コーヒーブレイク in MIKAWA
日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです
仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを
肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが
なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます
温かい目で読んでいただければ幸いです。
<『〈おじゃましました~♪〉』>
「どういたしまして!また女子会しようね♪」
明るい挨拶を交わしてエミの部屋を辞去する、エ
ミはこれからデート仕様のメイクへと変身する
のだろう
階段を降りていると、駐輪場で皆のバイクを眺め
ている初老の男性が目に入った
『おはようございます』
[おはよう、長坂さんのお友達かな?]
ミキが元気に挨拶すると、男は挨拶がてら質問を
投げかけて来た
<そうです、大勢で押しかけちゃってすみません
でした>
〈おかげでとっても楽しかったです♪〉
[それは良かった、うちは駐車場はいっぱいだが駐
輪場は空いてるから、多少だったら構わないよ]
<ありがとうございました…>
年長者らしく由貴が礼を述べて頭を下げる、晴子
もミキも、それに倣いペコリとお辞儀した
[長坂さんの知り合いらしく礼儀正しいねぇ]
そう言って後ろ手に手を振りながら去ってゆく
口ぶりからするにエミには普段から好感を抱いて
いるのだろう
今回はいきなりだったのにエミの普段の礼儀正し
さに助けられたと言う訳だ…
『楽しかったですねぇ!』
<ホント!楽しかった……>
〈またやりたいですね!女子会〉
<そうだね、でも、、しばらく忙しくなるんじ
ゃないの?(笑)>
含みのある由貴の言い方に、あえて浜崎の話題を
避けた時の由貴とは真逆のものを感じながらも、
晴子は言った
〈そうなると良いんだけどね~ニブちんだから…
あの人、、、〉
確かに、ようやく自分の気持ちに気づいた所の
ようだ、そして晴子の気持ちには、、、、、、
気づいているのやら気づいてないのやら…
由貴の気苦労は絶えない!
『フフフ、晴子さん何か悪女みたいですねぇ!』
〈えぇ!?な、何で??〉
ミキに言われて明らかに動揺する晴子、まるで
浜崎を手玉に取っているようにでも見えるのだ
ろうか?
<確かに!ハマちゃん相手にはもっと分かりや
すい戦略のが良いんじゃない?>
晴子としてはこれ以上ない程に攻めて来たつも
りなのだが…
そう言えば、どんなメイクでデートに臨んだの
かまでは話していなかった…
〈良いの、このまま、、ゆっくりで…〉
<本人が良ければ良いんじゃない?アタシたち
は脇役だし~>
『そのうち主役になるかもですよぉ?』
<ま、こんなのキッカケ次第ですぐだからね>
〈そう言えばエミちゃんたち今日はツーリング
なんだよね?〉
『そう言ってましたね、何でもエミさんのイチ
オシの和菓子を買いに行くらしいです』
〈何処かはピンと来ちゃった…〉
<そうなの?>
〈ま、月曜には分かるよ、良いお茶用意しとか
ないとね♪〉
『教えてくれないんですか~?』
<その方が楽しいでしょ、楽しみに待ってよ>
『気になる~~!!』
エミの行先は恐らくは岐阜、以前からエミが一
番好きな和菓子だと言っていたアレだろう…
結構高級品なのだが、エミの事だ、自分たちへ
のおみやげをケチったりはしないだろう…
何だか申し訳ない気持ちになってしまう
岐阜か…APEでも行けない事はない、いやむしろ
ツーリングとしてはそう遠方とは言えない、だ
がその道中、100㏄のAPEが混ざれば、きっと気
を使わせる場面があるだろう、晴子としてはそ
れがどうにも許容できないのだ…
有限である余暇の時間、その中で、皆の時間を
左右し、更に選択肢を狭める、そんな事はどう
しても許せない!
