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35/163

episode 35

ダサいしオタク。黒髪でどんと重い前髪のせいで、余計にネクラに見えるし、更に言えばどんくさくてトロい。

そんな認識しかなかった。

「なんでこのサークルに入ったんかなあ、あの子」

和田 弥一は握っていたテニスラケットのグリップを握り直し、自分の後輩とラリーをしている壱花を視線で捉えた。

しかも、テニスもくっそ下手。二つ向こうのコート。ちょこまかちょこまか、あっち行ったりこっち行ったり、ボールに翻弄されている。

ほっときゃいいのに、コロコロと転がっていくテニスボールをいちいち追いかけていくからだ。

(おむすびコロコロリンか⁉︎ っての)

しかもだ。なかなかボールに追いつかない。コートの反対側を見ると、相手役の後輩が、腰に手を当てて、ダルそうに突っ立っている。

「悪い、ちょっと休憩!」

弥一が自分のパートナーに声を掛ける。ため息をひとつつき、二つ向こうのコートに向かうと、壱花の相手をしていた後輩に喋りかけた。

「代わるわ」

後輩は、助かった〜という意味合いの苦笑いを浮かべると、さっさとベンチへと向かう。それと同時にボールを拾った壱花がコートに戻ると、弥一は大きな声で壱花へと言葉を投げた。

「おーーっし、打ってみーー」

はいっ。返事は小さい。

壱花は持っていたボールをラケットで叩いた。ボールはネット際に当たりはしたが、辛うじて弥一の面へと落ちる。

自慢の脚力でボールに追いつき、それをラケットで拾った。飛んでいったボールは壱花の手前で弾んで転がっていく。

「す、すみませんっ」

謝りながらボールを追いかけていく、の繰り返し。

ラリーとは言えない打ち合いを終えると、壱花はより一層、萎縮してしまっていた。

「先輩、す、すみません」

「そんなに力入れてラケットを握ってると、ボールがガットの真正面を捉えられないから、もっとリラックスして」

「はい!」

一生懸命だ。それは伝わってくる。けれど、運動神経が壊滅的なのかもしれない。運動神経が遺伝的要素なら、それは仕方がないと、諦めるしかない。

弥一は、壱花と同時に入部した、壱花の友達をも見た。まだ完璧ではないが、多少ラリーは続くようになっている。壱花の友達は、髪をオレンジと緑に染めてピアスをし、可愛い服を着たりブランドバッグを持ったりと、キラキラと輝いている。

それに比べて壱花は、地味な外見、黒髪ボブ、黒縁のださメガネ。そしてこの壊滅的な運動神経。

(これ以上、みんなと差がつく前に、少し特訓した方がいいかもな)

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