第七話
改めて。
俺は、自他ともに認める陰キャだ。
今日も普通に登校していた俺だが、三限終わりの休み時間現在。まだ会話を交わしたのは、朝に友達と呼んでいいのか微妙なラインの男二人と、挨拶がてらにアニメの話をした程度。
今は、いつも通り自席に座り、持ってきていたライトノベルを読んでいた。
……やっぱり、二次元っていいなぁ。
全てではないが、やはり主人公は特別な人間であることが多い。陰キャだったはずなのに、いつの間にか陽キャグループの一員として平然と溶け込んでいたり。最強の力を手に入れて無双して、美女ハーレムができたり。
俺も、特別になりたい、と思ったことは何度もある。まぁ現実は、そうやって一人自席で想像するしかない陰キャなのだが。
「楓は、彼氏作らないのー?」
そうやって一人溜息を吐いていると、教室中に聞こえる程の大きさで話す、女子の声が聞こえてきた。
チラリと、そちらに目を向ける。
そこにいるのは、所謂クラスカースト上位の女子たち。ギャルというか陽キャというか。まぁ、そう言った俺とは正反対の人種だ。
「私、あんまり好きじゃないから。なんなら、女の方が好きかも」
そうクールに答えたのは、俺基準でクラス一綺麗だと思う女子生徒、里井楓だった。
里井はグループ柄、制服をかなり着崩しており、ちょっと近寄り難いチャラい印象がある。が、ぱっちりと大きな目元に、鼻筋の通った鼻。ふっくらとした唇。そして、制服を盛り上げる胸元。更に、金に染めているセミロングの髪は、内側にクルッとウェーブを掛けていて、それがまたオシャレポイントが高い。
そんな里井は、Mな男に好かれると聞いたことがある。先ほどのような発言から、Sッ気が垣間見えるから、だとか。
「え? 私、狙われちゃう?」
「食べてあげよっか?」
里井が相手の顎を持ち上げて、クイッとする。
……百合だ。
里井が美形だからこそ、その空間に一瞬で百合が出来上がる。ライトノベルそっちのけで、思わず見てしまう。
「なんてね。こういうのは、彼氏にやってもらいな」
「うわぁ~。ここまで雰囲気作って、それは無いわ~」
アハハっ!
という、女子たちの笑い声が響いて、俺はそっと視線を戻す。
……彼氏、ね。
登録完了から、今日で三日。今朝スマホを確認したが、サイトには俺の顔写真と名前が載っていた。
つまり今日、俺はレンタル彼氏デビューを果たしたのだ。だから、もういつ依頼が来てもおかしくはない。
「はぁ」
自分でやりたいと言ったこととはいえ、本当にできるのか。
一応、デートに向けての解説マニュアルと参考動画に関しては目を通して頭に入れた、つもりだ。
だけれども、こればかりはやってみないとどうも言えない。
今日はこの後、意識したからか何となくそわそわしてしまって、授業に集中できなかった。
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