STORIES 054: 名前を呼んで
STORIES 054
僕は自分の名前が好きではない
苗字は少し変わっているし、呼びやすいので嫌いじゃないけれど、下の名前は呼びづらいと思う。
さしすせそ、が言いづらいのと同じくらいには、読み上げにくい名前。
それもあって、語感も好きではない。
割とよくある名前だしね。
苗字とかニックネームで呼ばれるほうが慣れている。
でも、親しい友達、恋人やパートナーから、下の名前で呼ばれるのは、やっぱり嬉しいかな。
それはきっと、親しくなった証みたいなものだから。
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名前というのはとても不思議で…
それ自体にも神秘的な力が宿っているし、声に出して発することでさらに意味が深まる。
魔術的な意味合いで真の名前を明かさない風習、というのも、地域によってはあるらしい。
そういえば…
こんなことがあった。
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まだ親しくなり始めたばかりの人と話していた時。
その人に呼びかけていて、何とも言えない違和感がずっとあった。
名前を呼んでいるのに、相手に届く前に宙に消えてゆくようなあの感覚。
もちろん、その人は返事もするし、普通に会話は続いてゆく。
ただ、名前を呼んだ時だけ、なんとなくしっくりこない。
それを本人に伝えないまま暫く過ぎたある日。
実は言いそびれてたんだけど、本当の名前はね、なんて会話になった。
それで違和感の理由がよくわかった。
本名だと思って呼びかけているのに感じる、ズレのような感覚。
わかる人にはわかるかなぁ。
名前そのものに、その人の魂も宿っているのだろう。
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世の中には…
ペンネーム、ハンドル、ニックネーム、芸名、源氏名、いろんな種類の名前が存在する。
それで定着している場合もある。
例えば僕は、ウメちゃんとかマイケルとか、そんな感じできたかな。
それはそれで楽しいよね。
でもね。
あなたにとって特別な存在の人がいたら…
やはり本名、ファーストネームで呼び合うことをお勧めしたい。
たぶん、届く気持ちの重さも質も変わるから。
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名前を呼び合う。
簡単そうでいて、できないことも多い。
けれど、とても素敵なことだよね。