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episode 16

新幹線のチケット売り場だ。券売機で、すすすっと操作して、一枚のチケットを購入。

「壱花ちゃん、今日はもうこのチケットで名古屋に戻るんだよ」

この後、もし激昂した彼氏とかち合ってしまえば、大変なことになるに違いない。

(壱花ちゃんの身に危険が及ぶ可能性がある)

懸念したジェインが、壱花の手にチケットを握らせた。

「それで無事に家に帰ったら、俺からの連絡を待つこと」

チケット代をと、壱花が慌ててサイフを出そうとするのをそっと制し、ジェインはにこっと笑ってみせた。

「今日必ず連絡を入れる。いいかい?」

素直にこくんと頷いた。瞳はもう、本来の黒を取り戻している。

ジェインは自分のカバンから、帰りの新幹線で食べようとキオスクで購入していたじゃがりこサラダ味を取り出すと、壱花の頬にそっと触れさせた。

カラっと軽妙な音がして、さっきまで漂っていた緊張感がほぐれたような気がした。

「はい。これ梅干しのお礼ね。外国人が選ぶ日本のお菓子部門で、堂々の1位なやつだから」

笑った。

「俺が一番、好きな味はこれ。これ本当にサラダ? っていつも思うけど、そんな疑問どーでもいいくらい美味しいから」

赤く染まった目尻にくしゃっとシワを寄せたのを見て、これで安心して帰りの新幹線に乗せられると思った。

安堵の息を吐く。

「ジェインさん、さっきはその……」

「ん?」

「助けてもらったのに、非難するようなことを言ってしまって……ごめんなさい」

「大丈夫だよ、壱花」

名前呼びに関してはポリシーがあって、ある程度仲良くなれば、親しみを込めて誰にでもさらっと使っていたし、相手にも受け入れられていた。

「俺のことは気にしないで。本当に大丈夫だから。さあ、もう時間だよ。名残惜しいけれど、君は行かなくちゃならない」

「あ、ありがとうございました」

そして改札口を通り、振り返りながら遠慮がちに、そして真っ直ぐに手を振る、その壱花の小さな姿をずっと見続けた。

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