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episode 1

『視察とか言っちゃって、要するにただのバカンスだろこれ! どうせまたまた新幹線でナンパするんだろ? このがっつきCEOめ!』

大きすぎる相手の声が、スマホのスピーカーを揺らす。その声に張り合うようにして、草壁くさかべジェインは、

「リモート会議だけだと末端の雰囲気まで伝わってこないんだよ。たった一週間の代行だぞ? 慎之介、おまえならできる」

「当たり前だ。俺をいったい誰だと思ってるんだ。さいと、」

慌てて、

「慎之介! 悪いが俺が留守の間、ASQ社との契約の件、頼んだからな。じゃあ行ってくるよ!」と、早口で通話を終わらせた。

京都行きの新幹線のデッキの壁に、背をもたせかけていたジェインは、スマホをスーツの胸ポケットへと滑り込ませると、自分の座席へと向かった。もう一度チケットを出し、席の番号を確認する。

「えっと……Eの、」

煙草は吸わない。吸おうと思えば吸えるのだが、吸うと女受けが悪くなる。

(まだ先か)

普通車両は、通路が狭くて歩きにくい。

ジェインは黒のボストンバッグを前へと抱え直すと、禁煙車をずんずん進んでいった。

グランクラスの予約が取れなかった。しかも、グリーン車もだ。見回すと、普通車もほぼ満席状態。

「仕方がない。たかだか数時間の我慢だ」

着痩せするタイプだから、ジェインのスーツ姿はすらっとして見える。だが、週に二度しか通ってはいないのに、ジムで鍛えた身体は意外とがっちりしていて、普通車の席だと窮屈なのだ。

ジェインは自分の席を見つけ、立ち止まった。

「……失礼」

席にはひとり、女性が座っている。組んだ足はスラリとして長く、赤毛気味の茶髪のロングな巻き髪が、大人の色気を醸し出している。女性が顔を上げると、あら、と口元を緩めた。

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