ナマズvsクロダイ ポカン釣りvsポカン釣り
モロコ釣りには2種類あってね、という名前一緒モンダイに触れましたが、ポカン釣りにも同名問題があるのです。
(前項で、クエの防波堤釣りのハナシは日を改めて、と書きましたが、今回は唐突にポカン釣りに話が飛んでしまいます。適当な作者で申し訳ないです)
さて問題の『ポカン釣り』なのですが
A)ノベ竿、カエル餌でナマズやライギョを釣る
B) スイカ餌でクロダイを釣る
という、似ても似つかない釣法。
これ、どちらもがポカン釣りなんですよ。
ですから「釣りといえばポカン釣りが好きでねェ」という人物に出合った場合、「クロダイですか? それともナマズ?」と確かめるのも失礼なような気がして
「話には聞きますけど、趣深い釣りみたいですよね。まだ釣ったことは無いんですけど」
などと慎重に探りを入れていくことになります。
ワタクシ、どちらもチャレンジだけはしてみたことがあるので『その釣り方で魚を釣った事はない』というのはホントです。
手を出してはいない風を装った話法にはなっているんですけれど。
けれど「その釣り方って、釣れることあるんですか?」なんて言ってしまうとケンカ売ってるみたいですから。
釣りの入門書や解説本を読むとスゲー面白そうだし、ハマれば爆発的なポテンシャルが有りそうだとは確信しているんですが、場所(地方という意味合いを含む)や、釣場の選定なんかが『一見さん』には相当難しそうな気がするんです。
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まあ、その釣法に習熟している方には釈迦に説法になってしまいますが、簡単に説明をば。
まず、ナマズ・ライギョ狙いのポカン釣り。
水草が茂っている場所まで藪漕ぎをして近付き、太仕掛けでダイレクトに攻める釣り方です。
トラディショナルな釣り方としては、細めの青竹を切り出してくるところから始まります。長さは3m以上は欲しいところ。これが釣竿になります。
その青竹の穂先側にタコ糸を結び、タコ糸の先に大きめの鈎を結びます。ムツ型でも丸セイゴでも何でも良いんですけど、大きさはチヌ鈎の5号くらい。
管付き鈎が結び下手にも失敗が無いでしょう。
オモリは付けません。餌が生きたカエルですから、それだけでも自重があるし、沈めっぱなしにしてしまうとカエルが呼吸できなくて死んでしまいますので。
餌はアマガエルかツチガエルを。
鈎付け方法は二つあって
①生きの良いカエルの尻に、カエルを殺さないようにチョン掛けする
②カエルを一度地面に叩き付けて気絶させ、伸ばした脚を細糸で鈎に縛り付ける
の二点。
餌の付け方に違いが有るのは、釣法が違ってくるからであります。
①のチョン掛けだと、ナマズやライギョが潜んでいそうな場所に活きの良いカエルを投げ込み、自然に泳がせます。まあ泳がせ釣りの一種だ、と考えてよいでしょう。ですから少しオープンな水面が残っているポイント向き。
②の拘束方法を採用する場合は、餌のカエルをパチャンパチャンとリリパッドの穴にノックさせるよう、常に動かしながら釣ります。ですから拘束方法の餌付けは、よりルアー釣りに近い釣りです。丁度『フロッグ』タイプのルアーで藻穴攻めをする感じです。
アタリは①でも②でも、どちらも相手がガボッと水面を割って食いついてきますから、糸の太さと青竹の強さを活かして、カツオの一本釣りのように「どりゃああ!」と一気に抜き上げる、というもの。
ルアーでなく活き餌ですから、魚が不信感をおぼえて瞬時に口を離すリスクは小さくなるのですが、アワセが遅れたり相手に走る隙を与えてしまったりすると、水草に巻かれたり障害物に逃げ込まれたりして釣り上げるのは不可能になっちゃう。相手がトルクのある大魚ですからね。
しかもナマズやライギョって、大口を開けてヴァバァっと餌に食い付く割には、一発で口の奥までスポッと吸い込むのは、バスに比べてヘタクソな気がします。
「カエルの一部を咥えたけれど、鈎までは呑んでいない」みたいな。
ちょうどヤエン釣りをするときに、アオリイカがアジを抱いて突っ走っているけど、鈎には全然かかっていない場合みたいな感じと言えば分かっていただけますでしょうか。
そんな事もあって、ポカン釣りの餌には比較的大きなトノサマガエルやトウキョウダルマガエルではなく、アマガエルやツチガエルといった「一口サイズ」の小ガエルが推奨されているのでしょう。
ですから……本で読むより難しい釣法なんですわ。
なんだかね「昔はコレで簡単に釣れたもんじゃよ。ホッホッホ」みたいな記述をよく読むんですけどね……。
しかも釣り場でチャレンジしたいと思い立っても、試釣するためのカエルを捕まえるのが難しい!
