それぞれの休日②
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
『こんなヒマな休日ひさびさですよぉ~』
そうグチるミキだったが、それは由貴にとっても同
じ事だった
今日は久しぶりにハーレーのショップに顔でも出す
か、そう思っていたらミキから電話がかかってきた
『ヒマですか!?ヒマですよね?ねぇヒマって言っ
て由貴さんっ!!』
切羽詰まった様子でまくしたてるミキに、少したじ
ろぎながらも
<どうしたのよミキちゃん?何を焦ってるの??>
『だってぇ~、、エミさんは川本さんとツーリング
デートだし、晴子さんは用があるって、、きっと
浜崎さんとデートですよ…女の友情なんてしょせ
んはこんな物ですかねぇ…』
なるほど、せっかくの休日に一緒に出掛ける友達が
いない訳ね…
<同級生とかいないわけ~?ヒマなんでしょ?>
『居ますよ!彼氏とデートの同級生が…』
<あっはははは!見事に独り身を味わってんのね>
『笑いごとじゃないですよ!』
<そうねぇ~アタシも久しぶりにハーレーショップ
に顔出そうと思ってたけど、一緒に行く??>
『行きたい!、、けどアタシがセローで行って浮き
ませんか??』
<そんなの、気にしなきゃいいのよ>
『じゃあ行きます!』
いかにもアッサリと由貴とのお出かけが決まり、嬉
しい反面、なんだか急に、他人の休日に割り込んで
しまったような罪悪感が押し寄せてくる
『あ、あの~由貴さん…』
<なぁに?どうしたの?>
『迷惑じゃなかったですか?』
<らしくないわね~(笑)そんなの全然気にしなく
って良いよ>
本心からの言葉だった、しばらく顔を出せていない
ちょっぴりとした罪悪感、そして…
『なんか楽しみになってきました!!』
<ハーレーは独特だからね、新鮮で面白いと思うよ>
『でもハーレーって高いんでしょ?それにアタシ大
型免許持ってないし…』
<アタシも大型は後から取ったしね、それに、別に
買うつもりで行く訳じゃないんだから気にしなき
ゃいいのよ…>
『そういうもんですかねぇ…』
<そうそう、大体あの店は店長が知り合いだから全
然オッケーだよ、むしろ多分大歓迎されるよ>
『歓迎されるんだ…』
<多分ね…若くてそのうえ可愛い娘となれば間違い
なく…>
『………。』
<な~にテレてんのよ、、(笑)>
『なんか、、褒めてもらってありがとう、ございま
す…』
(意外とかわいいとこあんのね…)
ミキの意外な一面を垣間見つつも、ダラダラと電話
で話してても埒が明かず
<それじゃまた後でね…>
と強引に通話を終えた、電話を終えると、少し重苦
しい心持ちだった自分に気づく
だがそれも、ミキの強引な登場で、すっかり忘れ去
ってしまった
持つべきものは友か、、、
今さらながら一人ではない事のありがたさを噛みし
めて、いそいそと外出の準備を始める由貴だった
豊田市には残念ながらハーレーの正規販売店がない
愛知県には5店舗、その中の一つが由貴の行きつけ
であるこの店だ…
慣れた様子で所定の位置へとミキを先導すると、颯
爽とパパさんを停車して店舗へと向かう
ミキはノコノコと付いて来てしまった自分を少し呪
ったものだが、ひとたび足を踏み入れたその非日常
の空間に圧倒される
『わぁ~♪なんかオシャレ…』
<ちょっと浮世離れした感じだよね…>
広々とした店内には、それぞれの商品ごとにゆった
りとした展示スペースが確保され、狭っ苦しい展示
は一切見受けられない
所々にグッズや部品といった展示がされているが、
とりわけ目を引く展示車両が一台
<あぁ、コレ?完全固定で、なんならエンジンかけ
て変速も出来るよ>
JUMPSTARTと書かれた看板の前の車両は、完全に床
に固定され、後輪の下には金属製のローラーが設置
されており、エンジンをまわしてクラッチを繋ぐと
回転を逃がしてくれるのだろう
『ほえ~スッゴいですね!?』
[久しぶり由貴ちゃん、珍しいね女友達連れて来る
なんて]
<あ、店長!お久しぶりです、この娘ミキちゃん、
アタシのバイク仲間なの>
『はじめまして、由貴さんの友達の園田ミキです、
どうぞよろしくお願いします』
[はじめまして、この店の店長をしております〇〇
です、どうぞよろしくお願いします]
若いミキにも丁寧な姿勢を崩さない、さすがは店長
といったところか…
<アタシにはそんな丁寧な言葉使わないのに…>
[そりゃ由貴ちゃんはレブル乗ってる頃からの長い
付き合いだからね(笑)]
<まぁいいけどね…それよりこの娘はアタシの顔出
しに付き合ってくれただけだからあんま構わない
でよね…>
[良いよ~好きに見てってね!気になった事があっ
たら何でも聞いて下さいね]
『は、ハイ!ありがとうございます』
笑顔で2人を見やった後、軽く手を振って去ってゆ
く、それにしても由貴のこの店での落ち着きぶりは
見ていても心地よいほどで、顔を合わせるスタッフ
は軒並み顔見知りのようだ
圧倒的ホーム感、といったところだろうか?