APEは大好きだ、だが!それでも中型を欲する
理由がこれだった
そして更に、最近の晴子にはもっと中型のバイ
クを欲する理由が一つ増えたのだった…
〈さ、アタシもちょっとヤボ用で出かけてくる
ね〉
<お!ハマちゃん?>
〈うぅん、全然別件!〉
『何か楽しい事企んでます?』
〈さぁ?どうかな、もうすぐ分かるよ〉
『何か、晴子さんがイジワルですぅ~』
<そんな事ないでしょ、大人なんだから色々あ
んのよ!>
『アタシも頑張って色々あるようになります!』
そういうのじゃないんだけどなぁ…と思いつつも
由貴とミキに別れを告げ、晴子は出発した、行
先はバイクショップ!ズバリCB223Sの購入に向
けての為だ、ミキには申し訳ないが現状ではま
だ皆には内緒にしておきたい…
晴子としてもちゃんと店で手順を踏んでバイク
を購入するのはこれが初めてだ、最も、最初は
須賀の知り合いでCB223Sに乗っていて、乗り換
えの予定がある者がいないかと当たってもらっ
てもいたが、どうやらCB223S自体が実は人気が
無く、流通数もあまり多くはない、との事だ、
逆にメリットもあり、人気が無い=価格相場が
低い、という事だ、これは晴子にとって実に有
利な事だ、最悪の場合、価格は低いが程度が良
い物が見つからない、となった場合には、低い
価格の車体で、消耗している部品やパーツを交
換し、蘇らせる、といった選択肢もある、と須
賀が言っていたのだ、その場合には須賀の助言
をもらいたい、と相談したら、須賀は
【もっと良い方法があるよ!】
と今から行く店を紹介してくれたのだった、そ
こは須賀夫妻がSRを購入した店で、店主とは昔
からの馴染みらしい、須賀がAPEを譲った経緯
と、晴子の相談内容はザックリと説明してくれ
ている、との事で、晴子は店主が見慣れている
であろうAPEに乗って店に向かえば店主が事情
を察して相談に乗ってくれる、という訳だ
以前から存在は知ってはいたが入った事の無か
った店だ
「モトショップMIKAWA」
何を隠そうエミと伸一が2時間店の中でマッタリ
と店長と話し込んでいた店がここだ…
店の前にAPEを滑り込ますと、若い店員が早速声
をかけてきた
[いらっしゃいませ、何だか見覚えのあるAPEで
すね…]
〈こんにちは、実はこれ以前にこちらで購入し
た方から譲り受けまして…〉
[あぁ!やっぱり、須賀さんのですよね?]
〈須賀さんをご存じなんですか?〉
[えぇ、常連さんですから♪]
どうやら須賀はこの店ではちょっとした顔のよ
うだ…
〈実は、店長さんにご相談したい事がありまし
て…〉
[店長なら中におりますので、どうぞこちらへ…]
そう言って晴子を店内へと案内する、店の表の
スクーター売り場に居並ぶ数々の色違いのスク
ーターの横で、まるで展示車両のように並ぶAP
Eが、少し誇らしかった…
[店長、こちらのお客様が相談したい事がおあり
のようです…]
丁寧に紹介してくれた店員にお辞儀をし、晴子
が向き直ると、チラリと表に停まるAPEを見や
って店長は察したようだ
引き出しから名刺を一枚取り出すと
⦅初めまして、店長の都築と言います、どうぞ
よろしくお願いします⦆
と言って両手で晴子に手渡す、晴子もおずおず
と両手で受け取ると
〈伊藤晴子と言います、実は須賀さんから紹介
を受けまして…〉
⦅ハイ、幸ちゃんからはよく聞いてますよ、う
ちで販売したAPEをそれはそれは可愛がって
いただいてるようで、大変喜ばしいです♪⦆
〈とんでもないです…まだまだ初心者で、至ら
ない部分が多々あって…〉
⦅誰だって最初は初心者ですよ、あの幸ちゃん
がニコニコしながら「良い娘達に引き取って
もらった」って言うんです、APEもTWもきっ