昭和の20年代とか30年代くらいだったら、カエルは普通に”そのへん”でゲコゲコ鳴いていたのでしょうが、今だと都市部住みなら郊外まで車を走らせ、なおかつ見つかったら怒られるリスクを抱えて田圃の畦道なんかを探し回らないといけないわけです。
カエル、釣り餌屋さんには売っていませんのでね。
なお、幸運にもカエルを見つけることが出来た時の対処方について触れておくと、ノコギリで軽く叩くのが一番楽です。いえ、楽だと言われています。
この場合に使うノコギリとは、両刃(縦引き刃と横引き刃が両方付いている物)の木工用で、出来るだけぺナぺナしたヤツ。
これをぺナぺナしならせながら、刃の付いていない面で逃げるカエルを蠅叩きの要領でぺシンと叩くわけです。するとカエルが失神しますから、捕まえて容器に入れる。刃の付いてる部分で叩いちゃうとスプラッタな結果を招くだけで活き餌にはならんですぞ。
この作業、たぶん、知らない人から見られたとしたら、田圃で刃物を振り回している不審者ですから、通報されてしまうことは請け合いだ!
まあ以上のような諸々の事情から、ポカン釣りがフロッグを使うトップのルアー釣りに取って代わられたのは仕方がないことなのかも知れません。
拙がこの釣りをやってみた時も、たまたま素手でアマガエルを捕まえたために「やってみるか」と試してみたという次第で、ベイトロッドからルアーを外し、管付きマス鈎を結んでチョン掛け方式の泳がせ釣りでした。
アマガエルは軽いので、ベイトリールだとメカニカルブレーキをユルユルにしていても『ふわっと』投げるのは難しい。フライフィッシングをやる時みたいに、あらかじめリールから飛ばす分だけ道糸を引き出しておくと、なんとかポイントまでカエルを届けることが出来ました。
正体不明を鈎がかりさせるトコロまでは行けましたが、力較べをしている内にマス鈎のフトコロが伸び、スッポ抜けで姿見ずでした。やっぱ下手ですわ、ワタクシ。
ただ負け惜しみを言わせてもらうと、藻穴攻めという根掛かり必至な釣法ですから、高切れでラインを釣り場にを残さないという意味においては、太軸の鈎よりもアジ鈎やマス鈎みたいに伸びたり折れたりしやすい柔らかな鈎の方がエコと言えるかも知れません。
なお、アマガエルは刺激される体表に毒を分泌します。
触っても問題の無い弱毒ですから、それほど気に留める必要は無いのですが、アマガエルを触った手で目を擦ったりすると痛くなることがあるのは覚えておきましょう。
個人的には、アマガエルの脚を引っ張って伸ばすと、見た目の質感や色合いが美少女フィギュアっぽくてメチャメチャ色っぽく見えます。なんか無駄にエロいです。
◆
次にクロダイのポカン釣り。
小生はクロダイ(チヌ)を釣るなら、初心者にとって一番カンタンなのは、防波堤や護岸からの落とし込み釣りだと考えています。
