初実技教習!!
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
≪ それでは今度は発進→ギアチェンジをやっていきま
しょうか ≫
水木が三人にバイクから降り、側に来るように指示を
出した、呼ばれた三人はバイクを降り、水木の側に集
まった
≪ それでは説明していきます、まず、皆さんが取得
しようとしている免許はMTです
これは、変速装置がマニュアル、つまり手動操作
で、自動変速ではなく、自分の任意で変速出来る
と、言う意味です ≫
≪ たしか原付免許を持ってらっしゃる方がいました
ね? ≫
ミキがおずおずと手を挙げる
≪ あ、園田さんですね、バイクはスクーターですか
? ≫
『ハイ、そうです』
≪ あれがATです、アクセルを開
けていくと勝手に変速して加速しますよね? ≫
『ハイ…』
≪ あれを自分で手動でやっていくのがMTです ≫
≪ 論より証拠、まずはやってみせましょう、先ほど
も説明しましたが、真ん中の緑のランプ、これが
ニュートラルランプになります、バイクのニュー
トラルは少し変わっていて、1速と2速の間にあり
ます、これはほとんどのバイクで共通ですね、こ
れを踏まえて、バイクのギアは、低い方から順に
1速、N、2速、3速、4速、5速、
6速と並んでます ≫
正直エミにはチンプンカンプンだった、予習の意味で
YOUTUBE動画で”バイク 初心者”などと検索して動画
を見てみたがピンと来ず、教習所で教わればいいか、
と思っていたからだ、晴子もミキもイマイチピンと来
た様子ではなかった
その様子を察したのか水木が
≪ 自転車に乗った事ある方は? ≫
と三人に聞いた、これには三人が三人とも挙手したの
だった
≪ では変速がついていた、という方は? ≫
これも三人が皆挙手した
≪ では話は早いですね、自転車で坂道を上る際には
低いギアに変更して漕ぎますよね? ≫
明らかにエミの方を向いて問うてきた水木に
「ハイ、そうです、ね、、」
とエミはしどろもどろで答えた
≪ あれは小さい歯車の方が動力が伝えやすく、大き
な力を出せるからです ≫
≪ バイクの場合は漕ぐ力、が=エンジンの回転数
です ≫
≪ そして、それを伝えるのがクラッチ、と言う訳で
す ≫
≪ 変速の段数が多いのは、それだけ出せる速度の領
域が広いから、それだけ多くのギアの段数を必要
とする、という事です、この教習車でも180㎞ぐ
らいは出せますからね ≫
ここまで漠然とバイクのMTをイメージしていたエミ
だったが、水木の説明は上手く、話が非常に分かりや
すかった事もあり、大体の事が理解出来た
晴子もミキも同様のようで、2人とも納得のいった表
情をしている
≪ と、いう事で、やってみせましょう、センタース
タンドを立てた状態でやっていきますね、まずは
エンジンを始動します ≫
キュルルル、ブオン、ドドドドドドド
≪ エンジンが始動したらまず、ブレーキとクラッチ
を両方握っていきます、この時、右足を地面につ
き、左足はステップに乗せて下さい、左足のステ
ップの上に付いてる、これがシフトレバーになり
ます、これを上下させてギアを変速します ≫
三人が真剣な表情で水木の一挙手一投足を見守る、晴
子などは一言も聞き漏らすまい、と見たこともない表
情をしている
≪ ブレーキとクラッチ、特に左手のクラッチがしっ
かり握られている事を確認したらギアを1速に入
れます ≫
言うと水木が左足でシフトレバーを下に踏み下ろした
”カチッ”と音がして緑のニュートラルランプが消灯し
た
≪ これで今1速にギアが入りました、が、クラッチ
を切っているのでまだ動力は伝わってません ≫
≪ 良いですか?よく見ててくださいよ、ではクラッ
チをつないで動力を伝えていきます、本当の発進
時のようにアクセルを開けながらつないでいきま
すね ≫
そう言うと水木がアクセルを捻ってエンジンの回転数
を上げた、途端に大きな音が周囲にこだました
≪ ではクラッチをつなぎます、よく見てて下さいね
≫
言いながら水木は左手を広げてクラッチを開放してゆ
く、すると、エンジン回転数が一瞬下がったかと思う
と後輪が勢いよく回り始めた
≪ これが今1速で走り出した状態です、このまま6速
までシフトアップしてゆきますね ≫
言いながら水木はアクセルを開けつつシフトアップの
際にはアクセルを戻し、を繰り返して6速までシフト
アップしていった
≪ これ、実際に走行していたら現在は100㎞ぐらい
出てる状態だと思いますが、大体これが6速まで
のシフトアップの手順です ≫
≪ 今日のところはシフトアップは置いておいて、ま
ず”発進”に伴うクラッチミート、通称「半クラ」
をやっていきましょう ≫
そう言うと水木は三人をバイクの横にそれぞれ立たせ、
全員から見える位置まで己の教習車を押していき横づ
けした
≪ では全員バイクに跨って下さい、まだエンジンは
かけないで下さいね ≫
≪ 順にいきましょう、まずキーをONまで回してく
ださい ≫
≪ エンジンチェックランプが消えた事と緑のニュー
トラルランプの点灯を確認して下さい、確認出来
た方は挙手お願いします ≫
ミキが挙手、続いてエミも晴子も挙手した
≪ ではエンジンをかけましょう、セルを回してエン
ジンをかけて下さい ≫
それぞれがやうや躊躇しながらもセルを回してエン
ジンをかけた