と喜んでいますよ⦆
❛失礼します…❜
そう言って女性店員がコーヒーを二つ運んで来
た
〈ありがとう、ございます…〉
バイクショップではコーヒーが振舞われるもの
なのだろうか?晴子は初めての事で少し驚いて
しまった…
⦅遠慮なさらずどうぞ、幸ちゃんなんか必ずコ
ーヒー飲んでから帰りますよ(笑)⦆
須賀の事を”幸ちゃん”と呼ぶあたり、かなり親
しいのだろう、それだけでもとても安心出来る
むしろ、ずっと通い詰めた店のような安心感が
この店にはある…
⦅それで、探したいのはCB223Sでしたね?⦆
〈そうなんです、一緒に免許を取った友達がT
Wとセローでして、、、〉
⦅なるほど、共に走るなら、出来たら中型が、
それも良く似た排気量とパワー感のバイクが
良い、といった所ですか?⦆
〈実は…〉
晴子は自身の思いを正直に伝えた、気を使わせ
たくはない、選択肢をAPEのせいで狭めさせた
くない、だがAPEは大好きなのだと…
⦅よく分かりました、それではCB223Sを購入す
る前提として、少しお話をさせていただきます⦆
それからは終始、店長の説明に晴子が質問、とい
った流れで話が進んだ、価格相場、便利不便、
起きやすい不具合、想定される問題など…
都築はバイク屋、としての立場よりも、須賀の
知り合いに対する真摯な対応、を優先してくれ
たように思える、終始店としての利益よりも、
晴子の事情、立場に立って話をしてくれたよう
に感じた、簡単に言えば、不人気車であるがゆえ
に流通数が少なく、だからこそ選択肢が限られ、
思い描く程度や状況のバイクと巡り合うのは難し
い、と言う事、また条件に合致する一台が見つか
ったとして、それが臨んだ価格で手に入るか、と
言えば難しいかもしれない、といった事情まで、
隠さず正直に教えてくれた…
〈やっぱり、望んだ通りのバイクに巡り合うって
難しいんですね…〉
⦅少し運もからみますね…出てこない時は本当に
出てこないですから…⦆
そう言う都築の表情は何処か晴れやかで、まるで
あなたはきっと良い縁に恵まれる、とでも言われ
ているようで晴子は少し安心した…
⦅では、以下の条件で探してみますね、条件に合
致する車両がみつかりましたら随時報告差し上
げます⦆
〈ありがとうございます、もし電話に出られない
状況でしたら折り返し致しますので…〉
こういう時、つい普段の窓口対応の際の口調が口
を突いて出てしまう
決して悪い事ではないのだが、つい出てしまうこ
の口調に、客商売の店長は恐縮してしまうのでは
ないだろうか…
⦅しっかり地に足つけてお仕事なさってる方とい
うのが伝わって来ます…⦆
なんとも、客商売の商売人というのは人を褒める
のが上手というか、この晴子の口調さえもが人を
評する際の褒めるべきポイントと出来てしまうよ
うだ…
〈ありがとうございました、ではよろしくお願い
します〉
⦅ハイ、それではご提示の条件に合うバイクを全
力で探してみますので…⦆
そう言って手を振る店長たちに別れを告げ、店を
後にする、結局2時間ほども話し込んで、終わっ
てみればもうお昼時だ、何気にお腹が空いた…
その直後、見慣れたハイラックスがモトショップ
MIKAWAに乗り入れて来た…
今作は作者がTikTokで見かけた「詐欺メイク」にヒントを得て思いついたストーリーとなります
多分に作者の社会人生活と私生活が反映された内容となります、読者の方が「ん?」と思う社会描写が
ございましたら、それは作者の過ごした社会背景との相違と受け取って下さい
メイク技術、用語などはネットの情報を元にしておりますが、なにぶん作者は
「野郎」ですので、この部分、なるべく寛容にご容赦くださると幸いです。