カニや殻付き貝を餌に、コンクリの際をシンプルな仕掛けでそろそろと落とし込んでいくと、チヌがグインと引っ張っていくという単純明快な釣りですね。
付け餌と寄せ餌を同調させるといったウキ釣り特有のテクニカルな技術は必要ありませんし、カニや殻付き貝を付け餌にすることにより、夏場の餌取りにも強い。
とりあえずチヌを一枚、と思ったら落とし込みなんですよ。
ただし! ウキがス~ッと水中に引き込まれていくドキドキを味わってしまうと
「やっぱ、ウキフカセが最高だよなあ!」
とウキフカセ信者へとなってしまうわけです。
いや、落とし込みもブッコミも楽しいし、ルアーを使ったチニングなんてのもオツなもんだと分かってはいるのですが。
でもね、オイラは釣れる釣れん問題以上に、ウキふかせという釣法が好きなんだよ。
玉ウキがキュウンと元気に沈んでいくのにはドキドキさせられるし、棒ウキがシズシズと潜っていくのもタマラナイのさ。寝ウキがピョコ! と立ち上がるのにもハッとさせられるしね。
と、まあ『味の良い』ウキふかせ釣りですが、拙みたいな下手クソには、ムキー! っとストレスを溜めることになる大きな弱点もある。
高水温期は餌取りに滅法弱い、というヤツですな。
例えば沖磯や離れの一文字(防波堤)に上がったとしますでしょう。
仕掛けを投入する前に、まず寄せ餌を打ちますよね。
すると……
木ッ葉グロ(メジナ)・スズメダイ・バンチャゴ(木っ葉アイゴ)・豆アジ・カタクチイワシ・トウゴロウイワシ・ネンブツダイ・オオスジイシモチ・ミニカワハギなんぞが、海の色が変わるほど集まってくるわけです。
そりゃもう、水面が盛り上がるくらいのイキオイで!
こうなってしまうと……その中に付け餌のオキアミを放り込んでしまったら、10秒ももたないわけです。
名人・上手・達人と呼ばれる方々は、そんな時でも全く動じず、磯際だけに寄せ餌を打って餌取り軍団を足止めすると、海中の潮の流れを読んで『寄せ餌は効いているが餌取りが集結していない』という、全くアサッテの方向と思える位置へと付け餌を投入し、易々と大グロ・巨チヌを引き出すことが出来るのです。
オイラみたいな潮読みの苦手な下手っぴだと、上手なヒトのように上手くは行かず、豆アジ・バンチャゴが大漁という悲しい結果になったりする。
軟竿で豆アジや木っ葉グロを釣るのは実は結構楽しく、餌取り君たちも”背ごし”や”煮付け”にして食べたら美味しいのですが、渡船代を払って沖磯・沖防に渡ってだと「これはちょっと……」と考えてしまうわけなんですよ。
まあ、餌取りを躱して大き目の獲物を釣り上げるには、呼子カゴという魔法アイテムを使えば、オイラみたいな中の下級(あるいは上級初心者)にでも可能で『なんとかなる』んですが、それはまた別のオハナシ。
ここでは『餌取りが見向きもしない』スイカを寄せ餌や付け餌に使って、チヌを狙うポカン釣りだ!
