episode 5
帰りの新幹線では、ちゃんとグリーン車を予約することができた。平日の昼間ということもあり、比較的シートは空いていた。キオスクでサンドイッチと飲み物を購入。グリーン車への乗り込み位置へと向かった。
しかしそのホームに、なんだか見たことのある姿がある。
(あ、おにぎりガールだ)
偶然だった。
行きの新幹線で、お年寄りの荷物を棚へと上げていた少女。今日も黒のワンピースを着ていて、印象はおにぎりのまま覆らない。その存在はジェインの目を引いた。
よく見ると、隣にはベビーカー。生後どのくらいだろうか、赤ん坊がスヤスヤと眠りについている。ベビーカーのハンドルを握っている母親らしき女性と、少女は会話を交わしていた。
(今日は親戚と一緒なのか?)
ジェインはその場に立った。なんとなく、その黒づくめな少女を見ていたかったのもある。興味があったわけではない。腕時計を見る。まだ時間はあるし、気になった、ただそれだけだ。
「もうすぐですかね」
少女の声とともに、アナウンスが流れ始める。母親とともに、新幹線が入ってくる方角を見つめる。線路の先、新幹線が凛々しい姿で現れた。
「あ、来たみたい」
「来ましたね」
プラットホームに東京行きの新幹線がなめらかに滑り込んでくる。ゆっくりと停車し、プシュっと音がしてドアが開いた。
そして、顔を見合わせた少女と母親が、相づちを打った。両脇に立ってベビーカーを持ち上げる。その拍子に、ベビーカーが少しだけ、ぐらと揺れた。
(あ、ぶな、)