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この人生が終わるまで  作者: 侵略する兎
この人生が終わるまで
1/8

それは私の生まれた日

少女は産まれる。

この時代の闇を背負って。


作者の好みがいっぱい詰まっております。

拙い文章ですが、読んでいただければ幸いです。

西暦は今よりもずっと昔。

日本がまだ江戸という時代だった頃。


イギリスは産業革命の渦中、少女は産まれた。

生まれながらにして産業革命の闇を受けたその少女は、裕福な家庭にも関わらず、酷く苛まれていた。

手は霜で焼けたかの様に赤くひび割れていて、

所々にある痣、

特に酷いのは爛れてしまった様にも見える右目だった__




私の両親が仕事でいない間に、

弟の×××と教会へ出かけるのが私は好きだった。

ステンドグラスから透ける光が、

花瓶に入った色とりどりの花が、

何よりも美しく見えた。


教会で私は跪いて、願うのだ。

「この病気を治して」と。

神さまは不平等なもので、

どんなに願っても私の望むものを与えてはくれなかった。




「今日は君の誕生日だって言うのに、またそんな『鬱小説』なんか読んで。どしたの、メアリー。」


そのやけに苛立つ様な声にハッとする。

いつもと同じ天井。

痣も、ひび割れも無い。

あるのは、右目の爛れた痕だけ。


「べつに。たまたま手に取っただけよ。」


と、温くなってとても美味しいとは言えない紅茶を啜って答える。


『たまたま』手に取ったその本のどこを探したって、私の探す名前は出てこない。

どんなに大切な人であっても、時が経てば忘れてしまうものなのね。


この本は、日記。言わば、私の歴史。

けれど、私の記憶と共にあるから、私の忘れた事は消えてしまう。

現に弟の名前は黒く塗り潰されたままだ。

『魔法は君の意識』だとあの悪魔は言った。

今でも彼は好きになれそうに無い。


「もしかして、まだ根に持ってる?僕が君の目を直せなかったコト。」


半ばからかう様に彼は言う。

そういうところだ、と私は思う。


「あら、治してくれるの?今すぐ」


くす、と笑みを浮かべてみる。

無理だねぇ、と彼は笑った。

その笑顔になんとも言えない喪失感に襲われる。

目の前の彼の金色の瞳をあの人と重ねた。


あぁ、あの人は、彼は空を舞ったのだっけ。

格好いい軍服を着て、行ったんだわ、戦場へ。

2度と帰ってくる事はなかったけれど。


私はケーキを口に運んだ。


今日は私の生まれた日。

でも、彼にとっては命日かしら。


貴方は必ず帰ってくるから、と此処を出て行った。

私は見送ることしかできず、必ず、と言葉を繰り返すだけだった。


一体いつまで待っていれば良いのかしら。

金色の瞳と、色素の薄い、柔らかい茶色の髪。

その姿にどこか見覚えがあって、一目で恋に落ちてしまった。

それは私の愛しかった人。


1つの名前が頭をよぎる、それは無意識に口から出される。


「………アレン、」

第一話、いかがでしたでしょうか。

感想等いただけると嬉しいです。

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