そうなんです。
餌取りが邪魔だな、と考えたら餌取りが見向きもしない付け餌を使うというのは非常に理に適っているわけです。
「クロダイという魚は、ニンゲンの食べる物ならなんでも……いえ人間が絶対に食べない物でも食べる」という食いしん坊ですからね。
ですから高温期の餌取り対策として用いられる餌には
〇コーン~缶詰トウモロコシですな。釣具屋さんにも売ってますが、スーパーの徳用缶が安くて量も多い。
〇サツマイモ~生あるいは茹でたサツマイモを角切りで。砂糖煮やハチミツ煮にするとよりアピール力が強くなるとも。
〇ミカン~ミカン産地限定で良く釣れると定評があるらしいです。缶詰めミカンも良く食うと聞くんですが……。
○サナギ~蚕の蛹ですよ。サナギ粉として粉末でも売ってるけど、付け餌には丸サナギ。
〇イソギンチャク~磯や防波堤にくっついているアレです。
〇フジツボ~コヤツもテトラなんかには必ず付いていますよね。
〇ヘラヘラ~標準和名はウスヒラムシ。よく波止際を全身ひらめかせて泳いでいますが、生物部の中学生が組織再生実験で使う淡水のプラナリアに近いイキモノです。
〇タクアン~餌取りが多すぎて、ヤケクソでお弁当のタクアンを餌にしたのが始まりなんでしょうか? 黄色の練り餌があるように、黄色は海中でアピール力があるのかな? コーンも黄色ですしね。
などなどなど。餌取り大王のフグからもノー・サンキューされてしまう皆さま方だ。
中でもスイカは『クロダイは、高水温期にはサッパリした炭水化物系の餌を好む』説というのがあって、実際にポカン釣りというジャンルが確立されているのです。
我が身に置き換えてみても
「夏はコッテリ熱々のビーフシチューやモツ鍋よりも、アッサリ冷たく素麺だよなぁ」
と頷けるところがあり、理に適っていると説得されてしまいますよね。
説得されてしまったところで、ポカン釣りはスイカを買いに行くところから始まります。
釣具屋にスイカは置いてありません。前日に青果店なりスーパーなりで買っておかないと。
そして一個は寄せ餌用として丸のまま車に積んだままにし、もう一個を付け餌用として自室に持ち帰ります。
付け餌にするには、ちょっとだけ下ごしらえが必要なのです。
付け餌用スイカは、およそ1㎝角くらいのサイコロ状に刻むのですが、真ん中の一番甘い部分は食べてしまってかまいません。柔らか過ぎで餌には不向きですから。
用いるのは皮に近い部分で、白身がビミョウに残っているように切り分けましょう。白身の硬い部分が鈎を差し込む部位となります。
1㎝角の付け餌スイカが出来ましたら、たっぷりの砂糖をまぶします。
これは味付けのためではなく、粉砂糖に水分を吸い出させてスイカを締めるためです。
この砂糖まぶしの技法は、ポカン釣りの付け餌スイカを作るときだけでなく、生オキアミを締めて餌もちを良くするのにも有効ですから、覚えておいて損はありません。
砂糖をまぶしたら、冷蔵庫に寝かせて明日に備えます。
なお、スイカやオキアミそ締めるときに、砂糖に加えてブランデーか焼酎を一滴垂らすと集魚能力が上がるとも言われます。
ただクロダイは鼻が利く魚だし有りそうには思えるのですが、タイ科の魚にはコイ科の魚ほどアルコールに対する顕著な正の走行性を感じられません。
また、せっかく水分抜きをするのに、1滴2滴といえど液体を添加するのは「締める」のに逆らう行為のように思えてしまいます。
ですから酒類の添加はお好みで、としか申し上げられません。
それで沖防への渡船場へと到着したとしましょう。
一便目の出発を待っている時、撒き餌バッカンにオキアミではなくスイカ一玉を入れたアナタは、好奇の目に晒されることに……は、なりません。
渡し舟を使ってまでクロダイを狙おうとするチヌ師なら、『クロダイの餌にスイカはアリ!』と知識としては知っているからです。
ただし実行にまで至る人物は少数なため
「スイカ持って来はる人って、ホンマにおってんやなぁ」
と感心されることならあるでしょう。
さて防波堤(あるいは磯)の上で釣り座を定めたら、寄せ餌用のスイカをフィッシングナイフで刻むところから釣りが始まります。丸ごと持参していますから、パカッと割りさえしてしまえば中身はフレッシュ。
普段のオキアミ系チヌ釣りの寄せ餌と比べて臭いが無い(スイカの匂いしかしない)のは、生餌嫌いの人でも受け入れ易いだろうという意外な利点を感じます。
どうせ細かくして撒くのですから、大きくカットしてそれぞれの破片をグチュっと手で握り潰しても構いません。
なお、仮に焼酎やブランデーを混ぜるのならこの段階で。
集魚剤や煎りヌカ、パン粉などは混ぜません。クロダイ以外の魚を極力寄せ集めないためですね。
そして沖向きに潮が払い出している流れに乗せて、寄せ餌の潰しスイカを撒きます。
潰しただけのスイカは――海水よりも比重が軽いわけですから――払い出しの潮によって海面をプカプカと漂い沖へ沖へと運ばれて行きます。
すると沖めの海面で、スイカ餌に興奮したチヌがボイルを始め、同じ潮に乗せて付け餌のスイカをごく浅ダナで流し込んでいくと、ウキがズボッと引き込まれるか横っ走りをし、糸フケを取ったら大アワセで!