店の外の展示車両を眺めていると、大きな排気音が
轟き由貴とミキの愛車の隣に停車した
ひょろりと高身長の男が颯爽と降り立つと、マジマ
ジと由貴のパパさんを眺めまわし、後にキョロキョ
ロと辺りを見回し始める
<うわぁ~来ちゃったか…>
由貴はそう毒づくと、ミキの背後にやや隠れた体制
を取る、だが由貴の姿を見とがめたその男は、迷い
なくこちらに歩み寄ってくると
〚ひ、久しぶり由貴ちゃん、元気だった?全然顔出
さないから心配したよ…〛
<お久しぶり、全然元気なんだけど最近友達と遊ん
でる事が多かったからね…>
チラリとミキに視線をやると、どうにも所在なさげ
にモジモジしている
<悪いけど、そういう事だから今日は絡むの遠慮し
てくれる?>
〚そ、そんな…久しぶりに会ったのに…〛
明らかな失意の表情、その表情を見ていられなくな
ったミキがたまらず助け舟を出す
『あ、アタシっ園田ミキと言います、由貴さんには
色々お世話になってます、よろしくお願いします』
ミキのこの挨拶に、パッと表情を明るく変えた男が
居住まいを正すと、慌てて挨拶を返す
〚長岡努といいます、どうぞよろしく…〛
キリッと表情を引き締めると、背筋をピンと伸ばし
てハキハキと挨拶を返してきた
ただでさえ高身長な長岡が、胸を張って自己紹介す
ると、更に慎重が伸びたように感じる
〚失礼だけどあのセローのオーナーさん?〛
セローを指差すとミキに尋ねる、由貴はキッと長岡
を睨むと、含むところがありそうな目つきで睨んで
いる
少し怯んだ様子の長岡は口を開くと
〚免許は由貴ちゃんの学校で取ったの?〛
『そうです!とても親切にしてもらいました』
〚それは良かった、この店もみんなすごく親切だか
ら、もしハーレーに興味がわいたらまた来てね〛
<もしミキちゃんがハーレー買うなら、アタシが1
から10まで面倒見るから大丈夫よ~>
〚ハハハ、それもそうか…〛
少し冷ややかな由貴の物言いに、会話の潮時を悟っ
たのか、長岡は
〚それじゃ、またね…〛
と小さく手を振ってその場を離れて行った
いつになく冷ややかな由貴の長岡への態度に、少し
違和感を覚えつつも、あまり追及するべきではない
と判断したミキは、そこには触れず楽しむ事とした
『この883Nアイアンってやつ、由貴さんのと同じ
やつですか?』
<アタシのは2017年式だけど、これはその最新型!
