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第1話(2)相談に乗る

「実は……」

 佐藤が言い淀む。現が首を傾げる。

「どうしました?」

「いや、えっと……」

 佐藤が部屋の隅に立っている甘美に視線を向ける。

「ああ、彼女はごぼうか何かだと思ってもらって……」

「ごぼうってなんですの?」

「物のたとえ……」

「たとえって!」

 現が佐藤に向き直る。

「今のはちょっとした冗談です」

「はあ……」

「実はですね……ほらほら……」

 現が手招きする。甘美が首を捻る。

「は?」

「いいからここに座って」

 現は自分の隣の席に座るように甘美を促す。

「なんでですの?」

「なんでもですの」

「はいはい……」

 甘美が現の隣に座る。現が甘美を指し示す。

「彼女は私の助手的なことをやってもらっているのです」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、私を大変リスペクトしていて……」

「お話を捏造しないで下さる?」

 甘美がジト目で現を見つめる。現が小声で呟く。

「話を合わせろ……」

「え?」

 佐藤が首を傾げる。

「いえ、なんでもありません。とにかく彼女はここでの話をいたずらに言いふらしたりはしません。その辺りは安心して下さい」

「はい……」

「では、あらためて、伺ってもよろしいですか?」

「ええ……実は……友人関係で悩んでおりまして……」

「友人関係?」

「はい」

「最近ケンカをされたのですね?」

「いえ……」

「違いますよね、分かっています」

「は、はい……」

「好きな男性の取り合いになったのですね?」

「い、いえ……」

「それも違いますよね、分かっています」

「え、ええ……」

「そのご友人とこのまま友人関係を続けていいものかどうか、お悩みなのですね?」

「あ、当たっています!」

 佐藤が驚く。甘美が呆れながら呟く。

「そりゃあ、いつかは当たるでしょう……痛っ⁉」

 甘美が足の方に目をやると、現の左足が自らの右足を踏んでいた。

「その友人のお金遣いが荒い……!」

「う~ん、それほどでもないような……」

「ですよね、分かっています」

「えっと……」

「その友人の暴力が酷い!」

「いや、それは……」

「それもそうですよね、分かっています」

「ええっと……」

「そのご友人の言葉遣いが酷い!」

「! そ、そうです!」

「ほらね!」

 現が隣の甘美に勝ち誇った顔を見せる。

「それも数撃ちゃあれって奴でしょうよ……痛っ⁉」

 現が甘美のすねを思いっきり蹴る。

「現……!」

 甘美がすねを抑えながら、佐藤に気付かれないように、現を睨む。

「……ちょっと黙っていて」

「黙っていてって……」

「参考までに言葉遣いが酷いとはどういうものですか?」

「おバカさんとかかしら?」

「いいえ」

「お間抜けさんとか?」

「い、いいえ」

「まさか……おブスだとか⁉」

「いいえ、そういう単純な悪口ではありません」

 佐藤が首を左右に振る。

「あ、ああ、そうですか……」

 甘美が黙る。現が笑顔のまま、甘美の方に向き直る。

「甘美さん……?」

「え? 痛っ、痛っ!」

 甘美が足元を覗くと、現が何度もガンガンと蹴ってきていた。

「勝手に話を進めないで?」

「じょ、助手としての役割をまっとうしようとしたまでですわ!」

「あ、あの……」

「失礼、お話は大体分かりました」

「ほ、本当ですか?」

「ええ、それはもちろんです……」

「本当かしらね……」

 頬杖を突く甘美の横で、現があらためて口を開く。

「相手をランクで分けて付き合うようになった……違いますか?」

「! そ、そうです、そうです!」

「そのランクは一つ違うだけでも、付き合い方の違いがあまりに顕著であると……」

「ええ……」

「佐藤さんはその相手をするのにほとほと疲れ果てたと……」

「ええ、その通りです……」

「占いとしては距離を置くのが吉ですが……それでは良くないのですよね?」

「ええ、中学高校からの付き合いなので……」

「彼女側に変化してもらうしかないと……」

「まあ、出来ればそうであって欲しいのですが……そんなことが可能なのですか?」

「こちらに何点か必要事項をご記入ください」

 現が紙を差し出す。佐藤は戸惑いながら、それに記入する。

「記入終わりました……」

「結構、数日中には良い結果が出ていますから楽しみにしていて下さい」

「あ、は、はい……」

「それではごきげんよう」

 佐藤は困惑気味に退室した。甘美が首を傾げる。

「佐藤さんの夢世界を攻略するのではなくて?」

「違う、攻略するのは……友人の方だ」

 現が紙を甘美に突きつける。

お読み頂いてありがとうございます。

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