……と、イメージトレーニングはカンペキなのですが、肝心のチヌのボイルが始まらネェ!
そうなんですよ。
いくら夏チヌはスイカを食うといっても、スイカ餌の集魚能力はオキアミやアミには負けるのです。
50mくらい離れた所に別の釣り人が入っていて、オキアミやアミの寄せ餌で釣りをしていたなら、チヌもそっちへ行ってしまうのです。
これには少なくとも2つの理由が考えられます。
一つは、やはりアミやオキアミの匂いや味の方が、潰しスイカより集魚効果が高いという単純明快な理由。
加えてもう一つは、オキアミ+アミ+集魚剤の寄せ餌には『餌取りの雑魚』が多く集まり、活発に餌を食べる音を出す、というもの。
この魚が餌を食べる時のピチュピチュという水中音を『摂餌音』といい、群れを惹き付ける強力な誘引効果が認められています。
この摂餌音が水中に響くと、その場に居る全ての魚に興奮状態が伝播し、いわゆる撒き餌が効いた(撒き餌に乗った・撒き餌に狂ったとも言う)警戒心が薄れる状況が発生するわけです。
ルアーマンだと、よく「ベイトの回遊でいきなりスイッチが入った」なんて言葉で説明するアレですね。
その興奮状態が、一目見ただけで丸わかりな魚がメジナ(グレ・クロ)です。
メジナはその地方名である「グレ」や「クロ」が示すように、普段は黒色の体表をしています。
けれども興奮状態になると、青みがかった草色に姿を変えます。
この草色のメジナが釣れれば、撒き餌に狂ったな、警戒心は薄れているなと判断できます。
つまり、アミやオキアミで魚を寄せると、集まってきた魚たちが摂餌音を出し、それが更に他の魚を呼び込む呼び水になる、という好ましいループが生まれるわけです。
ですからアミ系寄せ餌をチビチビ撒いて豆アジを釣っていたら、小場所にもかかわらずデカいスズキやヒラメ、サゴシ(サワラの幼魚)がガバアとサビキに喰い付いて大慌て、なんて事が起きるのも、この摂餌音がキーになっていたりするわけなんですよ。
えてして「豆アジが寄ってるんだから、サビキに付いたアジやカタクチを狙ったんだろう」と考えがちですが、フィッシュ・イーターも同じく摂餌音に興奮しているわけ。
だからどう考えても、サビキに付いた豆アジやカタクチを狙ったのではなく、サビキのピンクスキンそのものを口にしたとしか考えられないシチュエーションが起きたりするのですな。(浅場で短竿竿下の下カゴサビキをしている時なら、喰い付くシーンが丸見えだったりするのよ。掛けても0.6号くらいの細ハリスではほぼ取り込めませんけどね)
だから摂餌音が期待できないスイカ寄せ餌だと、水深が8mとか10mある沖波止外向きなんかの場合、クロダイは水面にスイカがプカプカ浮いていることを認知できないわけなんですね。
クロダイという魚は、普段は海底近くを泳いでいる魚なんだから。(当然、はぐれ者の例外はいますけど)
そう考えると、ポカン釣りの寄せ餌をスイカオンリーに絞るというのが間違いなのではないか? という疑惑が生まれるのですね。
つまり、オキアミ+集魚剤の通常タイプのチヌ寄せ餌をつくり、その中に潰しスイカを混入する。
そしてその特製寄せ餌で各種餌取り雑魚を含む魚群を興奮状態に導き、狂乱の渦の中に付け餌スイカを投入すれば――スイカなんてクロダイ以外の魚は口にしないわけですから――選択的にチヌにスイカを食わせることが出来る。
これがポカン釣りの正解なんじゃないでしょうか?
