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51. アトル先生王座を目指す - 7

 目が覚めると、トスカさんがベットの傍の椅子に座っていた。嬉しいことに身体の痺れは取れている。


「おはようございます。トスカさん。」


と挨拶すると、トスカさんが珍しくホッとした様な表情になる。


「まったく心配を掛けるんだから。一週間も寝てたんだよ。身体の調子はどうかな?」


そう言われて、ベッドから降りて身体を動かしてみる。


「大丈夫みたいです。お世話になったみたいで、ありがとうございました。」


「それは良かったよ。定期的に回復魔法を掛けていた甲斐があったな。だけどね、イルちゃん、今自分の魂がどうなっているか分かるかい?」


魂と言われて、自分の魂に意識を集中してみる。通常魂は球形なのだが、私は魂を自由に動かす訓練の一環として、自分の魂を私の身体と同じ姿にしている。自分の魂を自分の身体と同様に自由に動かす訓練をしているのだ。だが、意識を集中して見えて来たのは自分の姿ではなかった。すごく美人でスタイルの良い人間族の女性だ。誰?


 私の疑問が顔に出たのだろう。トスカさんが答えてくれた。


「それはね、ララ女王とラストの爺さんが昔会った女神様の姿らしいよ。」


そうなのか。でも何故? 女神様が魔晶石にチャージした魔力を使ったからだろうか? 分からないけれど、私は魂を自分の姿に戻そうとして見る、すると徐々に私の姿に変わっていく。良かった魂をコントロール出来なくなった訳では無さそうだ。だが、魂の姿は元に戻ったが何か変だ。しばらく考えて大きさだと気付く。私の魂は二回りくらい大きくなっていた。


「おいおい、勿体無いじゃないか。せっかくの美人だったのに。」


と、トスカさんが心底残念そうに言うが無視だ。


「まあいいか、美人は他にもいるしね。ところで魔法は使えるかい?」


と言われたので、魔力遮断結界を張ってみる。大丈夫だ、少し感じが違うが使えないことは無い。ただし、念のためにごく弱めの魔力遮断結界を張ってみるつもりだったのだが、魂から流れ込んでくる魔力の量が予想外に多くて、あわてて超強力な結界に切り替えた。魂が大きくなった分魔力が増えている様だ。


何故か、魔力遮断結界を張るとトスカさんが溜息をついた。


「正直ホッとしたよ。イルちゃんの魔力を隠すのにララ女王と交代で魔力遮断結界を張っていたからね。さもなきゃ国中が大騒ぎになっていたよ。」


そうか、魔法が使えなくなっていたから、いつも張っている魔力遮断結界も解除されていたんだ。でも国中が騒ぎになるというのは大げさだよ、そりゃ魔法使い達には居場所がバレるだろうけど。


「自分では気付かないかい? イルちゃんの魔力は元々大きかったけど、今は比べものに成らない。魔力遮断結界を張るまではまぶしくて直視できなかったよ。僕たちがイルちゃんが寝ている間、交代で魔力遮断結界を張っていたから良かったものの、さもなければ、神が降臨したと騒ぎになっていたさ。」


「神ですか???」


「そうさ、今までどおり平穏に暮らしたいなら十分気を付けるんだな。」


とトスカさんが言ったところにララ王女が部屋に入って来た。ララ女王は私が起きているのを見ると一旦笑顔になったが、すぐに真剣な表情になった。これは叱られそうだと思わず身構える。


「まったく、この子は! 自分がどれだけ危ないことをしたか分かってるかい? 生きているのが奇蹟なんだからね。私があんたの母親なら、思いっきりおしりを叩いているところだよ!」


「ごめんなさい」


と謝る。ララさんの目に光る涙を見ては、何の言い訳も浮かんでこなかった。


「まあ、それより今は食事かね。腹は空いてないかい? でも今日は念のため少しだけだよ。」


 その後、ララさんがルームサービスで注文したオートミールという食べ物を頂いたが、美味しい物ではなく、早く母さんの料理が食べたいと思った。ララさんにアトル先生のことを尋ねると、笑顔で教えてくれた。あの後、アトル先生を神々が奇蹟を起こして守ったことが一気に噂となって広がったらしい。今、アトル先生は神の子と崇められており、アトル先生に敵対すると言うことは神に敵対するに等しいと、すべての神の教団が宣言した。これにより情勢はアトル先生に一気に傾いた。既にランドルフ伯爵はアトル先生に謝罪し恭順を誓ったそうだ。軍隊も貴族達もアトル先生側に寝返るものが続出しており、王妃と宰相が降伏するのも時間の問題と考えられているそうだ。ラトスさんも付いていることだし、もう大丈夫だろう。


「そういう訳で、私とトスカはそろそろ引き上げるけど、イルはどうする?」


そう言われると、無性に母さんに会いたくなった。


ララさんとトスカさんにお礼を言い。ラトスさんにも念話で別れの挨拶をしたら、長距離の念話を魔道具なしで行ったことに驚かれた。500キロメートルくらい離れた所に居たらしい。そしてその日の内に懐かしの我家の天幕に帰宅し、満面の笑みで迎えてくれた母さんに抱き付いた。やっぱり我家が一番だ!


 そう言えば、アトル先生とカルルの仲はどうなったのだろう? 知りたいけど、今はいいや。ふたりが幸せになる様に祈っておこう。後、カルルの性格が良くなります様にとも...。あの性格のまま王妃になったらトワール王国が心配だ。

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