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 執務室を後にした俺は、より詳しく黒染めイタチの情報を集めるため、メアリー様が住む屋敷から離れたところにある村に向かうことにした。

 

 ちなみに、メアリー様の屋敷がなぜ村から離れたところにあるかと言うと、メアリー様のスキルよって操られている使用人が領民に見られないためである。

 まるで、人形のような使用人など決して領民に見せて良いものではない。絶対に大問題になる。

 さらに、屋敷の周囲は林で囲まれており、外から一切屋敷が見られないようにしている。

 

 ……正直言って、そこまでして操られている使用人が見られたくないなら操らなければいいのに、と俺は思うのだが……。

 

 ーー村に着いた俺は、村長の家に向かう。

 黒染めイタチの情報を集めるなら、この村で一番偉い村長に聞くのが早いだろう。


「すみませーん。村長は居ますか」


 俺は村長の家の扉を叩き待っていると、家の中から足音が聞こえ、仙人かと思うほど立派な白い髭を生やした老人が扉を開けて出てきた。


「フォッフォッフォッ。どなたかな? わしを呼んだのは?」


「初めまして、俺はメアリー・ワンダースノー様のげぼ……ウホンッ……使用人をしているシン・シュナイダーと言います。黒染めイタチについて情報を集めるため伺いまして、是非とも話を聞きたいんですけど、今よろしいですか?」


 あぶない、あぶない。

 村長に、メアリー様の下僕をやっていると自己紹介するところだった。

 そんな挨拶をしたら俺の事をヤバイやつだと村長に認識され、黒染めイタチについて話を聞くのが大変になる。

 最初の挨拶こそ大切なのだから気を付けなければいけない。

 

 ……初対面の人に、メアリー様の下僕と自己紹介しそうになるとは、心の底からメアリー様の下僕なんだな俺……

 

 なりたくて下僕になったんだから別に良いんだけど。


「なるほどワンダースノー家様の使用人ですか、どうぞ中へお入りください。小さく汚い家ですが、どうぞどうぞ。わしが話せる事なら、何でも話しますぞ」

 

 そう言われた俺は、村長に案内され家の中に入る。

 

 勇者パーティーにいた頃、勇者であるエイジの命令で俺が様々な交渉や情報集めを全てしていた為、こういう事は慣れている。

 

 何よりエイジがいない、それだけでどれ程素晴らしいことか。

 エイジは女の子には優しいが、男相手だと横暴で上から目線は当たり前。

 エイジに依頼をする人が男の場合、例え貴族の偉い人でも高確率で言い争いになる。

 

 ……正直、何でエイジが勇者なんだろうか?




 俺は村長から話を聞いていき、気になる情報を耳にする。


「えっ! 勇者が黒染めイタチを討伐しているんですか?」


「ええ、ありがたい事に勇者様が黒染めイタチを討伐しているので、何とか甚大な被害を出さずに、すんでおるんじゃが」


 俺は村長からあり得ない事を聞き愕然とする。


 勇者、つまりエイジが黒染めイタチを倒していると言うことだ。

 エイジの性格を考えて、善意でやっているとは考えられない。


 横暴・傲慢・自分勝手、と三拍子揃ったクズ人間、それがエイジである。


「……何で勇者が? 誰か依頼でも出したんですか?」


「いや、依頼を出したなんて話は聞いておらん。もし、誰かが依頼を出していても、依頼料をどうやって用意したのか不思議じゃ。勇者に依頼と為れば高額じゃろうし……」


 エイジが動いているのは、確かに謎だ。

 

 ……だが、いくら考えても答えが出るはずもなく、嫌々だがエイジに会って直接聞くしかない。

 もしかしたら、黒染めイタチについて有益な情報を持っているかも知れない。


「村長さん、お話しを聞かせてもらい有難うございます。俺はそろそろ失礼します」


「いえいえ、黒染めイタチの問題はこの村にとっても無視出来ない問題じゃ、この程度ならいくらでも協力しますので、シン様も頑張ってください」


「はい、なるべく早く問題が解決するよう頑張ります」


 俺は村長の家を出て、エイジに話を聞くために目撃情報があった場所に向かう事にした。


 まさか、もう会うことはないと思っていたのに、此方から会わないといけないとは運がない。

 

 俺は溜め息を吐きながら村を出る。


 


 

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