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 遠くから黒染めイタチの鳴き声が聞こえてくる。

 エイジの攻撃で動く事が出来ず、木に背中預けることしか出来ない。


 ふざけるな! それが勇者のする事か! 


 腹立たしいことこのうえないが、今はどうやって生き残りかを考えないといけない。

 黒染めイタチ達が近付いて来ているのだから。


「ん? そういえば」


 ふと、思い出したがエイジ達は何で()()()()()() もう一人……そう、()()()()()()()()() 俺の代わりに彼女がパーティーに入ったはずだ。


 エイジに紹介された時にしか会っていないため忘れていたが、俺の馬を奪った時にイリス以外の三人しかいなかった、どう考えてもおかしい。


 ……いや、考えるのは止めよう。

 今は自分がどうやって生きるかを考えないといけない。


 黒染めイタチ達の鳴き声が最初より大きく聞こえる。

 

 俺は四肢に力を入れ、動こうとするも背中の激痛で動く事が出来ない。


 ……いや違うな、激痛のせいではなく背中から血が出すぎたのだろう。

 エイジに攻撃された時に背中の傷が広がったんだ。

 血を失いすぎたせいで体が動かないんだ。


 クソ、どうする、どうすればいい。

 このままだと黒染めイタチ達に殺される未来しかない。

 

 ……考えろ


 …………考え……ろ


 ………………考……え……ろ




 ……一体どれくらい時間が経った? 途中から意識が、途切れ途切れだ。


 寒い、目が霞む。


 俺は此処で死ぬのか?



 ーー目の前にある茂みが大き揺れる。


 ゆっくりとした足取りで、オリジナル体の黒染めイタチが現れた。

 唸り声を上げ俺に近付いてくる。

 オリジナル体の後ろには百匹以上の分裂体がおり、まさに絶体絶命。


 目前全てが黒色に染め上げられ、百を越える黒染めイタチの眼が俺を貫く。


 オリジナル体が一歩、また一歩と、ゆっくりと近付いて吐息がかかる距離にやって来た。


「……クソ、お前さえいなければ今頃メアリー様にご褒美を貰えたはずなんだが……」


 黒染めイタチに文句を言っても意味はないが、言わずにはられない。


 そもそも、エイジ達のせいで俺はこんなことになっているんだ。

 何でいたのかは知らないが、彼奴らがしたことにより死にそうなっている。

 たとえ此処で死んだとしても幽霊になってでも彼奴らに復讐してやる。


 しかし、エイジ達にたいする俺の怒りなど知らんと言わんばかりに、オリジナル体が口を大きく開けて俺を食い殺そうとする。

 

 だが、瀕死の俺は動く事が出来ない。

 

 目を閉じ歯を食いしばり、やってくるはずの痛みを待ち構える。


 

『畜生ごときが、誰の物に手を出しているのかしら』


 

 そう声が聞こえた瞬間、辺りに激しい爆音が響き渡る。

 黒染めイタチ達の悲鳴が聞こえ、強い衝撃が俺の体を揺らす。


 閉じた目を開け、声が聞こえた空を見上げる。

 瀕死の状態で視界が霞んでまともに見えないが、美しくも妖しい声色で誰なのか直ぐに分かった。


「……メアリー様……」


「シン。主人に助けられるなんて貴方は駄目な下僕ね。屋敷に帰ったらお仕置きよ」


 まるで、やんちゃな子をあやすように優しく俺に向かって言うメアリー様。

  

 メアリー様の声を聞いた俺は安心し、ゆっくりと意識が落ちていった。


「……メアリー様……」



 

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