筏のカカリ釣りでチヌを狙う場合、寄せ餌ダンゴにコーンを予め混ぜておき、餌取りが多くてオキアミやモエビでは釣りにならない時に、コーンを付け餌にするのと同じ戦略というか考え方ですね。
うん。これなら上手くいくかも知れない。
けれども日を改めての第二回ポカンチャレンジでも……
『目の前では、海の色が変わるほど小魚が狂喜乱舞しているけれど、スイカ餌には触りさえない』
状況が発生してしまったりするのさ!
この日は途中でスイカ餌を諦めることで、オキアミで足裏未満サイズのメジナと中アジ、コーン餌で手のひらメイタ(小クロダイ)を仕留めることが出来ている(オキアミ・コーンはどちらも寄せ餌に入れていたモノを選り出して使用)から、クロダイが寄っていないわけではないんですよ……。
本当に夏チヌはスイカを好きなんかなぁ……。
ここで、ハタと『1 場所、2 餌、3 仕掛け』の原則を思い出します。
竿出しする場所の問題です。
水深10mの釣り場で、表層に浮くスイカ餌を使うことは正しいのか?
更に、渡船で渡る沖磯や沖波止のチヌって、そもそもそれまでにスイカを食ったことがあるのか?
つまりですね、渡船で渡る釣り場って、普段から釣り人がオキアミやアミの寄せ餌を撒いているわけです。
だからオキアミやアミなら、それこそガキの頃から親しんでいる食い物なわけ。
”そんな場所”に見慣れないスイカを投げ込んだとしても、食べたら美味しいんだと”そんな場所”で生まれ育ったクロダイに認識できるか、という事なんですよ!
クロダイは好奇心の強い魚だから、中には「ん~、ちょっと食べてみっか」と思ってみるヤツがいないとは限らない。
けれどもそんな個体は少数派でしょう。
対してコーンならなんとか勝負に持ち込めるのは、クロダイ用集魚剤(配合エサ)には、コーンを入れてある市販品や渡船屋オリジナルの販売品が結構あるからだ、と考えられます。
コーンなんかアジやスズメダイは見向きもしないから、チヌは底まで沈んだ粒を余裕で拾えるわけです。
普段から食っているエサなわけですね。
細切れタクアンが付け餌になるのも、実は粒コーンと間違えて食っている可能性がある。(いや、これは全くの邪推ですけど)
そう考えると、自分が熟知しているフィールドだからと、ポカン釣りがデフォルトで行われているのではない沖磯・沖波止で、スイカ餌で釣りをしようというのがそもそもの間違いなのかも知れません。
『1 場所、2 餌、3 仕掛け』の原則のうち、一番目と二番目を外してたんじゃあターゲットが渦巻いていたって釣れるわけないよね。
パンの耳で『飼い付け』されたコイの群れに、殻付きカラスガイやタニシ餌を放り込んでも無視されるのと一緒だ!
ですからポカン釣りにチャレンジするなら、スイカの皮なんかが流れ着きそうな河口付近や海水浴場の砂浜での『渚釣り』スタイルで行うべきではなかったか、と反省するものであります。
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この項を書いてて思ったんですが『落とし込み釣り』にも二種類あるんですよ。
一つは防波堤の辺地でカニや貝を落とし込む、この項で既に触れている落とし込み。
そしてもう一つの「落とし込み」というのは
『釣り船で沖に出て、太サビキを海底に下ろして、ブリ・カンパチ・ヒラマサ・マダイ・マハタなどと狙う』という釣り方。
まずイワシや小アジを鈎掛かりさせ、そいつに大魚が食い付くのを待つという釣法です。
九州北部が発祥ですが、よく釣れるしバーチカルジギングなんぞより初心者にも大物ゲットの確率が高いことから人気が上がり、全国的に広がりつつあります。
おなじ名前の釣法が増えると、ちょっとヤヤコシイですな。
(青物狙いの落とし込み、よそには秘密にしてれば良かったのにね、とも思います。まあ無理かな。釣り過ぎは控えましょう)




