくて良いで
す、アイドリングだけで走行しましょう、そ
して、車体は自転車と同じ要領で倒し込めば
曲がります、この際にニーグリップをしっか
りしておけば身体を支えられます 》
チラリと見えた晴子はもうすでに発進してコーナ
リングをこなしていた、恐るべしミスパーフェク
ト、、、、
《 ではやってみましょうか 》
「ハイ!」
力強く返事したエミだったが、やや気後れしてい
たやはりいきなり緊張もせずこれをこなせ、とい
うのは自分にはハードルが高いようだ
(落ち着いて!、発進は問題ない…)
先ほど練習した要領でスムーズに発進する
《 良いですよ!ではそのまま右にまわってみま
しょう 》
水木の言葉で車体を右に倒し込む、すると本当に
自転車のような要領で曲がる事が出来た
自分が思っていたよりもはるかにスムーズに曲が
る事が出来る、だがやはり自転車のようには小回
りは効かないようだ、予想していたよりはるかに
大回りして元の位置へ戻ってきた
《 良いですね、かなり上手でしたよ、どうです
か?感想は 》
「思っていたよりも曲がる感覚は分かりやすかっ
たです、でも…」
《 どうしました? 》
「思っていたより大分大回りになってしまいまし
た」
《 それは仕方ないですよ、慣れてくるともっと
小回り出来るようになると思いますが、現時
点なら十分合格範囲ですね 》
水木に褒められて、とても嬉しかった
(なんて楽しいんだろう!バイクって)
その後左周りを行い、後は自主練習となった、最
後のミキが練習している頃には晴子もエミもすっ
かり円を描けるようになっていた
ミキは元々乗った事があるので予想通りさした苦
労もなくコーナリング出来ていた
〈やっぱミキちゃん最初から上手いね!〉
『ホントホント!さすが原付持ち』
《 いや~皆さんスジが良くて大変助かります、
教官としては楽ですね(笑) 》
お世辞半分、本気半分、といったところだろうか
それでも三人には嬉しいものだった
この後ウィンカーの説明を受けて各自で練習する
事10分少々、、
《 ではこの8の字コースの周りを周回します、
前の人に追従する練習ですので、ゆっくり車
間を十分に取って走行して下さい 》
《 園田さん、長坂さん、伊藤さんの順で回りま
しょう、では園田さん発進して下さい 》
言われたミキは躊躇せず簡単に発進を決めてしま
った、エミも慌てて発進したが、危うくエンスト
しかけた、が、走り出してしまえば後は安定した
ものだった
何度かコケそうになりつつ、止まっては再発進、
を繰り返して、そろそろ連続走行がおぼついて
きた頃、水木が不意に
《 では皆さん、お待ちかねの外周コースへ、出
てみましょうか 》
と皆をコースへの入り口へ誘導した
(いよいよ外周コースを走行する)
ドキドキする気持ちを抑えつつも、それに勝るワ
クワクがエミの心を掻き立てていた
《 では外周コースに出ましょう、単純に外周を
1周するだけですので、アクセルは開けず、
アイドリングでの走行で結構です、もし何か
あったらコースの端に寄せて止まって下さい
私が最後尾に着けていますので 》
水木が後続で付いて来てくれるのは三人にとって
はとても安心感があった
《 では園田さん、長坂さん、伊藤さんの順でコ
ースに出ましょうか、園田さん、どうぞ~ 》
促されたミキがクラッチをつないで発進した、普
段から道路を走行する事自体に慣れている為か躊
躇いが感じられない
いよいよ自分の番!エミの緊張は最高に高まって
いたが、同時に期待も最高潮に膨らんでいた
(あの感動を自らの手で!)
須賀のタンデムシートで走った街中、、今は自分
の手でハンドルを握り、バイクを運転している
(さぁ行こう!)
自らを鼓舞し、クラッチを繋ぎこむ、ゆっくりと
走り出す車体、次第に速度に乗った状態でミキの
教習車を追従し始めた、後ろからは晴子の教習車
が付いて来ているのがミラーで確認出来た
(今自分自身の手でバイクを運転しているんだ!)
エミの心は踊っていた、アイドリングだけで外周
を単純に走行する、ただそれだけの事だが、エミ
も、晴子も、ミキもきっと思いは同じ、これから
のバイクライフへ向けての輝かしい第一歩を感じ
ているだろう
夢中でバイクの重心をコントロールし、車線内を
走行させているうちに、アッと言う間に外周を1
周してしまった、、、
「もう終わっちゃった、、、」
安心半分、終わってしまってガッカリ半分、と
いったところだ
《 どうでしたか?コースを走ってみて? 》
水木の問いに
『思っていたよりぜんぜん怖くなかったです』
〈特にこれといったプレッシャーもないですね〉
「あっけなかったです、、もっと乗りたい!」
自分でも不思議なくらいモチベーションが上が
っているのが感じられていた
《 その意気です!今後の教習、徐々にやって
もらう事、覚えてもらう事が増えていきま
すが、そのやる気をもって挑んでいって下
さい、それでは今日はここまでです、お疲
れ様でした 》
全員無事にハンコをもらってその日の実技教習
は終了となった
控室でプロテクターを外して返却していると、
水木が寄ってきて
《 そう言えば、次の3時限目はシュミレータ
ーでしたね、頑張って下さい 》
シミュレーター??3人とも(???)といっ
た風情だったが、次の時間に受けられる学科教
習があった為、今は急いでプロテクターを返却
するのだった
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




