連夜の練習!
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
ガコーン!ガタガタ…
騒がしくピンが弾ける音、ガヤガヤとした喧噪
ボウリング場には一種独特の雰囲気がある
好むと好まざるに別れるにせよ、この雰囲気がま
た、ボウリングの魅力の一部と言えよう…
『さぁ!今日はベストスコア更新しますよぉ~』
「ハリきってるねミキちゃん」
『当然です!人生初の160点台!今度は目指せ1
70点です!』
息巻くミキを横目に見つつ、由貴はそれは少し
難しいだろう、と懸念を抱いていた…
3ゲームが終わりミキのスコアは148、152、155
と昨日より伸び悩み、この現象に答えを出せず
にいた
昨日勝利した浜崎にも3ゲーム全敗と、到底納得
がいく結果ではないのだろう…
無理もない、由貴には原因が分かっていた…
浜崎とミキには決定的な差があるからだ、由貴
もこれまでさんざん味わってきたその差が、今
現在由貴に立ちふさがっている物と根本的には同
じ物なのだから…
『ちぇ~いい感触だと思ってはいるんですけどね
ぇ…』
<間違ってないよ…>
由貴はその原因をミキに告げるか迷っていた
しかし、このまま闇雲に突っ走っても、むしろ悪
い結果に繋がりかねない
『じゃあ何が悪いんですかね?』
無邪気な目で疑問を投げかけて来るミキに、由貴
は残酷な現実を突きつけねばならない…
<原因はストライクの数とオープンフレーム、だ
けどこの場合、ストライクの数が一番の原因…>
『それって当たり前なんじゃ?』
<そう、当たり前すぎる当たり前、だけど男子と
女子じゃ同じ所に投げ込んだ時のストライクの
獲得率が圧倒的に変わってくるの…>
『え、、、そんな…』
<ボウリングで一般的に壁と言われるスコアは1
00に始まって130、150、180、そして200、、、
それ以上は250と300、300は言うまでも無くパ
ーフェクトで250はプロレベルだから置いとい
て…>
ここで由貴は一貯めしてから続ける
<ミキちゃんの当たってる壁150はストライクが
出るか出ないかに大きく左右されるの>
『で、でも、、ストライクなんて狙って出せない
ですよね?』
<うぅん、狙ってるのよ、アタシも太田さんも、
そして勿論おっさんズのみんなもね…>
〖やっぱりそうなのか!?〗
〘でもそれなら技術が足りないって部分じゃ男子
も女子も同じなんじゃ?〙
<問題は玉の威力、男子の威力なら起きるピンア
クションも女子の非力では起こり得ない…>
ここでミキは太田の言葉を思い出していた
《ハハハ!男子と比べてたのか、男の場合は多少
変な所に行っても玉に力があるから多く倒れる
もんだよ、なんなら私はヘッドピンを外しても
ストライクを取った事があるぐらいだ…》
ミキの力ではヘッドピンを外してのストライクな
ど間違っても起きないだろう…
『じゃ、、じゃあ!アタシがここからスコアを伸
ばすにはどうしたら良いんですか!?』
<答えは簡単、このままコントロールを磨けば良
い…>
『え?そうなんですか?』
<そうだよ、コントロールがついて狙った所に投
げられればストライクの確立も上がるし、何よ
りカバー率が上がってオープンフレームが減る
!むしろ闇雲にストライク取りに行ってコント
ロールが狂う方がよっぽどスコアが安定しない
よ…>
『でも、それだとストライクが出にくいんですよ
ね??』
<ホントはね、150の壁だってそんな簡単には行
きつかないの、130辺りでうろちょろするのが
普通の女子、、、アタシもそうだった…>
『??』
<分かんないかな~?>
『え??』
しばしの沈黙、ミキには由貴が言わんとする意
味が理解できていなかった…
〖向いてる、って事さ…〗
<そ!!悔しいけどアタシよりよっぽどボウリ
ングに向いてるって事…>
〘周り見てみなよ、、140も行ってない男子な
んてゴロゴロいるよ…〙
言われて隣のレーンの画面を見てみると、138
142、133と学生らしき男子が3名、楽しそうに
しのぎを削っていた…
「現にアタシたちは130辺りでウロついてるし
ね、、、」
<気をつけなさいよね!体育会系の男子じゃな
いと150超えてこないのが普通なんだよ…気
