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俺は村を出てから馬を走らせ、エイジ達が目撃された森えと向かう。
「ここら辺だと思うんだが? そもそも、まだ彼奴らがこの辺りで活動しているかも分からないんだよな」
目的地に着いた俺は辺りを見回す。
村長に聞いた、エイジ達が目撃された場所はここら辺の筈なんだが、戦闘音の一つも聞こえてこない。
やはり、エイジ達は既にこの辺りには居ないのだろうか?
俺は肩をガクッと下げ、深い溜め息を吐く。
「ハ~~、此れからどうしよう……エイジ達に会って黒染めイタチの情報を聞いて、オリジナルの黒染めイタチを探し出し、メアリー様からご褒美を貰おうと思っていたのに……」
完全に考えていた予定が狂った俺は、今からどうしようか頭を抱えて悩んでいたとき、背後の草むらから、ガサガサ、と音がした。
直ぐに後へと振り向き、警戒する。
この辺りには強い魔獣はいないはずだが、警戒するに越したことはない。
「…………ん? ……っ‼」
突如黒い影が矢のようなに真っ直ぐと鋭く俺の顔を目掛けて正面から襲ってきた。
俺は慌てて首を横に傾けて黒い影を避ける。
ギリギリ避ける事に成功した俺は、急いで乗っていた馬から降りて黒い影に目を向ける。
真っ黒く、猫のようなサイズの生き物……恐らくコイツが黒染めイタチなんだろう。
初めて黒染めイタチを見るが、確かに見た目は黒い毛並みのイタチだ。
コイツの生体を知らなかったら、可愛いとぐらい思ったかも知れないが、生憎俺はコイツのヤバさを知っている。
俺は気を引き締め、腰の剣を抜いて構える。
もしかしたら他にも黒染めイタチが数多く近くにいるかも知れない。
一匹の強さは大したことないとらしいが、数が増えれば増えるだけ俺の危険度が増すため、早く倒さなければ。
俺自身の強さは大したことないのだから。
「はああっ!」
俺は声を上げ、一気に黒染めイタチへと剣で斬りかかった。
決して剣の腕は達人とはいかないが、そこそこの腕はあるつもりだ。
魔獣とはいえ、こんなイタチ一匹手こずるはずがない。
俺の振るった剣が、黒染めイタチを切り裂こうとした瞬間、予想外の事が起きる。
「……っ‼ ……クソが‼」
俺の背後から巨大な黒染めイタチが俺の背中目掛けて、鋭い爪で切り裂いてきた。
俺は完全にその攻撃を避ける事が出来ず、背中を切り裂かれてしまう。
「ぐぁぁぁ‼」
背中がまるで焼かれたように熱くなり、情けないことに俺は悲鳴を上げる。
「ぐっ!」
痛みを堪えて体制を整えようとするも、そんな事を待ってくれるはずもなく、巨大な黒染めイタチが止めとばかりに再び鋭い爪を振るってくる。
背中に傷を負った俺は俊敏に動くことは出来ないため、無様だが転げ回るように鋭い爪を何とか避けていく。
二撃、三撃、と連続で鋭い爪の攻撃を続ける巨大な黒染めイタチだが、俺は剣を使い隙をついて反撃する。
「グギャァァァ」
目を剣で突き刺し、悲鳴をあげる巨大な黒染めイタチ。
激しく暴れまわり、荒れ狂いながら俺に攻撃をしてくる。
俺は攻撃を避け、チャンスだと思い背中の痛みを堪え歯を食いしばって乗ってきた馬の手綱を掴んで、急いでこの場から逃げる。
馬に乗って逃げる俺だが、背後からは巨大な黒染めイタチが凄まじい勢いで追ってきた。
早く、早く、と乗っている馬を限界まで早く走らせ、背中のの痛みさえ忘れるほど俺は焦る。
ここで巨大な黒染めイタチに追い付かれたら、間違いなく殺される。
なんとしても逃げ切らなければ。
◆
流石は国一の軍事力を持つと言われるワンダースノー家が調教した馬なのか、魔獣が出てきても逃げず、足の早い優秀な馬のお陰で巨大な黒染めイタチから逃げる事に成功した。
「……何とか逃げる事が出来たか?」
巨大な黒染めイタチから逃げれたと考え、ハ~、一息つき気を抜くと。
グワァァァ、と言う獣の雄叫びが森に響き渡る。
……どうやらまだ逃げ切れていないようだ。
俺は再び気を引き締め、全方位警戒する。
恐らくあの巨大な黒染めイタチがオリジナル体なのだろう。
最初に見た小さい黒染めイタチは分裂体で、その分裂体を囮にして背後から気配を消したオリジナル体が俺を襲う、見事な連携だ。
だが、連携が出来るということは背後から雄叫びが聞こえるオリジナル体だけではなく、分裂体も気を付けないといけない。
どのくらい分裂体が産まれているかは分からないが、俺目掛けて全方位から分裂体が何時襲ってきてもおかしくない。
……恐らく俺は、すでに黒染めイタチ達の罠の中にいる……。
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