episode 70
『壱花ちゃん、仕事お疲れさま。いよいよ社内報、発刊だね』
『ジェインさん、お疲れさまです。はい。もうめっちゃ緊張してます』
『事前に見せてもらったけど、良い出来栄えだよ? イラストも上手に描けてる』
『ありがとうございます』
『たくさん描き直したらしいね』
『は、はい。大変でしたが、皆さんの意見を聞けて、すごく勉強になりました』
『でもうちの仕事、家とかに持ち込んじゃだめだよ? サービス残業になっちゃうからね』
『柿谷さんにも同じこと言われました』
思いだしたのか、ふふっと笑ったのが、とてつもなく可愛い。
『壱花ちゃん、俺がプレゼントした服、着てくれてるのな』
パステルオレンジにイエローのグラデーションのブラウス。まだ黒縁メガネではあるが、そのブラウスのおかげもあって、顔色もパッと明るく元気そうに見えた。
『あ! はい! こんなキレイな服、ありがとうございます』
『下も履いてる?』
って、エロオヤジの言い方か。慌てて、『スカート! スカートだから!』と言い直す。
『もちろん履いてますよ』
笑いながら壱花が立ち上がって、上から下へとスマホを傾けた。
『おー。すごく似合ってる』
『そうですか? ずっと黒ばっかり着てたから……よくわからなくて』
恥ずかしそうに手で顔を隠す。その仕草に、愛しさが増した。
『すごく可愛いよ』
側に置いてあったビール缶をゴクゴクゴクと一気に飲んだ。酔いが回ってくる。
『壱花ちゃん、会いたいよ』
壱花が、隠していた手を離し、複雑な顔をした。
(その顔、困ってるの? それとも?)
『会いに行ってもいい?』
『……あの……』
返事がない。
『今度の土日は仕事の関係でアポとってるから席外せないけど、来週の土日ならあいてるから。会いに行ってもいい?』
もう一度。
『え、と』
『予定ある?』
『いえ! 全然! たぶんいつも通り、家でイラスト描いてるか、マンガ……よ、んでます』
小さい声でトーンダウン。尻切れトンボな言い方。どう捉えたら良いのだろう?
『そっか。じゃあ俺、名古屋に行くね。壱花ちゃん、二日間あけといてよ。どこか行きたいとことかある? 考えといて。連れてってあげるからさ』
ほろ酔い。口調も滑らか。スマホ越しに見る壱花。終始恥ずかしそうにしているのが笑える。可愛い。会いたいという思いだけが加速していった。