しかも展示用に色々付けちゃってるからまぁすご
い価格だよね(笑)>
展示価格は240万、、、、とてもじゃないけど手が
出ない…
『由貴さんスゴイなぁ…アタシなら買いたくてもと
ても買えないや…』
<そんな事ないよ、アタシのは当時でも中古で総額
で150ちょっとだったから…>
『スゴイ!それでも150万かぁ~』
<それは偏見だよ、軽自動車買ったってそのぐらい
はかかるし、ハーレーってだけでスゴイって訳じ
ゃないよ、そりゃ付けたいパーツをポンポン付け
たらそれだけですぐ100万ぐらい飛んでっちゃう
ような物ではあるけども…>
『パーツだけでそんなにかかるの?』
<そこのハンドルグリップ見てみて(笑)>
『わぁ!このグリップカッコ良い!!』
そう言うミキだったが値段を見て目を見開く
『32000円!?』
<ね!相場が狂ってんのよハーレーって…>
『アタシのなんてな~んにもイジってないよ、店
長が血眼になって良いの探してくれたの♡』
[全く、あの時は苦労したよ…]
『あ、店長さん!!』
[これこれこういうのが良い、予算は150でそれ
以上はムリ!なるべく急ぎで!ってね(笑)]
『一刻も早く見返してやりたかったのよ…』
[まだ怒ってるの?長岡くんに…]
(長岡さんに?あ、、、まさか…)
<当然でしょ!許してやんないんだから!!>
[まぁそう言わないで、悪い事言ったってずっと
反省してたよ彼…]
<まぁ感謝はしてるわ、ずっと踏ん切りつかなか
ったけど、結果として無理やり踏ん切りつけて
大型もハーレーも踏み切れたからね>
[ハハハ…]
<当時の貯金も半分吹っ飛んだけどね…(汗)>
[由貴ちゃんは現金でドカンと一括払いだったん
だよ(笑)]
『う~わカッコいい!!』
[気っ風が良いってのは正にあの事だったな!]
<褒めてももう大した買い物してあげられないよ
…>
[十分だよ、前からハーレーを好いてくれた娘が、
頑張って免許も取っておまけにうちでバイクま
で買ってくれた、こんなに嬉しい事はない!]
そう言う店長の表情は本当に嬉しそうで、由貴が
用が無くてもこの店に顔を出しに来る理由がなん
となく分かった気がした
<アタシちょっとトイレ行ってくるね…>
そう言って由貴が場を外すと、店長がミキにそっ
と
[ミキさん、だったかな?何も用が無くても、ただ
眺めるだけでも店に来てくれて構わないからね、
少しでもハーレーに触れて、興味を持ってもら
えたら、それだけで嬉しいもんだ]
『ハイ、もしハーレーを購入するなら絶対ここに
来ますね♪』
[そうは言っても高い買い物だからね、十分に自分
の事情と相談して、もしそれでも欲しくなった
ら可能な限りの協力はするからね]
[今はまだ厳しいかな~(笑) 興味はありますけど
ね…]
[20代前半じゃ厳しいのが普通だよ、由貴ちゃんは
しっかりしてて貯金があったからね…20代中盤
で一括払いの女性客なんて感心しちゃうよ!]
知人を褒められるのは嬉しいものだ、ミキも気づ
かぬうちにニッコリと笑顔になっていた
用を済まして由貴がトイレから出ると、近くの売
り場で長岡が商品を物色していた
トイレから出た由貴の姿を認めると、すぐに歩み
寄り
〚由貴ちゃん!話がしたい、一回だけで良いから
休日に付き合ってくれないか?〛
『アタシは別に話す事なんてないけど?』
〚そう言わずにお願いだ!ね?〛
いつになく強い押し、だが決して由貴を下にみて
いる風でも、ましてやバカにしている雰囲気も感
じない
<まぁ一回ぐらいなら付き合ってあげても良いけ
ど?>
〚本当に!?あ、ありがとう!!〛
<どうせだったらアタシが行った事なさそうなお
店に案内してよ、ランチとか美味しいお店が良
いな>
〚分かった!全力で良い店探しておくよ〛
そう言うと清々しい表情を浮かべた長岡が颯爽と
店を出て行くのであった
(分かりやすいんだけどね~)
そんな事を思いながらも、素直に応じてやるのは
少しシャクだったのだ、それなりの成果を見せて
もらわないと割に合わない
<ゴメン、長くなっちゃった…>
[長岡くんとは仲直り出来たかい?]
<さぁ?それはこれからなんじゃない?>
[ハハハ、頑張らないとな長岡くんも…]
浮いた噂のない由貴だったが、どうやらそれもミ
キたちが把握してないだけなのかもしれない
『由貴さん美人だからなぁ…』
<ん?どうしたのミキちゃん何か言った?>
『うぅん!何でもない…』
不意に訪れたハーレーの販売店、そこでミキはハ
ーレーよりも興味深い由貴の交友関係の一部を垣
間見たのだった…。
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




