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俺の手足を縛っていた鎖をメアリー様が外し、ようやく身動きが取れるようになれた。
下僕である俺は膝をつきメアリー様からの指示を待つ。
「ふふふ、お利口ね。偉いわよシン」
メアリー様に行動を褒められた俺は頭を撫でられ、とても嬉しく思う。
今までの人生でこんな気持ちになったことはなく、これこそが俺の運命だとさえ思えてくる。
「まず私の部屋に行きましょう。あなたにやってもらったい事があるの」
メアリー様からの命令に反対するはずもない。喜んで命令を聞こう。
「分かりましたメアリー様。俺に出来る事なら何でもします」
「ありがと、シン」
笑みを浮かべ俺にお礼を言うメアリー様。とても可愛らしい。
--メアリー様の部屋へ向かっている途中、俺は異様な光景を目にした。
人形のように一切表情に変化がなく、死人ではないかと思うような人達が歩いているではないか。
「メアリー様……あの人たちはいったい……?」
「ああ、彼らは私の所で使用人として働いている生きた人形よ」
「いっ、生きた人形ですか?」
生きた人形。確かにその言葉がぴったりである。だが、これは一体どういうことなのか? 俺が疑問を思っているとメアリー様が説明してくれた。
「彼ら使用人たちは、私のスキルで操っているの」
スキルとはこの世界で神からの祝福とされている。
あらゆる種族がスキルを持っており、誰でも必ず一つは持っている。だが、極一部の者は二つ三つと持っており、複数のスキルを持っているものは神の寵愛者言われ、特別な存在として扱われる。
「操っていると言いましたが、メアリー様のスキルは一体どういうものですか?」
「私のスキルの名は精神の支配者、目を合わせた相手を私の好きなように操ることができるわ」
他者を操るスキルと言うなら、この異様な光景も納得がいく。
生きた人形達は精神を支配され、命令された事しか考えていないので感情が無く、だから無機質な表情をしているのだろう。
使用人全員がメアリー様に操られているのなら、まさに生きた人形、言葉通りと言える。
しかし、目を合わせて相手を操るということは、俺と初めて会った時、メアリー様は俺に目を合わせてきたので、あの時俺はメアリー様に操られたということになる。
だがこれで、メアリー様が俺の過去を知っていた事にも納得がいく。俺を操って情報を聞き出したのだろう。
「私が怖いかしら?」
試すような感じで俺に聞いてくるメアリー様。……しかし俺の答えは決まっている。
「……怖くなどありません。俺はメアリー様の下僕ですから」
俺の心はメアリー様に全て奪われており、たとえメアリー様がどんなに恐ろしい存在だとしても一緒にいたい。それが俺の本心だ。
「面白くないわね、もっと怖がると思ったのに……」
どうやらメアリー様は俺が怖がる姿を予想していたらようだ。
悔しそうな様子を見せて、フン、と顔を背けてしまった。
「えっと……メアリー様?」
俺は戸惑ってしまう。今のメアリー様の姿もすごく可愛いが、機嫌を悪くさせるつもりは俺にはなく、なんとか機嫌を良くしてもらおうと慌てる。
「すごく怖かったです‼ 涙が出るかと思うほど‼」
「嘘よ、あなた泣いていないじゃない」
俺が言った言葉に怒り気味で言うメアリー様。
メアリー様は、俺に泣けと言うのか? ……泣くわけがないでしょ。メアリー様には怖さより愛しさの方が遥かに上回ってるのに。
だが泣けと言うなら、勇者にコキ使われ悲しくも色々出来るようになってしまった俺の実力を見せて差し上げたましょう。
「……グスッ……メアリーさ「今さら泣いても遅いわよ、あなたバカなの。それにキモいわ」」
メアリー様は俺の迫真の演技を遮り、さらには酷い事を言ってくる。
……ならどうしろと言うんだぁ‼ 何が正解なんだ‼ 声に出して怒ればいいのか‼ それとも黙っていればよかったのか‼
俺は顔を熱くさせ、自分でもよく分からない可笑しな動きをして怒りの気持ちを表す。
俺の可笑しな姿を見たメアリー様は、クスクスと笑いだす。
「私の思い通りにならなかったお返しよ!」
どうやら俺をからかっていたようで、悪戯が成功した子供のような顔するメアリー様。
俺はメアリー様が怒ってない様で良かったとホッとするが、正直言って心臓に悪いしイラッとする。
しかし、メアリー様の可愛らしく笑う姿を見たら、毒気を抜かれた。
「……ハァ~、からかわないで下さい……」
「いいじゃない。あなたの慌てる姿、なかなか面白かったわよ!」
こっちは一切面白くない。
メアリー様は絶対に性格が悪いなと俺は思った。
「でもあなた、私の下僕なのに口では言わないものの反抗的な目を向けるのね?」
「……俺は確かにメアリー様の下僕で心の底から貴方に惚れていますが、それとこれは別です」
もしメアリー様の為に命を捨てないといけない時があれば、喜んでこの命を捨てるが、悪戯をされれば下僕でも普通に怒るに決まっているでしょ。
「ふふふ、あなたが私に対するその態度、認めるわ。この屋敷に居る生きた人形達とは比べ物にならないくらい…………私はあなたの事が好きだもの」
好きだもの、と突然近づいてきたメアリー様に耳元で囁くように言われ、今までにないくらい俺の顔が熱くなる。
近づいてきたメアリー様と抱き合う形になり、メアリー様の柔らかい体と甘い匂いを感じドキドキする俺。
抱き合ったままメアリー様は俺の耳元で囁いた。
「だから、あなたはそのままでいなさい。そして、永遠に私の側に居なさい。下僕である、あなたの大好きな主人が言うのだもの、拒否はしないわよね?」
もちろん拒否するわけがない。
俺は力強くメアリー様を抱き締め、告げる。
「絶対にあなたの側から離れません。俺の命が尽きるその時まで」
俺の言葉にメアリー様は満足したのか分からないが、俺から離れ背を向けて言う。
「さあ、行くわよシン」
メアリー様の声から、喜びの感情が伝わって来るのは、俺の気のせいではないと思いたい。
「はい、メアリー様」
メアリー様の後を、俺はついて行く。
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