になる男とボウリング行って勝っちゃったり
したらどんな空気になるか、、、>
『ホ、ホントですね、、、でも改めて由貴さん
ってすごい!!』
<ありがと!、、でもね、アタシの悩みも実は
同じ事…>
『どういう事です?』
<うんとね、、ボウリングで10フレーム完璧に
カバー出来たとしてもスコアは200行かない
の!だから200の壁を超えるにはストライク
が必須!今現在パーフェクトカバーがほぼ出
来てないアタシなら出来たらダブルとかター
キーが欲しい所なの…>
『そっか~、、アタシより由貴さんの方がスト
ライクを欲してるんですね!?』
<そう、だからストライクの確立が上がる威力
を落とさず、それでいてカバー率が上がるよ
うに一投目ストレートボールからの二投目カ
ーブボールって戦略なわけ!>
〈そうなるとアタシたちのテーマって何になる
んですか?〉
「アタシもまだそんなレベルじゃないのは分か
るけど気になる…」
<いや、根本的には変わらないよ、だから一番
大事なのはまずコントロール!その為にはフ
ォーム固めが第一だねやっぱ!>
〈ミキちゃんがスコアだいぶ高めなのは?〉
<それは元々の運動能力、かな?良く言えば運
動神経が良いって事!>
『悪く言うと、、、、??』
由貴は言うのを躊躇いつつもサラッと
<女子っぽくなくパワフル!って事…>
何となく自身がエミや晴子よりパワフルなのは
自覚していたが、改めてハッキリ言われると…
だが!これはミキにとっては僥倖だった
『って事は有利なんですよね?ボウリングでは』
<もちろん!この上なくね!!>
ミキは力強くガッツポーズを取ると、ますます
やる気が出た様子だった
<だからとにかく今はフォームを固めてコント
ロール重視!それが出来上がったら徐々に力
を込めて投げられるようにして行くって感じ
かな>
「アタシたちは?」
<同じくフォーム固めと、スパットを利用して
投げる事を意識してカバー率を上げる事かな
、ここに投げるにはここに立ってあのスパッ
トを狙う!みたいに>
「簡単には身に付かないよね、、、」
〈うぅん!明らかに上達はしてるよ!アタシも
エミちゃんも〉
『スコアにも出てるじゃないですか!』
そうなのだ、ミキの伸びが異常な為、霞んでし
まっているが、初めて皆でボウリングに来た時
にはエミも晴子も100を切ったり超えたりのス
コアの普通の女子だったのだ、それが130を超
え出している…
<言ったでしょ、130辺りが壁だって、普通は
そこで引っかかるの!ミキちゃんが異常なん
だよ…>
ミキは ”え?そうなの?” みたいな感じで自
身を指差し皆の顔を見渡している
130と150の壁を一気に飛び越したミキには、
その辺りのスコアの苦労が分からないのだ…
〘ミキちゃん、最後にもう1ゲームだけ、お互い
しっかり集中して勝負しようか?〙
浜崎に誘われミキも二つ返事で同意した
『良いですね!やりましょう、勝負と言わずに
お互いスコアだけ考えてやりましょう!』
あれだけ浜崎に対抗心を燃やしていたミキが、
こんな事を言い出すとは!?
その場にいた全員が驚いたが、ミキはケロッ
とした表情で
『自分のスコアと向き合ってみます!』
などと言い、むしろサバサバした表情で呑気
にしている
<アタシも付き合うけどみんなどうする?>
〖当然やるさ!オレも少しスコア伸びて来て
るからね!〗
「アタシもいいかな?」
〈もちろんアタシも!〉
<よし!じゃあ本日のラストゲーム!みんな
で集中してやりますか!!>
「〈〖〘お~~!!〙〗〉」
左のレーンは伸一、エミ、ミキ、右のレーン
は由貴、晴子、浜崎…
まぁエミ・伸一のカップルと晴子・浜崎の準
カップルにそれぞれ由貴とミキがくっついて
る訳なのだが、スコア的には非常にバランス
が取れている
<何気にバランス良く分かれてるよね?そっ
ちとこっちのレーン>
『やっぱり勝負します?(笑)』
〘いいね!何も賭けないけど気持ちだけでも…〙
〈ハマちゃんって意外とミキちゃんに負けたの
根に持ってる?(笑)〉
〘いや~そりゃ悔しかったけど、そんな事より
今はボウリングが楽しいんだ!〙
『ですよね!なんか真剣になっちゃいます』
「良いんじゃない?何も賭けないけど真剣に勝
負!」
<じゃあそっちのレーンのとこっちのレーン!