≪ では、ここからです、まず両手共にクラッチとブ
レーキを握って下さい ≫
全員が右手でブレーキを、左手でクラッチを、それ
ぞれ握りしめた、そんな必要はない、と分かってい
ても、ついつい渾身の力がこもってしまう…
≪ そしたら右足を地面に着いて、左足をステップに
掛けて下さい ≫
言われるままに右足を着く三人…
≪ 次に右手をブレーキから離して、アクセルだけを
握って下さい ≫
エミは右手をブレーキから話アクセルを握った、ミキ
と晴子を見やる余裕は全くない、、、
≪ そうしたら少しアクセルを開けてみて下さい、少
しで良いですよ、そうですね、右の回転計(タコ
メーター)で3の表示、これが3000rpmなのですが
、ここまで回してみましょうか ≫
おっかなビックリアクセルを捻ってみる、と、エンジ
ンが徐々に唸り出し、タコメーターが跳ね上がってい
った
≪ 3の表示に合わせて下さいね、あ、園田さん少し吹
かしすぎですねw ≫
ミキはエミでも分かる位アクセルを開け過ぎていた
『難しい~、、これぐらい、か、な、、』
微妙なアクセルワークが苦手の様だ、エミは比較的こ
れには苦労しなかった
≪ 良いですね!ではギアを入れていきます、左手の
クラッチは握ったままにして下さいね ≫
≪ クラッチを握ったままで、左足のつま先をシフト
レバーの上に掛けて下さい、そのまま左足を踏み
込んで!”カチッ”と音がする所までです ≫
カチッ、と音がしてニュートラルランプが消えた
≪ 皆さんニュートラルランプは消えましたか? ≫
みな余裕がないのか顔だけでコクリと頷く、それを確
認した水木が続ける
≪ では左手をゆっくり開いていって下さい、そうす
ると動力がつながる瞬間が感じられると思います
≫
水木の説明通り、エミはクラッチをひどく丁寧に、ゆ
っくりと開いて行った、すると、水木の言う通り、あ
る箇所でエンジン回転数ががスッと下がり、続いて後
輪が回転を始めた
「あ!回り出した!!」
『こっちもです!』
〈こちらも回りました〉
三人とも成功したようだ、水木も
≪ 良いですね、皆さんスジが良いようだ、そしたら
一度アクセルを戻して下さい ≫
エミはアクセルを戻した、とたんにエンジンの唸りが
小さくなった
それを受けて水木も声のトーンが下がった
≪ 今、皆さんのバイクは1速にギアが入った状態です
、これでエンジンを切ると、始動の際にまたニュ
ートラルに入れなければなりません、なのでここ
でシフトをニュートラルに戻します ≫
≪ ニュートラルに戻すにはシフトレバーの下につま
先を入れて、少しシフトレバーを上げてやります
、少し癖がありますが、要は慣れです、回数やっ
て覚えちゃいましょう ≫
そう言うと水木はバイクのエンジンを切り、左端の晴
子の側に行った
≪ では左足のつま先をシフトレバーの下に、そうそ
う、それで軽くつま先でレバーを持ち上げて下さ
い ≫
カチッと軽い音がして晴子のバイクのニュートラルラ
ンプが点灯した
≪ 伊藤さん上手いですね!ではエンジンを切りまし
ょう ≫
言われて晴子はエンジンを切った
≪ では、もう一度キーをONに、エンジンはかけませ
ん、ニュートラルランプが点いてますね?ではも
う一度クラッチを切ってシフトを1速へ、そうそう
、そしてニュートラルへ、良いですね、ちょっと
これを練習してて下さい ≫
次はエミの番だった、水木の始動で、晴子→エミ→ミ
キと順にシフトチェンジの練習を進めた
ニュートラルへのシフトインを練習した後、もう一度
全員でエンジンをかけ、発進、今度は6速までシフトア
ップし、シフトを落としてニュートラルへ、この練習
で講習の時間は終わりを告げた
≪ お疲れさまでした、ところで三人さんはこの後は時
間あるんですか? ≫
突然の水木の問いに皆が(????)といった表情を浮
かべていると
≪ 1段階の実技は一日2時間まで受けられます、つまり
今から急いでキャンセル待ちすれば、というか空い
てるからきっと乗れますよ ≫
「!!!???」
三人は顔を見合わせた、それぞれにコックリと頷きあう
と水木に
〈『「ありがとうございました!」』〉
大きな声で礼を言い急いでプロテクターを返却に向かっ
た、慣れていない為、プロテクターを脱ぐのももどかし
かったが、いそいそとプロテクターを所定の位置に返却
し、小走りで先ほどの事務員さんの元へ向かった
三人を見つけると
< 初教習お疲れ様です、実技はどうでしたか? >
『すごく楽しかったです!』
「知らない事いっぱいでした」
〈イロイロ勉強しなきゃですね〉
< で、2回目の予約ですか?(笑) >
「わかります?やっぱ」
< 大体の人はそうしますよ、でも疲れてる場合が多
いから1時間開けて取る人が多いですかね、どう
しますか?まだ次の時間でも間に合いますが >
悩んだ挙句1時間空けよう、という結論に達した
< それが良いです、今日は空いてるので何か分から
ない事があったら聞いて下さいね、専門用語とか
、クラッチ”切る”とかイキナリ言われても分かん
ないですよね >
『めめ、女神です!』
ミキの言葉に全員が笑った、和やかな雰囲気で原簿を
取り出して予約を取ると、そのまま自販機コーナーで
作戦会議を始めた、知りたい事が山ほどある・・・
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