お互いのチームの合計点で!>
〈アタシの相手はエミちゃんって事ですね?〉
〖うわ~、由貴さんが相手かぁ~(汗)〗
〘当然僕とミキちゃんが対決って図式か…〙
<盛り上がってきたね!!>
かくして賭ける物は何もないが、妙に熱い勝負
の火ぶたが切って落とされた!
〖じゃあオレたちから行きますかね!?〗
<そうだね!ってアタシ右レーンだから真っ先
に投げなきゃ、、、>
そう言うと由貴は念入りに手を乾かし、颯爽と
レーンへと上がってゆく
由貴にしては慎重にピン方向をじっくりと眺め
スムーズに振りかぶってボールを放つ
由貴のフォームはキレイだ、エミも晴子も、そ
してミキも口には出さないが内心では由貴のフ
ォームを参考にして目指している
綺麗なフォロースルーの体勢で自身の投球を見
守っていた由貴だったが、ピンが弾け、7番ピン
が1本だけ残ったのを見届けると、少し残念そう
に首をすくめる、と、同時に周りからため息ま
じりの声が聞こえた
<これよこれ!ミキちゃんだったら倒れてたか
もね…>
『え~そんな変わりますか?』
〖たぶんそうなんだろうね?確かにミキちゃん
は女子にしてはストライクの率が高いから…〗
〘うん、1ゲームで2~3個は取ってる感じだから
ね、どこらの男子と同程度かむしろ高いかも…〙
〈それってスゴイんじゃないの?〉
〘と、思うよ!真剣にやらないとね〙
〖よ~し!気合入るな!!〗
「力まないでね!」
〖うん、気をつけるよ…〗
エミに言われて自分が力んでしまっていた事を自
覚する
昨日はこれで失敗したのだ
(落ち着け、オレは男子!悪いがパワーは十分だ
、コントロール、コントロールこそ大事なのだ…)
立ち位置、目標スパット、手の平の向き、バックス
イングからの腕の振り、最近まで気にもしないで投
げていた自分を反省し、教えられた知識を可能な限
り頭の中で思い出して今に当てはめる…
(うん!イメージは出来た)
淀みない助走からの投球、腕は真っすぐ、目標スパ
ット目がけて、それでいて力まず、球離れの際に手
首をこねらない…
〖どうだ!?〗
自身の投げた球を食い入るように見つめる伸一
<イッたねこれは…>
軽快な炸裂音、キレイさっぱり、レーンには1ピン
も残っていない、紛れもなく狙って出したストライ
ク!
〖なんだろう?すごく投げやすかったと言うか何と
言うか…〗
<ナイスストライク!>
そう言い手を挙げる由貴とハイタッチを交わし、皆
とも順にハイタッチを交わす
不思議そうな顔で自身の手を見つめている伸一に
「どうしたの?」
と尋ねるエミだったが
『感触が良かったんですよね?』
と、ミキに問われ
〖これかぁ~?今まで気にしてなかったから気づか
なかったよ…〗
〈アタシも昨日一回いい感じのがありました…〉
「どんな感じなの?」
〖何かこう、自然に球が手から離れると言うか…〗
<それが ”球離れが良い” ってやつよ…>
そう言いながら戻って来る由貴の背後で、由貴が投
げた投球が見事7番ピンを捉えた
『う~わカッコ良い!!』
〖参ったな、見るまでもないって感じか…〗
<当然♪>
〖ナイススペア!!〗
伸一の言葉で一斉に皆が由貴とハイタッチを交わす
<さぁハルちゃん頑張って!>
〈ハイ!〉
〖エミちゃん集中!!〗
「うん!!」
〘ハルちゃん!立ち位置とスパットをしっかり確認
して!〙
〈分かった!!〉
何も賭かってはいない、だが妙に熱い勝負はまだま
だこれからだった…
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




